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サヨナラだけが人生だ

原作: ONE PIECE 作者: 柚月
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目覚めと出会い

何もなかった。
それが普通だった。
何かがあった。
けれどそれは深く埋めた。

第3話 目覚めと出会い

「俺もこんな状態の人間を診た事がないから、これじゃ何をしていいか分からなくて・・・」
「今の状態は健康そのものって事だろ?なら、自然に目覚めるのを待てばいいじゃねぇか。何があったかを聞くなら、その後でいい。」
「そう、だけど、」
くぐもった声でそう返すチョッパーの心境は、ゾロにもなんとなく理解できた。
何も出来る事がないけれど、何かをしてあげたいんだろう。
チョッパーの優しさをこれでもかという程に知っているゾロは、悔しそうに眉間に皺を寄せるチョッパーの頭にポンと手を乗せると表情を変えずにベッドの横に置かれていた椅子に腰を掛けた。
「起きてから痛ぇトコがねぇか聞いてやりゃあいい。何かあればお前の出番だろ?チョッパー先生。」
「っ!!!そう、そうだな!!」
「お前しか医者は居ねぇんだから、頼んだぞ。」
「おう!任せとけ!!・・・ゾロはスゲェな。俺の考えてる事が分かるみてぇだ。」
「そんな大層なモンじゃねぇよ」
「えっえっえっ、大層なモンなんだぞ!」
ゾロの言葉に落ち着いたのか、チョッパーはいつも通りの笑顔を浮かべて。
それを見てゾロも薄く笑みを浮かべた、その時だった。

「、っ、う・・・」

小さく漏れた、声。
それにチョッパーとゾロは同時に反応して子供の方へと視線を移すと、そこには今まで閉じていた瞳を薄く開こうとしている子供の姿があって。
「・・・、」
ゆっくりした動きで自らの右手を布団から出すと自分の顔の前まで持って行った子供は、その手を握ったり開いたりする動作を数回繰り返した後に、か細く、本当に聞き取れない程にか細い声を発した。
「まだ、死んでないんだ」
小さな声であってもそれはチョッパーとゾロの耳にも届き、同時に険しくなる二人の表情。
それに気付いていない様子の子供は眼前へ持ってきていた手をパタンとベッドの上へと落とすと、再び目を閉じる。
そして聞こえたのは寝息で、スースーと規則正しい息を漏らすその子供を見て固まるゾロと俯くチョッパー。
「ゾロ、」
それから少し間を空けて、最初に言葉を発したのはチョッパーで。
名を呼ばれゾロがチョッパーを見れば、そこには目に一杯の涙を溜めたチョッパーが意を決したように、子供を診察する為に乗っていた台から飛び降りると部屋の出口へと歩き出そうとしていた。
「俺、ルフィに話したい事があるんだ。だから、その間その子を見ててもらってもいいか?」
「・・・また目を覚ましたらお前を呼ぶ、それでいいか?」
「うん、ありがとう」
チョッパーの行動を先読みしたゾロが一拍置いて返事を返せば、次の瞬間にはお礼の言葉を残して走り出していたチョッパー。
その背を見送ってから子供に視線を戻したゾロは椅子の上で胡坐をかいて両腕を組み、それから深く長い溜息を吐き出し。
「ガキらしくねぇな。」
先ほどの子供が発した言葉を思い出し、その諦めたような声色も同時に思い出したゾロは眠る子供の顔を眺めて小さく舌打ちした。

部屋を出たチョッパーは駆け足で一直線に甲板へと向かった。
溜った涙がこぼれない様に何度も拭ったし、鼻水だって必死に堪えていた。
けれどあの子供の言葉が、様子が頭に浮かぶ度に止め処なく溢れてくるそれらを終いには拭いきれなくなり、甲板で目当ての人物を見つけた頃にはもう顔はグシャグシャになっていて。
ルフィに駆け寄り飛びついたチョッパーは涙と鼻水を盛大にこぼしながら、驚くルフィを見上げて声を発した。
「ルフィっ!!!」
「どうしたんだよ、チョッパー!?」
「っあの子、可哀想だ・・・!俺、何とかしてやりたい!!!」
チョッパーの言葉の真意はくみ取れずとも、その表情に何かしらの事情を感じたルフィはチョッパーの頭をグリグリと撫でてやりながらチョッパーを抱えてナミのいる場所へと駆け寄る。
「ナミ!」
「何よルフィ、今忙しい・・・ってチョッパー!?ちょっと、どうしたの!?」
「ナミ、俺、っ・・・!」
「あの子の事、何か分かったの?」
ナミに問いかけられ、必死に頷くチョッパー。
何度もどもりながらも診察の結果と先ほど子供が発した言葉をナミに伝えたチョッパーは、溢れてくる涙を拭いながらナミを見上げる。
「ナミ、俺に何か出来るか分からないけど、放っておけないんだ。」
「そうね、チョッパー。私も同じだわ。」
あんな子供が、何を思って死を望むような発言をしたのだろうか。
ぐ、とこみ上げてくる熱いモノを抑え込んだナミは、今後の相談をすべく再びクルー達を近くへ集めようとした、その時。

「おい、チョッパー!!!!!」

船内から響いたのは、ゾロの声。
子供の様子を見るよう伝えていたゾロのその声に、チョッパーは自分を抱えていたルフィの手から素早く抜け出すとその声の方向へと走り出す。
「あの子が起きたのかもしれない!」
「そうか!!じゃあ俺も!!」
「ちょ、ルフィ!アンタが行ったら騒がしくなるだけ・・・って、話を聞けー!!!」
そのチョッパーを追いかけ走り出したルフィを追いかけるように船内へと続くナミ。
他のクルー達もその様子に気付いたのか、キッチンにいるサンジ以外はチョッパーを追いかけて船内へと急いで向かった。
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