ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

狂い咲き

ジャンル: 異世界(恋愛) 作者: saran
目次

人斬りのイメージ



・・・わぁ。やっぱり、麗憐は笑っていた方が綺麗だな。


・・・私が花を買ったから?お見舞いに行ったから?

だから買ってくれたんだ。嬉しい。すごく嬉しいよ、麗憐。



「・・・何故だ?何故、俺には分からない力を、麗憐が分かる?

お前に必要な力ではない、それは俺が手に入れるはずのものだ・・・!」

「ユノ様・・・!ごめんなさい。あたいは、ユノ様の力を奪ったつもりは・・・!」

「待って、違うの。違うんです!」


も~、そういうんじゃないんだってばー!


「愛っていうのは、みんなが持っていて。誰かが独り占めするものじゃないから。
だから、麗憐が愛を持ったからって、ユノ様の力が減るわけじゃないんです。

ユノ様の愛は、ユノ様の中だけにあるんです!」


・・・って、言って分かるかな?


「・・・そうか」

「そうです。だから・・・心配しないでください」

「そうか・・・分かった」



ユノ様はそう言うと、じっとひなのを見つめてくる。


「・・・な、何ですか?」
「いや・・・やはり、俺にはない力を、お前は持っているんだな。

お前の目を見ていると・・・なんだかな。
人斬りの俺たちとは、違うものを感じる」

「・・・。それは、い・・・嫌ですか?」

「・・・不思議な気持ちだ。嫌ではない」



二人の間に流れた空気を、感じ取ったのはひなのだけだろうか。


・・・あれ、なんだろ・・・



・・・ユノ様の細くて吸い込まれそうな目、嫌じゃない。
初めて会った時は、すごい嫌だと思ったのに・・・。



「へぇ。ユノ様がそう言うなら、ひなのさんは、本当に八龍の力があるんですね」



・・・いやいや、本当、普通の人間なんだけど・・・


私で力があるとか言ったら、世の中のもっと優しさに溢れてる人達、どうなっちゃうの。って感じだよ。



「おっと、ちょい待ち。ユノ様、止まって下さい」

突如、先頭にいた空牙は立ち止まると、その手で後ろ組を制した。


ひなのも驚いて立ち止まる。


何々?なんかいるの?!

「ユノ様、昨日の残党です。始末して来ます」


昨晩、ユノを襲ったという輩の残党が、向こうの曲がり角を曲がって行ったらしい。

「空牙、僕が行くよ。昨晩こっちは至って普通でつまらなくてね・・・僕の妖刀が動きたがっているから」



鬼優が、見えもしない妖刀を鞘から抜く。


「ユノ様は、ひなのさんを連れて宮古寺(みやこでら)に急いで下さい」

「あぁ、そうだな。任せるぞ、鬼優」



・・・可愛い顔して、強いのかな?鬼優って人。・・・大丈夫なのかな。


「じゃあ、また後で。・・・あ。

ひなのさん、髪にソフトクリーム付いてますよ」

「えっ!?」

「ごめんね、タオルとか今ないんで・・・髪ごと引っこ抜くか、妖刀で切って貰えばいいと思います」


そ、そんなことするわけないでしょうよ!!


「本当か?ひなの、あたいの東雲でぶった切ってやる!髪の先っぽよこせよ」

「だ、大丈夫!これくらい大丈夫!・・・ほら、ね!手で取れるから。後で手と髪洗うから平気!」




鬼優はとっくに行ってしまい、やけに優しさに目覚めた麗憐を抑える。



な、なんかこの人達といると、人斬りのイメージ壊れるな・・・


「昨晩やつらを見かけたのは、この先のティー路地右、それから髑髏沼(どくろぬま)の近くだ。

空牙と麗憐で、手分けして行ってくれ」

「御意。俺、ギリギリまで一緒行っときましょうか?

・・・まぁ、ユノ様に手傷を負わせるような奴じゃ、俺がいても太刀打ちできないかもしれないけど・・・

盾くらいにはなれるかも」

「ユノ様の盾なら、あたいで十分だ!」



・・・そんな、昼間っから襲われる可能性も、あるのかな。


「・・・あの。

その、昨日ユノ様を襲った人達って、強いんですか?まだいるんですか、この辺に?」

「だいたいは、昨日俺とユノ様で処分したよ。
ただ、一人やっかいなのがいてね・・・

・・・勿論ユノ様が斬ったけど、まだ仲間がいるなら一人残さず消しとかないと。


例えば、俺は班長だし結構強い方だと思うんだけど、俺が三人いてもユノ様にはかすり傷一つつけられない。

俺と麗憐、鬼優が組んでも無理な話だ。


それなのに・・・そいつは、ユノ様の手の甲に傷を負わせた。


そんなやつが平和町にいるとは、思ってなかったんだよ」



・・・そうなんだ・・・
かなりの一大事だったんだ、昨日の出来事は。


いつも平然としてる空牙の顔が、わずかながら深刻そうなのを見て、ひなのにもようやく事の大きさが伝わった。


「・・・もう宮古寺に着く。余計な心配はいらない。お前たち二人は先に行け」

「御意」
「はい」



商店街を抜け、雑木林や細い田舎道に入ると、ユノとひなのは二人と別れた。


「着いたぞ、ここだ、


人斬りの発端の地・・・秘蔵の眠る地・・・"宮古寺"」


・・・宮古寺。

ここが、人斬りの始まりの地。


なんか、普通の神社みたい。いや、宮古寺だからお寺かな。


人斬り一人おらず、まるで隠されるように林に覆われるこの場所。

大きな井戸に水が溜まり、寺といいつつ古ぼけた赤い鳥居が構えている。



その一番奥に、一階建ての建物があった。

昔の和風建築みたい。


「・・・お前は、人斬りをどう思っている?」
「・・・えっ?」


どう思ってるって・・・


「人を殺す人達・・・かな」
「・・・ふっ」


ひなのの、そのまんまの説明に、ユノは小さく笑わずにいられない。


「そうか。まぁ、そうだな」

「人斬りイコール処刑人みたいなイメージがあって。私達の日常には、接点を持つべき人種じゃないって。

でも・・・

なんだろ。純粋なのかもって思いました。麗憐とか特に。

それに、みんな・・・

思ってたのと違います。無差別じゃないし、犯罪者でもないし」


とか言いながらも、私もまだよく分からないんだけどね。



「人斬りはな、当初二人の男女から始まったんだ。

・・・来い。中に入れるようになっている」


ひなのはユノに着いて、建物の中へと足を踏み入れるー・・・




『弥之亥の者よー・・・』



目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。