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ニーナの苦悶

原作: その他 (原作:ときめきメモリアルGIRLSside3) 作者: 中野安樹
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苦悶

「……ニーナ?ねぇ?ニーナ?」

このマンガの続きどこなの?言いながら、短いスカートはいて足をブラブラさせるのをやめて欲しい。マジ、見えるから。ホント相変わらず、凶悪にエロカワイイ格好で、人気も知らないで、ベッドに寝転ぶ彼女が憎らしい。マジ、けしからんのアンタだから。

「……アンタさ。マジ、意味わかんない。ねぇ?邪魔しに来たの?それとも?」

「えー?応援?してるよー?がんばれー?ほらね」

ヒラヒラ、読みかけのマンガをふる態度は、どうみても受験生を応援している態度に見えない。それに、付き合い出したばかりの彼が受験生だというのに、部屋にチラ見せしながらベッドに寝転ぶ彼女……。もうこれ絶対、邪魔しに来たに決まってる。ねぇ?アンタ、オレをからかいにきたの?もう、さ。なにがしたいの?ホントさ。もう、ヤダヤダ。


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やっと。ナンパなんていう最悪な中坊の頃の出会いからなのに。あの頃から3年越しの片思いが成就したというのにチャンスタイムも、イチャイチャする隙なんてあったもんじゃない。ホント、なんか神様にまでいじられてんのかしら、オレ。イタズラ好きな運命は残酷だよな、こっちは晴れて受験生だってのに、あっちは晴れやかに女子大生……。こんなにも1コの年の差が身に染みることなんてない。それに、彼女のいじめっこ体質のせいで甘い幸せを満喫する暇なんてなかった。


今思い出しても、あれは、切なかった。センパイの卒業式のあとだから付き合い始めて何度目かのデートでのできごとになる。普段、デートでもふざけてばかりのオレらにしてはビックリするほどイイ雰囲気でチラリとその先も、期待してしまったときのことだ。男のこだし?イイじゃん別に?やっぱ気になるじゃん?なのにセンパイときたら、もっともらしい気配りでいじめっこな彼女が顔を出した。

「……ニーナ。ねぇ。この先はさ……。大学合格したお祝いにしよう?…ねぇ。約束覚えてる?」

北海道、……行きたいなぁ。うっかり、聞き落としそうになるくらい小さな声で呟いた。


オレらにしたらとてつもない甘い雰囲気の中、クソ可愛い声で言われてドキドキして顔をはなしたら、潤んだ上目遣いでおねだりされた。

「あー、もう。アンタといったらホント。ヤダヤダ。ヤダ」

なんなの?ホント。……もう、たまんない。


結局、その場の、空気はいっぺんしていつものふざけた感じに戻ってしまったのだけれども。でも、今でも耳の付け根を赤くしたセンパイのことが忘れられないって言ったら怒るかな?


オレはいつまでも可愛い後輩のままじゃない。センパイの出したミッションをクリアして先に進んでやる。見事にデカイにんじんは彼女と一緒の、キャンパスよりモチベーションは上がったのだけれど。悔しいから教えてやんない。


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それにしても、なんでこんなにもやる気にさせるクセに、突き落とすみたいに不安にさせたり、たまにご褒美みたいにドキドキさせたりするんだろ。

「ねぇ。センパイ?…イイコで頑張るからさ。ちょっとだけ……充電させて?」


甘えるような甘い声で、いつもからかってばかりのいじめっこに、意趣返ししてやろうと冷えたミネラルウォーター片手に近寄る。あぁ、センパイのビックリしたときのまんまるな目も可愛い。

「ほらこの部屋。暑いでしょ?水飲む?」

少し低めの声で、雰囲気作りながら頬っぺたに当ててから手渡す。予想以上にベッドのきしむ音と少し揺れた感じがなんだかエロい。なんだか、やけに焦ってしまう自分のヘタレ具合に嫌気がさす。


なんたって、ほら。今、オレらベッドの上だよ?いつも言ってるでしょ?オレ、勘違いするよって。


「ねぇ?」

センパイがペットボトルの蓋を閉めたことを確認してから、すり寄ってみる。それにしても濡れた唇が凶悪的にヤバい。我慢できるかな?オレ。

「頑張ってるっしょ?アンタからご褒美ちょうだい?」

それでもさ。今はまだ。これで我慢するから。ちょっとだけ、味見させて?


「可愛くおねだりしてくれたらイイよ?旬平くん」

こっちの反応を楽しむかのようにクスリと寂しそうに笑う顔が愛しい。あー、もうそれ反則。今日も……オレの負けでいいから。

「センパイ。ほっといてばかりでごめんね。寂しかった?」

「……うん」

照れたみたいに、赤くなる彼女を抱きしめられる、これも充分イチャイチャタイムなのかもしれない。


「ニーナ。…マンガ」

この期におよんでまだマンガを催促してくるあたり、オレに夢中になってくれる日は遠い気がする。

「ぁーあ。ホント、アンタはもう。ヤダヤダ、ヤダ」

きっと、オレの顔が赤くなっていることに気がついている彼女がイタズラっこよろしく頬っぺたをつつく。

「ニーナ?」

今日も最愛の可愛い女王さまの手のひらの上。愛らしい笑顔と絶妙なさじ加減でオレを惑わす。


「ホント、アンタにはかなわない」


きっと。この先どんなことがあってもアンタのそばでいじられてる気がする。


「完」

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