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いと哀れなり

原作: その他 (原作:鬼滅の刃) 作者: takasu
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そして暫くしてクロに連れられて来たゆりえは相変わらず窶れた様子で目にも光がなく、おずおずと申し訳なさそうにお屋敷に入るとすぐに首をたれて着くばった。

服装もボロきれのような着物に全員が心を痛めた。

「私のようなものがお邪魔してしまい申し訳ありません。…皆様もお目汚し失礼いたします…」

頭を深く下げ身体を震えさせる様に全員が目を晒したくなった。

お館様「ゆりえ、そんなに縮こまらなくていいよ。頭を上げて。」

「し…失礼します…」

申し訳なさそうにゆっくり頭を少し上げたが視線は俯いたままだった。

お館様「今日こうして集めたのはゆりえを今後どうするかを皆と話し合いたいからなんだ。」

「どんな処分でもお受けする覚悟でございます。」

お館様「ゆりえ、違うよ。ゆりえは何も悪いことをしていない。」

「いえ…」

お館様「いいかい。今日から1週間ずつ交代でゆりえをみんなの屋敷で休ませること。」

柱「「「!!!」」」

「あ、あのっ…!それは、お館様のお申し出でも了承致しかねます…。私はその場にいるだけで皆様を不快にさせてしまいます。私は休まずとも鬼を狩れます。どうか、皆様にご迷惑をおかけするようなことはしたくありません…それに私は日中働かなければなりませんので…」

お館様「ゆりえ、これは拒否させないよ。休むのも仕事のうちだよ。」

「しかし…!柱の方ともあれば日頃から気を休める時が少ないのに私がいればもっと気も休まらず、ましてやこのような見苦しい見た目の物があれば不快な思いをされるに違いありません…!今でさえお館様や皆様の前に姿を晒してしまっているだけでも申し訳ないこと…」

お館様「…そこまで言われては仕方がないね。…ならば日中柱の皆の家を1週間交代でまわってくれないかい?仕事であればかまわないだろう?ゆりえ。」

「…そういうことでしたら…お受けいたします。精一杯働かせていただきます。」

お館様「うん。そうだね。ありがとう。…ならば条件があるよ。ゆりえは柱の言うことを必ず聞くこと。」

「かしこまりました…」

お館様「皆はどういう意味かわかるね?」

その言葉に柱達は静かに頷いた。


お館様「今は実弥の家にいるようだけど…まずは…しのぶの所に行ってもらおうか。」

「かしこまりました。」

お館様「いいね?しのぶ。」

しのぶ「はい。」

お館様「みんなも会いに行きやすいだろうしね。」

そして柱合会議は終わりとなった。

しのぶ「でほ行きましょうか、ゆりえさん。」

「はいっ…。申し訳ありません。私のような物が…」

しのぶ「いいですか、私の言うことは守ってください。」

「かしこまりました…」

そう言うとゆりえはしのぶの3歩後ろを歩き、さらに離れたところから他の柱達もついて来ていた。

しのぶ「ゆりえさん、どこか具合の悪いと感じることはありませんでしたか?」

「はい。何も問題なく働けます。」

しのぶ「っ…。そうじゃありません。」

「申し訳ありません。」

しのぶ「どうして謝るんですか?」

「何か間違った返答をしてしまったのかと…。っ…」

違反を感じたしのぶは足を止めて振り返った。

すると目眩でもしたのか頭に手を当て俯きながらふらふらと歩く彼女の様子にしのぶは思わず駆け寄った。

しのぶ「どうしたんですか?!」

そして彼女の様子を伺うべく手を伸ばすとひどく怯えたようにその場に蹲り土下座を始めた。

「申し訳ありせんっ…!申し訳ありませんっ…!」

しのぶ「ゆりえさんっ…?」

その様子に後ろをついて来ていた柱達も慌てて駆け寄った。

煉獄「どうした!」

宇髄「派手に怯えてんなぁ。」

突然集まった大勢の柱にゆりえは更に顔を青くした。

甘露寺「どうしたの…?ゆりえちゃん…?」

伊黒「まさか胡蝶めが何かしたのか?」

不死川「おい胡蝶。」

しのぶ「ちがいます。私は何もしていません。」

宇髄「でもこの怯えっぷりようは…どう説明すんだ?」

「ち、がいます。この方は私の雇主で…何もされていません。寧ろ今からお屋敷に身を置かせていただけるので感謝しております。ですから、私は何もされていません。それはお仲間の皆様が一番おわかりなのではありませんか。」

そうきっぱりと言い切るゆりえに口を開いたのは無一郎だった。

無一郎「なら何であの時も自分がやってないと言わなかったの。」


宇髄「おいっ…」

「あの時…とは…」

実弥「時透。そいつは記憶が…」

無一郎「わかってるよ!そんなことわかってる!…けど、何であの時今みたいに否定しなかったのか、もし否定してたらこんなことにならなかったんじゃないかって…!」

そう言う無一郎は涙を流していた。

「どこか、痛みますか…?」

そう言って無一郎の前に膝をつきハンカチを差し出した彼女は心底心配している様子だった。

その差し出された腕に古い傷から新しい傷まで、まだ治っていないような物まであった。

無一郎「っ…なんで、なんで自分のこと心配しないのっ…今だって自分の方が具合も悪かったはずでしょ…その傷だって治ってない…」
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