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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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看守たちの長期休暇(準備編)その3

ドフラミンゴの日記より
×月×日
毎朝、カスターが起床時間におれの寝室にやって来て、奴に鎖を持たれて監視されながら独房に移動することになっているのだが、今朝、奴は5分遅れた。理由を訊くと、休暇の計画を立てるためにガイドブックを夜遅くまで読んでいて、寝過ごしてしまったのだと悪びれもなく言った。
休暇のせいで業務に支障が出ていやがるじゃねえかとムッとする。

寝室を出ようとした時、蜘蛛が壁にひっついているのが目に入った。カスターは頭がボケているのか、気が付かなかった。
おれは蜘蛛をそのままにしておいた。こいつらもこの部屋で大繁殖して、いつか蜘蛛嫌いのカスターに一斉に襲いかかればいい。

今日の10時からの看守はバーティだったが、バーティは今日も飯のたびにピアノを弾いた。
朝飯の時はまだカスターがいる時間帯だが、10時以降は部屋の中にいる看守はバーティ一人だけになる。奴がピアノを弾いちまうと、おれを直接監視する人間はいない。
奴は看守の役目をサボって趣味のピアノを弾いている訳だが、果たしてそれは正しいことなのだろうか。まあ、囚人がつべこべ言うことではねえが。

ピアノを一心不乱に弾く奴の後頭部を眺めていると、妙に何かをやってやりてえような気持ちがムラムラ湧きあがってくる。この感情は、少し前から自覚していた。

今日の昼飯は、ベーコンとナスとピーマンが大量に入ったトマトソースのスパゲッティだった。

ここの昼飯は、朝晩と比べると内容があっさりしているから、短い時間で食い終わる。短い時間で食い終わるから、余計なことを考える暇がある。

奴の頭はピアノの旋律に合わせて、時には小刻みに揺れ、時には思いもかけない振り幅でゆったりと大きく振れる。
朝のムッとした気分を引きずっていたのもあったのだろう。おれはとうとう悪魔の誘惑に抗うことができなくなって、持っていたフォークを奴の頭めがけてぶん投げた。

おそらく、止められるだろう…。投げる時、そう思った。だが、まんまと命中して、奴の後頭部にブスリと刺さればいいと思ったのも確かだった。

しかしと言うか、やはりと言うか、バーティの野郎はくるりと振り向いて、自分の頭に刺さる寸前でフォークを手ではっしと握って止めた。そして、おれの眉間にめがけて、真っすぐに投げ返してきやがった。

おれは飛んできたフォークを、奴と同じように手で受け止めた。実はまだ飯を全部食い終わっていなかったから、何食わぬ顔で戻ってきたフォークで食事を再開した。

バーティの野郎は、飯を食い続けるおれに向かって、「なぜこんなことを」とか「私の頭に虫がとまっていたのですか」とか「キャッチボールのつもりだったのですか」とか、訳の分からねえ質問を矢継ぎ早にしてきた。
無視して飯を食っているとそのうち黙ったが、しかめっ面は消えなかった。

そして晩飯の時は、奴はピアノを弾かずに真面目に看守役を務めていた。その間、ずっと恨みがましい目でおれを睨んでいた。ピアノがそこにあるのに弾けねえというのは、さぞ歯がゆかっただろう。ざまあみやがれ。

今日の晩飯:コンソメスープ、数種類のパン、キュウリとトマトのサラダ、白身魚とブロッコリーのテリーヌ、チキンソテーディアブル、チーズとナッツ、マスカットのゼリー、紅茶

×月×日
朝飯の時、カスターに今日のコーヒーは味がイマイチだと文句を言った。
メシは料理人が厨房で作ったのを給仕人が運んでくるが、飲み物はカスターがダイニングルームの中で煎れる。お陰でその日の気分で好きな飲み物をオーダーすることができるのだが、今朝はなんとなく文句をつけてみたくなった。

ちなみに今朝の朝飯は、コーヒー(スペシャルブレンド)、ポーチドエッグ、厚切りのハム、フライしたポテトやアスパラ等の野菜、カテージチーズとレタスのサラダ、クロワッサン、梨
クロワッサンは月に一回出るか出ないかだ。毎日だと飽きるだろうが、たまに食うとうまい。
バーティはピアノを弾きに来なかった。

10時からの看守はペラムだった。監獄のどっかで何かカサコソ音がすると、わざと言ってみる。奴はゴキブリが大嫌いだ。ビクつく姿が面白くて、思わずニンマリする。

昼飯はピザだった。マルゲリータと、サラミとピーマンとキノコのトッピングのと、2種類出た。
メシに文句はないが、ペラムの野郎に何か文句をつけてやりたくて、その辺をジロジロ見る。ちょっとした嫌味以外は、文句のつけどころを見つけられなかった。
そのまま晩飯の時間を迎える。

晩飯はキャロットのポタージュスープ、数種類のパン、カリフラワーやインゲン等の温野菜、メロンの生ハム添え、イサキのポワレ、チーズとナッツ、チョコレートムース、コーヒーだった。
メシに文句はねえ。非常にうまい。

テーブルの端に陶製のほっそりした形の花瓶が置かれていた。カスターが新しく買ったものだ。1本の薔薇の花が生けられていた。
ワインを飲みながら、ナッツを指ではじいて薔薇の花に命中させた。薔薇は花瓶ごとテーブルの上に倒れたが、割れはしなかった。

「こんなことをすると、食事にナッツを出せなくなりますよ!」
ペラムの野郎は目を三角にして怒った。
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