27
…トントン…
しのぶ「ゆりえさん、入りますよ。」
「はい。」
しのぶ「寛いでいて下さってかまいませんよ。」
「いえ。使用人の立場でこんな綺麗な部屋で待たせて頂けるだけで十分です。」
しのぶ「ゆりえさん。…今まで酷いことを…」
「…やめてください。」
しのぶ「えっ…」
「皆さん、どうして私に謝ったりするんですか?…私は、何も…何もされていません。したとすれば私の方…。生きているだけで人に不快な思いをさせる見た目、力もなく私は弱い。…私は謝られるようなことをした覚えは沢山あります。…ですが、謝られるようなことは何一つされていません。」
しのぶ「…。ゆりえさん。あなたは今記憶が混乱しているんです。…あなたは愛柱からあらぬ噂を流され、私達はそれを信じた。そしてあなたに酷いことをして…」
「酷いこと…。私はあなた方に何かをされた覚えはありません。ですから頭をあげてください。私は、雇っていただけ…っゴホッゴホッ…!」
しのぶ「ゆりえさんっ…!!」
「すみませ…っ…大丈夫です。働けます。っ…ゴホッ…よくあるこっ…ゴホッゴホッガハッ…。」
しのぶ「ゆりえさんっ!!」
しのぶがあわてて彼女を支えると彼女の手には真っ赤な鮮血がついていた。
しのぶ「よくあること…?これがですか?」
しのぶは眉を潜めた。
しのぶ「とりあえずそのベッドに横になってください。」
「ですが…」
しのぶ「っ…。これは命令ですよ。家主の命令です。聞けますよね。」
「かしこまりました…」
そうして彼女は忍の命令により少し休むことになった。
…翌朝…
しのぶ「体の方はどうですか?」
「!!…申し訳ありませんっ!雇主様よりも後に起きるなんてっ…!!」
しのぶ「…いいんですよ、ゆりえさん。…起き上がらずにそのまま聞いてください。」
そう言いながらしのぶは手際よく彼女に点滴を刺していった。
しのぶ「この家のルールを決めておきます。この家では貴女は女中としてではなく、私の友人として振る舞ってください。」
「そんなっ…!私は使用人…」
しのぶ「嫌ですか?…そう聞いても貴女は私は雇われの身と言うんでしょう…?…違うんですよ。…貴女は、私や柱からひどい扱いをされすぎた。…そして貴女は記憶の混乱をおこしてしまったんです。」
「…」
しのぶ「いいですか、聞いてください。私は貴女と仲間だったのに、貴女に酷いことをしました。暴言を吐き、傷つけ、手当てを拒否して貴女を追い詰めました。最低なことをしました。…本当にすみませんでした。」
そう言ってしのぶはその場で土下座した。
「や、めてくださいっ…私は謝られるような…」
しのぶ「許してほしいなんて図々しいことは言いません。ですが…もうこんな無理しないで下さいっ…これ以上無理をすれば死んでしまいますっ…」
そう言うしのぶは泣いていた。
「御主人様っ…あ、えと…目、擦ったら腫れてしまいます…」
そう言うと自分の着物の袖でしのぶの涙を抑えた。
「せっかくの美人が台無しになってしまいます。」
しのぶは思わず涙も止まりばったりゆりえの顔を見ると眉を下げてしのぶを心底心配するような顔をしていたゆりえにまた驚いたのだ。
「…私が混乱して忘れてしまっている記憶を、教えていただけませんか?…もし、私のようなものに仲間と呼べる存在がいたのなら、思い出したいんです。それに、御主人様が泣いてしまわれるほど私が酷いことをしたのであればそれも思い出さなければなりません。思い出してきちんと誠心誠意償わせて頂きます。どうか、教えてください。」
そう言ってゆりえはベッドから出るとしのぶの前に同じように座って頭を下げた。
しのぶ「ゆりえさんっ…」
しのぶはゆりえの忘れている記憶について話し始めた。
しのぶ「…ということです。」
「…そうですか…。」
しのぶ「謝って許されることじゃないのは分かっています。ですが、謝らせてください。本当にすみませんでしたっ…」
しのぶはそう言って額を地面につけて謝罪した。
「謝ることなどひとつもないじゃないですか。…顔をあげてください。」
しのぶ「私はゆりえさんに酷いことをっ…!」
「いいえ。そうなってしまったのは少なからず誤解を生んでしまった原因があります。嵌められたのならばそうしたくなる人間だった、そういうところも私のせいです。…正直、私は今の話を聞いて嬉しいと思ってしまいました。」
しのぶ「嬉しい…?」
「はい。女中や奴 れいとしてではなく、鬼殺隊として柱として、仕事をしていた事。そして仲間がいた事。過去の記憶しかない私からすれば…私は少しの間だけでも誰かと過ごせた事を嬉しく思います。」
しのぶ「ゆりえさんっ…」
「だからこそ、今こうして記憶がなくなってしまったのはバチが当たってしまったのかと思います。…忘れたくないはずの記憶を忘れるなんて…」
しのぶ「それは…私達が余りにも酷いことをしてしまい、人間の防衛本能が記憶を消したのだと思います…これ以上覚えているのは辛いと。」
しのぶ「ゆりえさん、入りますよ。」
「はい。」
しのぶ「寛いでいて下さってかまいませんよ。」
「いえ。使用人の立場でこんな綺麗な部屋で待たせて頂けるだけで十分です。」
しのぶ「ゆりえさん。…今まで酷いことを…」
「…やめてください。」
しのぶ「えっ…」
「皆さん、どうして私に謝ったりするんですか?…私は、何も…何もされていません。したとすれば私の方…。生きているだけで人に不快な思いをさせる見た目、力もなく私は弱い。…私は謝られるようなことをした覚えは沢山あります。…ですが、謝られるようなことは何一つされていません。」
しのぶ「…。ゆりえさん。あなたは今記憶が混乱しているんです。…あなたは愛柱からあらぬ噂を流され、私達はそれを信じた。そしてあなたに酷いことをして…」
「酷いこと…。私はあなた方に何かをされた覚えはありません。ですから頭をあげてください。私は、雇っていただけ…っゴホッゴホッ…!」
しのぶ「ゆりえさんっ…!!」
「すみませ…っ…大丈夫です。働けます。っ…ゴホッ…よくあるこっ…ゴホッゴホッガハッ…。」
しのぶ「ゆりえさんっ!!」
しのぶがあわてて彼女を支えると彼女の手には真っ赤な鮮血がついていた。
しのぶ「よくあること…?これがですか?」
しのぶは眉を潜めた。
しのぶ「とりあえずそのベッドに横になってください。」
「ですが…」
しのぶ「っ…。これは命令ですよ。家主の命令です。聞けますよね。」
「かしこまりました…」
そうして彼女は忍の命令により少し休むことになった。
…翌朝…
しのぶ「体の方はどうですか?」
「!!…申し訳ありませんっ!雇主様よりも後に起きるなんてっ…!!」
しのぶ「…いいんですよ、ゆりえさん。…起き上がらずにそのまま聞いてください。」
そう言いながらしのぶは手際よく彼女に点滴を刺していった。
しのぶ「この家のルールを決めておきます。この家では貴女は女中としてではなく、私の友人として振る舞ってください。」
「そんなっ…!私は使用人…」
しのぶ「嫌ですか?…そう聞いても貴女は私は雇われの身と言うんでしょう…?…違うんですよ。…貴女は、私や柱からひどい扱いをされすぎた。…そして貴女は記憶の混乱をおこしてしまったんです。」
「…」
しのぶ「いいですか、聞いてください。私は貴女と仲間だったのに、貴女に酷いことをしました。暴言を吐き、傷つけ、手当てを拒否して貴女を追い詰めました。最低なことをしました。…本当にすみませんでした。」
そう言ってしのぶはその場で土下座した。
「や、めてくださいっ…私は謝られるような…」
しのぶ「許してほしいなんて図々しいことは言いません。ですが…もうこんな無理しないで下さいっ…これ以上無理をすれば死んでしまいますっ…」
そう言うしのぶは泣いていた。
「御主人様っ…あ、えと…目、擦ったら腫れてしまいます…」
そう言うと自分の着物の袖でしのぶの涙を抑えた。
「せっかくの美人が台無しになってしまいます。」
しのぶは思わず涙も止まりばったりゆりえの顔を見ると眉を下げてしのぶを心底心配するような顔をしていたゆりえにまた驚いたのだ。
「…私が混乱して忘れてしまっている記憶を、教えていただけませんか?…もし、私のようなものに仲間と呼べる存在がいたのなら、思い出したいんです。それに、御主人様が泣いてしまわれるほど私が酷いことをしたのであればそれも思い出さなければなりません。思い出してきちんと誠心誠意償わせて頂きます。どうか、教えてください。」
そう言ってゆりえはベッドから出るとしのぶの前に同じように座って頭を下げた。
しのぶ「ゆりえさんっ…」
しのぶはゆりえの忘れている記憶について話し始めた。
しのぶ「…ということです。」
「…そうですか…。」
しのぶ「謝って許されることじゃないのは分かっています。ですが、謝らせてください。本当にすみませんでしたっ…」
しのぶはそう言って額を地面につけて謝罪した。
「謝ることなどひとつもないじゃないですか。…顔をあげてください。」
しのぶ「私はゆりえさんに酷いことをっ…!」
「いいえ。そうなってしまったのは少なからず誤解を生んでしまった原因があります。嵌められたのならばそうしたくなる人間だった、そういうところも私のせいです。…正直、私は今の話を聞いて嬉しいと思ってしまいました。」
しのぶ「嬉しい…?」
「はい。女中や奴 れいとしてではなく、鬼殺隊として柱として、仕事をしていた事。そして仲間がいた事。過去の記憶しかない私からすれば…私は少しの間だけでも誰かと過ごせた事を嬉しく思います。」
しのぶ「ゆりえさんっ…」
「だからこそ、今こうして記憶がなくなってしまったのはバチが当たってしまったのかと思います。…忘れたくないはずの記憶を忘れるなんて…」
しのぶ「それは…私達が余りにも酷いことをしてしまい、人間の防衛本能が記憶を消したのだと思います…これ以上覚えているのは辛いと。」
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