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サヨナラだけが人生だ

原作: ONE PIECE 作者: 柚月
目次

ノー・デッド

「この顔を、知っているのか。流石は博識だな、「悪魔の子」ニコ・ロビン。」
「ええ、有名ですもの。海軍支部を私物化し、残虐非道を尽くしたまるで海賊の様な男。5年前に海軍を追放されてお尋ね者になったって新聞の記事に載っていたわ。」
イーグの底冷えするような声に内心冷や汗を流しながらも、ロビンは口元に笑みを浮かべながら会話を交わす。
「海軍を追放?違う、俺は自分で海軍を見限ったんだ。海賊を殲滅する為に作られた機関が、海賊に対して何をしようと文句を言われる筋合いはない筈だ。」
「それを咎められたから、離反した、と?」
「俺を罪人と呼ぶならば、俺を捕えられない程に落ちぶれた海軍もまた罪人。そんな組織に居る理由はない。俺の目的はただ一つ、海賊の殲滅、それだけだからな。」
そう言い、向けたのは明白な殺気の込められた敵意の視線。
思わず戦慄く一味を見渡したイーグが一歩、歩みを進めたその時だった。
「細けえ話はどうでもいい。俺はシンと話をしに来ただけだ、お前は引っ込んでろ!」
容赦なく、イーグの顔面に突き立てられたルフィの拳。
その勢いでイーグの体は吹っ飛び、その光景を目の当たりにしたシンは思わず目を見開いた。
「シン!お前に言ってんだよ!考えてるだけじゃ分からねえ、俺は超能力者じゃねえからな。“お前が”どうしたいか言えよ!」
「え・・・?」
「関係ねえとか、関わるなとか、そんなの少しも考えてねぇくせに思ってもない事ばっか言うな!お前がどうしたいんだよ!?」
「っ」
ルフィの言葉にシンの目が僅かに潤むのを、ルフィは見逃さなかった。
歯を食いしばって言いたい台詞を我慢している事など誰が見ても明らかで、それはシン自身も分かってはいて。
けれども続く言葉は喉にひっ掛かって出てこないのだ。
「おい、シン!!」
「・・・あまり、虐めないでやってくれないか。」
それにいら立ったルフィが更に語気を強めてシンに言った、その時。
地を這うような声がルフィに届き、直後に勢いよく殴り飛ばされるルフィの体。
「ルフィ!!!」
ウソップの慌てた声が響く中、ルフィの体は二転三転して甲板を転がった後に一味の足元まで飛ばされてようやく止まった。
衝撃で口の中が負傷したのかぺっと血を吐き出しながら上体を起こしたルフィは、自分を殴り飛ばした本人であるイーグを睨みつける。
「言いたくても、言えないように“して”ある。逃げたくても逃げられないように“教育”してあるんだ。あまり虐めてやってくれるなよ、可哀想じゃないか。」
腹の底から冷えるような、冷酷な声で言ったイーグの表情に先ほどまでの張り付けた笑みはなかった。
その声に全ての思考を凍らせたシンが、自分に向けられた銃口に気付いたのはそこから銃弾が発射された後の事。
「っ何を・・・!」
切羽詰まったサンジの声が響くよりも、ゾロが刀身を抜き取るよりも、放たれた銃弾がシンの心臓を射抜く方が早かった。
「シン!!!」
悲鳴を上げたのはナミ。
誰もが目を見開き、まるで時が止まったかのように銃声だけを轟かせてから訪れた静寂。
声もなく銃弾の衝撃で地面に仰向けに倒れたシンの倒れた音が聞こえた時、怒りに任せたゾロとサンジの攻撃がイーグに向けられた。
「何をしてやがる!!」
「イカレてんのか、てめえは!!」
けれどその攻撃は容易くいなされ、弾かれてしまい。
そんな中チョッパーがシンに慌てて駆け寄ろうとするも、それすらもイーグはチョッパーを蹴り飛ばす事で近付く事さえも許さない。
「どういう、つもり・・・?」
ロビンでさえ状況を把握できず、しかし怒りを隠せない口調でそうイーグに問いかければ、返された返答はあまりにも予想外のものだった。

「こんな事じゃ、死なないように出来ている。」

そう言い、つま先でシンの体を軽く蹴るイーグ。
そうすると心臓を射抜かれたはずのシンが、僅かに反応を示した。
「な、にを、」
フランキーが言葉を詰まらせながらなんとか声を発すれば、飽きれたような表情でイーグが一味を見る。
「まだ分からないのか?コイツは、死なないんだよ。」
その言葉で思い出したのは、シンが「フジフジの実」の悪魔の実の能力者であったという事。
表情で何かを察した事が分かったのか、イーグは静かに口を開くと昔話を始めた。

「シンは、この世に生れ落ちた瞬間から両親も兄弟も、家族など何も居ない状態だった。」
捨てられた、と言えばわかりやすいだろう。
本当に言葉通り、まるでゴミの様にガラクタと共に捨てられたその姿を見つけたのがイーグだったそうだ。
当時既に「G-0」支部の長官に就いていたイーグは、その捨てられた子供を拾った。
支部にはそういった境遇の子供が「研究材料」若しくは「兵士育成」の為に集められており、シンもその一人だったという。
そういった子供たちはコードナンバーをその身に刻まれ、シンは「51N」の番号を与えられた。
肉体強化、改造、洗脳。海賊殲滅に向けたありとあらゆる実験や訓練が課せられた子供たちは、ほとんどがその途中で「壊れ」てしまう。
シンはその中で生き残ったほんの一握りであり、コードナンバーが「シン」と読める事からその名を付けられた。
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