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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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ドフラミンゴの日記 その12

(×月×日の続き)
空が白んできた中、おれ達は盗んだ船に乗りこみ、明かりも付けずに静かに港を出た。
人が起き始めて、仕事を開始しようとするギリギリの時間だった。

船が安全な領域に出てからは、舵をバーティに任せて、おれ自身はペラムが乗った船を探すことに力を入れた。

ペラムが乗った船は、出発してからそんなに時間は立っていないはずだった。よって、マストの上の見張り台に登って、双眼鏡で辺りを見回した。

夜明け前の暗い海に出ていく船はほとんどない。だからもし港から外海のほうに進んでいく船があったら、それがペラムが乗った船だろうと思ったのだが、そんな船はなかった。すでに遠くに行ってしまったらしい。

ペラムの野郎は電伝虫を持っていないとバーティのあんちくしょうが言ったので、人質に命じて、ペラムが乗っ取った画商の船の電伝虫に連絡を入れさせた。しかし、繋がらなかった。

それならばと、次は人質に、高貴なご婦人とやらを襲撃中であるはずの仲間の船の電伝虫にかけさせた。ペラムも襲撃現場の位置を知るために、船を乗っ取ったことを隠して、今どこにいるのかを言わせたはずだ。

「せ、戦況はどうだ?しゃ社長の船から連絡はあったか?」
「戦況は相変わらず厳しい。社長の船からはさっき連絡があった。こちらに向かっているそうだ」

口元が思わずニヤリとなった。ペラムは間違いなく襲撃現場に向かっていた。

「こここの船も応援に向かうので、そちらの詳しい位置を教えてくれ」
「非常に心強い。こちらの位置は…」

その場所は、おれ達がいたところから北西に○○キロ程しか離れていなかった。数時間ほどでペラムに追い付くだろうと、その時は思った。


朝日で辺りが明るくなってきた頃、バーティの野郎が驚いて声を上げた。
「この船、海軍の船じゃありませんか!」

船体に付いている海軍のマークに、やっと気が付いたらしい。マヌケめ、今頃気が付いたかと、俺は心の中でほくそ笑む。
おれが盗んだのは海軍の小型の偵察船だった。速度が速いし、最低限ではあるが武器も積んでいるから、相手を追跡して襲撃現場に合流するにはうってつけの船だった。

船室から探し出してきた水と非常食を飲み食いしながら、戦闘の煙が見えるんじゃねえかと、見張り台の上から前方に目を凝らした。

人質にも水と食料を与えて、甲板の上のバーティの視界に入る位置に座らせておいた。

バーティがこんなことを言ってきた。
「この海域で戦闘が3日間も行われていて、海軍は気が付いていないのでしょうか」
「夫婦ともに“あの階級”なんだよな?海軍も手が出せねえんじゃねえのか」

こう答えながら、戦場から少し離れたところに軍艦がぷかぷか浮かんで、成り行きを静観している可能性もあると思った。
だとすると、おれ達がそこにのこのこ出て行くのはまずい。
いや…、妻の船を襲撃しているのは画商の船であって、現場に夫はいないのかもしれない。
その場合、海軍が襲撃を見つけたら、さっさと画商の船をやっちまうはずだから、やはり見つかっていないのか。
そういえば、襲われてる側は海軍にSOSを出していないのだろうか?あの連中は何かとすぐに海軍に助けを求めるはずだが…。

疑問を解消すべく、人質に口を割らせることにした。

「は、はい、女性の夫は現場にいいらっしゃるようです…。計画にはありま…ませんでしたが…」
「海軍はこの戦闘に気付いてねえのか?」
「ははははい、多分…」

それなら別にいい。海軍に見つかる心配がないなら特に問題はなかった。

バーティはこれを聞いて何やらゴソゴソやり始めた。船室から予備の帆布と染料を出してきて、それに何かを描こうとしているようだ。人質にいろいろ質問もしていた。

船を進めて数時間後、戦闘が繰り広げられているはずの場所に近付いたはずが、いっこうに何も見えてこなかった。
しかし、海面に砕かれた板の破片等が浮かんでいたから、近くで戦闘があったことは確かだった。

(戦場が移動したな)

それならそうと、画商の奴らのほうからこっちに連絡してくりゃいいものを…と内心で文句を言う。

人質にもう一度電伝虫をかけさせる。何度目かでやっとつながった。

「お、俺達の船は現在北東に移動中。戦況は混乱している…。う、うわああ~~…(ドカーン)」

電伝虫はこれで切れた。バーティと顔を見合わせる。人質は青くなっていた。

「決着が着いたんじゃねえのか?さっきと今の電伝虫からするに、おそらく女側の勝利だ」
「確かにそのような感じではありますが…」

その後、何回もかけてみたが、電伝虫はつながらなかった。

「自分の仲間でも、妻でも夫でもいいから、現場にいる奴の電伝虫に片っ端からかけてみろ」

半泣きの人質に命令して電伝虫をかけさせ続けさせると、やっと1本つながった。画商の仲間の電伝虫だった。

「こ、こちらの船は全て大破…乗組員は全員救命ボートで脱出したが、現在も社長の船は戦闘に参加している…しかし、どうやら船内で社長が人質になっているようで…」

「まだ終わってねえのか」
「ペラムはきっとこの船に乗っていますね」
「おお…親父~~~っっ!」

人質がおんおん泣き出した。社長の息子だったらしい。
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