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狂い咲き

ジャンル: 異世界(恋愛) 作者: saran
目次

ユノの困惑

ユノはいつものように、流れるような静かさでひなのの隣に来た。


そばに来たら、分かる。
ユノに殺気などなく、非常に落ち着いているということに。



「・・・なんと言えばいいか分からん。だが、話さなければならないと思った」

「・・・はい」

「俺は無感情が強いからこそ、斬ろうと思った瞬間には、もう人を斬っている。

今日も、その感情に任せてお前達を斬った。


それを悪いことだと思った事はないし、後悔もしたことはない」



すごいこと言うんだな・・・


ひなのは残酷な言葉に、思わず微笑してしまった。


「だが」


ユノは続ける。


「今日は、違った。
お前達を部屋から出した後、俺はずっと気持ちが落ち着かなかった。


それが何故だか分からなかったが・・・
お前が目を覚ませば、分かるような気がしていた」


「・・・。それで・・・?分かりましたか・・・?」


ひなのは病中のように、寝たままただ静かに、ユノを見上げる。


「・・・お前が無事で、ホッとしている」

「・・・ふふっ・・・変なこと、言うんですね。

空牙も言ってたでしょう?斬っておいて、その言葉はおかしいって」

「人を斬って、初めて後悔をした。
人を斬って、初めて斬った者の顔を見た。

人を斬って初めて・・・

いや、人が無事な姿をみて初めて、良かったと思った・・・



つまり、何だか分からん。これは知らない気持ちなんだ」


ユノの戸惑いを確認しながらも、ひなのは何も答えられなかった。

だって、何を言ってほしいの・・・?

私が、その答えを教えればいいの?


「私だって、分からないですよ。ユノ様の気持ちなんて。

・・・なんで斬られたかも分からないんですから」


「・・・それは・・・」


なんでひなのを斬ったのか。
その理由を聞かれると、ユノは数秒口ごもった。


「・・・お前の力が、強すぎたからだ」

「え・・・?」

「お前の持つ八龍の力が、あまりにも強い物だった。

だから俺はー・・・



・・・いや、くだらん理由だ。聞かないでくれ」


えー・・・
そこまで言われたら、気になるじゃん・・・。





今となっては、ユノには口にしたくもない理由だった。

(・・・お前の八龍の力が強すぎて、俺がー・・・


お前が俺を超えるのではないかという、恐れと焦燥から殺気が芽生えた・・・と。

そんなこと、お前の前では言えるものじゃないだろう・・・)



「・・・ひなの」
「・・・なんです?」
「俺が、怖いか」

「・・・!

怖く、ないです」


本当のことだよ。

「でも、悲しいです。それだけ」
「・・・そうか」



(・・・お前か悲しいと言うと、俺の気持ちがまた落ち着かなくなる。

泣きもしない顔で、無理をして笑っているような。
そんなひなのの顔を見たら、俺も・・・



俺も悲しいような、そんな気がする)



「こんな気持ちになったのは初めてだ。こんな時にどうすればいいかも分からん。

謝れば良いというなら・・・


・・・今、謝ろう。





傷をつけて、すまなかった・・・」


その、信じられない一言に、ひなのは一瞬固まった。


・・・うそ・・・
ユノ様が、そんなこと・・・?!




その一言を聞くと、まるで魔法が解けたかのように・・・ひなのの目から、枯れていた涙が溢れ出した。



「・・・何故、泣くんだ」

「・・・うっ・・・わ、分かりません・・・

でも・・・多分、嬉しいからです・・・」



無感情の人斬りが、人を斬ったことを謝ったというのだ。

ひなのの中で、ユノに斬られたことの痛みも悲しみも、吹っ飛んでしまった。



・・・本当、魔法みたいだよ。
殺されそうになったっていうのに、それすら許せちゃうんだね・・・


こんな事ってある・・・?




・・・普通ないよね。


それほどなんだ。

それ程だったんだ。気づかなかったよ。

それだけ、私、ユノ様のことー・・・



「ユノ様・・・」


ひなのは溢れる涙をそのまんま、ゆっくりと起き上がった。
ユノ様の言葉で、もう何も痛くない。


「ユノ様、私・・・」



・・・こんな所で、こんな姿で、こんなタイミングで言うことなのかな?


もっと綺麗なカッコして、ムード作ってから言いたいんだけど、そんなのもういいよね。



「私、ユノ様が好きです」




「・・・!?」




ユノが答えるまでは、間があった。

果たしてひなののその言葉が、無感情の人斬りに正しく伝わったかは、不明だ。


「私、自覚がなかった。
まさか、人斬りの男の人を好きになるなんて。

でも、ユノ様といて安心するし、斬られたのにそれでも・・・

今、そう思うんです。

だから、本物です」


分かるかな?
好きって意味。その言葉だけじゃ・・・

ユノ様には伝わらないのかな?


愛が分からないのに、愛してますって言っても、分からないんだと思うけど・・・


「・・・好き、か・・・

好きと言われたのは、麗憐とお前だけだ。
だがお前の言う好きは、麗憐のものとは違う気がする」

「はい、違うと思います」


ユノ様が、明らかに困惑してる。


「そうか。・・・なんだか、また気持ちが落ち着かん」

「それは、嬉しいのか悲しいのか・・・
部類分けしたら、どっちですか?」

「分からん・・・感情に関してはよく分からない。

だが、どちらかに部類するとすればー・・・




嬉しい、だと思う」



・・・ユノ様、それって・・・



「ユノ様、それはきっと、私と同じなんだと思います!

ユノ様、私はユノ様といると落ち着くし、一緒にいたいと思えるし
人斬りでもいいから話したいって重います。

だから好きです。

ユノ様は、私をどう思っていますか?」


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