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いと哀れなり

原作: その他 (原作:鬼滅の刃) 作者: takasu
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「食材を買いに行ってまいります…。」

玄弥「それなら大丈夫ですよ。兄ちゃん自炊してるはずですから!」

「ですが…家主の方のものを勝手に使うわけにいきません。」

実弥「腐らせるよりいいだろォ。」

「…では、お題は後ほど…」

実弥「いらねェ。」

「ですが、契約では…雇われの身の者が主人の方の生活に必要なものを揃えることになっております。もちろん私のお金からですのでお気になさらず…」

実弥「…飯の時にその契約とやらを聞かせて貰おうかァ。」

「かしこまりました…。ではお台所をお借りします…」

実弥「病み上がりだろォ。座ってろォ。」

「いえ。私の仕事です。…お台所をお借りします…」

そう言ってゆりえは炊事場へと消えた。


そしてそんなに時間もかからずに戻ってきたゆりえはおずおずと実弥と玄弥の前に配膳した。

実弥「自分の分はどうしたァ。」

「?」

玄弥「もしかして俺たちの分をわざわざ作ってくれたんですか?」

「…ご迷惑だったでしょうか…。…それともお好みでないものがございましたらすぐに作り直します。」

実弥「自分の分はどうしたか聞いてんだァ。」

「御主人様と食事を共にするなど滅相もございません。私は使用人です。目に余るようでしたら外で待機しておきますので何かございましたらお申し付けください。」

そう言って席を立とうとする彼女に声をかけたのは実弥だった。

実弥「食わねぇ理由はそれだけじゃねぇだろォ。」

「…っ」

玄弥「具合でもわるいんですか…?」

「いえ。…失礼します。」

そう言うと彼女は外に出てしまった。


食事を済ませると風呂の準備が済んでいて、実弥と玄弥はありがたく思いながら覚めてしまわぬうちにと風呂を済ませた。

するとこの寒い冬に不自然に庭で正座をしている彼女がいた。

そしてその直ぐそばには水の入った桶が。

実弥「何してんだァ。」

「準備はしておきました。」

玄弥「準備…?」

「お風呂を貸していただきたいです。」

実弥「勝手に入りゃいいだろォ。」

「そういうわけにはいきません。」

そう言うと自ら水の入った桶に顔をつっこんだ。

実弥「おい!なにしてんだァ!!」

玄弥「えっ?!ちょっ…!」

二人が慌てて駆け寄り無理矢理顔を上げさせると寒さのせいか、それ以外の原因か、彼女の小さな方が震えていた。

「…これではダメでしたでしょうか…いぜん御主人様にはこうして頂いた記憶があったような気がしましたが…」

その言葉に首を傾げる玄弥とはっとする実弥だった。

実弥「まさかあの時のこと…」


~過去~

実弥「てめェ、また愛を傷つけやがったらしいじゃねえかァ!」

非番の日に村に出かけた帰り、実弥とばったり出くわしたゆりえは近くの池に押さえ込まれていた。

「ゴホッ…ゲホゲホッ…」

実弥「何とか言えやァ!」

何度も怒鳴りつけてはゆりえの髪を掴み、彼女が苦しさをとおに超えてぐったりとするまで何度も押さえつけた。

実弥「チッ…汚え面だなァ。…さっさと湯浴みでもしてその汚え内面まで洗いやがれェ。」

「…っ…も…し…け…ません…で…た…」



「ほかの主人の方にも何度もこうされてから風呂に入るように促されましたので…。ここでは違いましたか…。申し訳ありません。これからは川に湯浴みをしに行きます。申し訳ありませんでした…」

光のない目で俯きがちに土下座をする彼女に玄弥は悲しい顔をして驚いていた。

玄弥「あのっ!普通に使ってください!前の雇主の人がどうだったのかわかりませんけど、兄ちゃんはそんなことして欲しいなんて思ってないはずですから!」

玄弥はそう言うとぱっと実弥の方を見た。

実弥「アァ…」

しかし玄弥に嘘をついてる気分になり実弥は目を合わせることさえできなかった。

玄弥「兄ちゃん…?」

「申し訳ありません…直ぐに済ませます…」

そういって頭を下げるも一瞬動きを止めた後はっとしたように考え込んでいた。

玄弥「どうかされましたか?」

「あ…いえ…その…なにも持ってきておらず…一度買い揃えてからでないと…なので明日の朝湯浴みをさせて頂いても…」

玄弥「それなら大丈夫ですよ!兄ちゃんタオルと服貸してあげて!」

実弥「ん…あぁ…」

「滅相もございません。…雇われの身でお借りするなど…。あの、汚らしいからということでしたらご心配はないかと…。日中に業務を開始するまでには湯浴みをしますし、それまで私は外にいますしお屋敷を汚す心配もないかと…」

玄弥「えっ!何言ってるんですか!ダメですよ!こんな寒い中!」

「え…?私は雇われの身です。業務時間は外にいることは常に当たり前かと…。あ、もちろんいつでも呼びつけていただければすぐに仕事はしますので…」

そう言うゆりえに玄弥は驚きのあまり何も言えないようだった。

実弥「なら家に入れェ。今までの雇主の話をきかせてもらおうじゃねぇかァ。さっきは聞けなかったからなァ。」

玄弥「そ、そうですよ!ひとまず家に入りましょう!そのままでは風邪をひいてしまいますよ!」

「…かしこまりました…。」
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