ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

サヨナラだけが人生だ

原作: ONE PIECE 作者: 柚月
目次

セパレーション・フォーエバー

「じゃあ、いいか。」
シンの決意を聞き、カエンは準備を整えた。
ガシャンと重たい響きを残してシンの両足に嵌められたのは重量感のある頑丈な足かせで、カエンは真の足にそれを装着しながら強い視線でシンの目を見据える。
「息は出来ない、だが死ねない。本当にいいのか。」
「独りで逃げるくらいなら、誰も見つけられない海底で静かにしてる方がいい。カエン少将がもし来れなかったら、そのまま独りで死んだ方がいい。」
「っ美味いメシ、食わせてやるって約束しただろ?迎えに行く、絶対に。」
果たされない約束だと、二人とも気付いていた。
カエンの命の期限が近付いている事も、分かっていた。
けれど、それでも約束を交わしたのは、“そうありたい”とただ思いたかっただけだった。
海上に居ればいつかは見つかるだろう。そうなったら、カエンはもう守れない。
そしてシンも、それを望まなかった。
「ありがとう・・・っ」
最後の言葉は、それだった。
シンをそっと海へ下ろしその姿が見えなくなるまで見送ったカエンは、一人になった船上で仰向けに倒れ、血液と共に流れ出ていく体温を感じながらそっと目を閉じた。

「ザマァ見ろ、クソ中将。」

口元に笑みを浮かべて息絶えたカエンの亡骸は、波に誘われ海の彼方へと流れて行った。


「死ぬ前に残していたあの男の密告で、俺は立場を失った。コイツもだ。」
忌々し気にシンの体を乱暴に扱うイーグ。
誰もが言葉を失う中、イーグはシンの髪の毛から手を離しその体を地面へ叩きつける。
「ぃ、っう、っ」
「支部は解体、部下は居なくなり、お前を探そうにも俺も悪魔の実の能力者になっていたせいで場所は分かっても海底には行けない。」
地面に横たわるシンの頭を踏みつけながら言葉を続けるイーグの口調は段々と荒々しくなり本性が露わになる。
「っシンから離れろ!!!」
更に暴行を加えようとするイーグを見て、ルフィが殴り掛かったのはその直後。
イーグはそれを躱しながらも更に続ける。
「分かるか!?その時の俺の惨めさが!正義の為に海軍に入り、海賊を相手にしてきた結果がお尋ね者、そんな理不尽あってたまるか!」
ルフィと対峙しシンから離れたイーグ。
その隙を突いてチョッパーとウソップがシンの元へ駆け付け連れ出そうとするが、それをイーグが許すはずもない。
「可哀想に、さっき心臓を撃ち抜いたせいで発信機と海楼石まで取れてしまった。また付けてやらないと、コイツはいつ寿命が来て死ぬか分からない恐怖をずっと味わい続けるんだぞ?」
ルフィに攻撃を加え遠くへと弾き飛ばしたイーグは、シンの側へと駆け寄ったチョッパーとウソップを上から見下ろすとぞっとするような声色でそう喋る。
「そんなの!生き物ならみんな同じだろ!いつ死ぬか分からない中だから精一杯生きてるのに、死ねなくするなんてただの地獄じゃねぇか!」
「化け物の気持ちは化け物が良くわかる、とでも?お前とシンじゃ価値がまるで違うんだ、勝手に俺の物に触るなよ。」
まるで会話にならない。
言葉の通じない苛立ちで怒鳴り返したチョッパーが怒りに顔色を変えれば、飽きれたようなため息を吐き出しながらイーグの攻撃がチョッパーを襲う。
「どいてろ、チョッパー!!」
それを守ろうと間に入ったのはウソップだったが、構えたパチンコから攻撃を仕掛けようとしたその刹那、イーグの攻撃によって容赦なくウソップとチョッパーが同時に蹴り飛ばされてしまう。
「チョッパー!ウソップ!!」
その威力はかなりのもので攻撃を直接受けたウソップは意識を飛ばし、直接的には攻撃を喰らっていないチョッパーでさえ一瞬意識を遠のかせかけた。
それを見て慌てて二人の様子を確認しに行ったのはナミだったが、二人がなんとか息をしているのを確認すると安堵の息を漏らす。
「何て事を・・・っ」
「下がってろロビン、ここは俺が、」
「フランキー!ロビン!お前らは動くな!」
次は自分がとロビンとフランキーが動き出そうとしたその時、それを制止したのはルフィの声。
「コイツは俺がぶっ飛ばす!」
怒りを露わにするルフィのその声にロビンとフランキーは動きを止め、戦いに参加したい気持ちをぐっと堪えてルフィに「任せた」と告げて怪我を負ったウソップ、チョッパーの下へ駆け寄る事とした。
「海軍に目にモノを見せる為にも、俺にはシンが必要なんだ。」
「理不尽なのはお前だろ!シンは関係ねえじゃねえか!」
「あるさ!捨てられたガキをここまで生かしてやったんだ、見返りくらい求めるのが普通だ!それにコイツには俺の命令がインプットされている。海賊と聞けば戦闘スイッチが入るように教育した、俺が殺せと命じればどんな状況でも俺の命令を実行する!」
「ふざけんな!シンは物じゃねえんだぞ!」
凄まじい攻防を繰り返しながら交わされる怒号の掛け合い。
ルフィの攻撃がまるで効いていないにも関わらずルフィはどんどん消耗していっており、その違和感にその戦闘をみていたゾロの眉間の皺が深くなる。
「なんだ、まるで攻撃が効いてねえ・・・?」
違和感はルフィも感じていた。
殴った感覚がまるでないのだ。
「っ何だコイツ、グニグニしやがって!!」
その言葉に、イーグの口元がにやりと歪んだ。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。