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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
目次

ドフラミンゴの日記 その10

×月×日
改修工事の予算がおりて以来、看守の3人は忙しそうにしている。

一番はカスターだ。壁の色やら床板やらのカタログや見本を複数取り寄せて選んでいるらしい。でも、こいつは初めから自分でやるつもりだったんだろうし、それに楽しそうにやっている。

二番目はペラムだ。いろんな絵を見れば見るほど、訳が分からなくなっているらしい。まあ、こいつが急いで何かを決めなくても、工事に支障が出る訳ではないから別にいいんだろう。

比較的以前と変わらないのはバーティだ。何でも、欲しいピアノが前から決まっていたらしい。
奴は、たいしたことではないという顔で言った。

「○○(忘れた。長ったらしい名前だった)という職人が作った、○○(こっちも忘れた)というタイプのピアノが欲しかったんです。楽器店に問い合わせたら、運の良いことに少し離れた島にありました。工事が完了するのに合わせて届けてもらう予定です」

職人の銘入りのピアノがいくらするのかは知らねえが、おそらく安くはねえだろう。
ピアノの値段に少しではあるが興味がある。


×月×日
ペラムがインペルダウンの外に絵を買いに行くことになった。映像電伝虫で見るだけでは決められねえらしい。

一週間ほど留守にするらしくて、その間のおれの監視は、カスターとバーティが二人でやると言っている。

どうでもいいが、この3人はやりたい放題やってる感がなきにしもあらずだ。マゼランやハンニャバルがよく許してるもんだと思う。


×月×日
今朝、さっそくペラムが出発した。昨日の日中はペラムの担当だったのだが、興奮してうるさいことこの上なかった。

「私は二十歳でここに就職しましたが、それ以降は一度もこの島を出たことがないんです」

奴のこの発言はおれをビビらせた。
「島から一度も出てないだと?」

「いろいろありまして…。就職する時にそういう条件であることは了解していました。でも、やっぱり外の世界が恋しいです。だから、今回思いがけずインペルダウンの外に行けることになって嬉しくて…」

ペラムが絵でもいいから草原や山の風景が見たいと言うのは、こういう事情もあったようだ。

「お前ら3人ともそうなのか?」

こいつらの要望が簡単に通ったのは、インペルダウンから出られないという過酷な労働条件も関係しているのだろうか。そう思って奴にこう訊いてみたが、奴からはこんな答えしか返ってこなかった。

「…しゃべり過ぎました。私が言ったことは忘れてください」

この答えは、今までのこいつらの態度からすると案の定というべきか。

「それにそれ以外は自由です。地上階には兵士のための娯楽施設もあるし、頻繁に海軍の船の出入りがあるから賑やかだし。船でやって来る兵士と顔見知りになることも結構あるんですよ」

「ふん。しかし、その労働条件は見直してもらったほうがいいかもしれねえぜ」

奴は今頃、外の空気を満喫していることだろう。せいぜい楽しんでくりゃあいい。


×月×日
ペラムが行って今日で4日になる。おれの監視は、朝はカスター、日中と夜はバーティがやっている。

これだとバーティだけ負担が増えたように思えたが、バーティは「別に構いません。休みがあっても暇ですし。それにカスターさんも、ペラムの担当のこまごまとした仕事を代わりにされています」と言っていた。

御志理探偵の最新刊を読み終わって以来、暇だ。ペラムに本を買ってくるように頼めば良かった。


***
その日の深夜、夜の10時の消灯で眠れるはずもないドフラミンゴは、いつものように寝室のベッドの上で考え事をして時間をつぶしていた。

すると、寝室の前に誰かがやって来る気配がした。部屋の前にいる二人の看守と話しをしているようだ。そして扉の鍵穴に鍵が押し込まれる音がしたかと思うと、カスターが部屋に入ってきた。

カスターは、手に持っているランプの火を枕元の机の上にある照明器具に手早く移し、ポケットから出した電伝虫をその隣に置いてから、ごく小さな声で言った。

「こんな夜中に失礼します。ドフラミンゴさん、あなたの力をお借りしたい」

「何だ?」

カスターはさらに声をひそめた。
「ペラムの行方が分からなくなりました。内緒でバーティと一緒に捜索に出てください」

「…どういうことだ?」

「詳しいことはバーティが船の上で説明します。まず、あなたの不在を隠すための隠蔽工作を…」

「おい、一方的にいろいろ言ってるが…」

カスターはドフラミンゴを遮って、有無を言わさぬ口調で宣告した。

「大人しく私の言う通りにしてください。従わない場合は、インペルダウンに収監されている元ドフラミンゴファミリーを一人ずつ順番に処刑します」

「…」

ここでドアの外から看守が声をかけてきた。
「カスターさん、囚人の具合はどうですか?」

「やはりどこか悪いようです」

カスターはやや深刻そうな声で答えて、看守と話しをするために一度部屋の外に出た。

「たいしたことはないと思いますが、本人は苦しいようです。私も電伝虫で起こされました。申し訳ありませんが、バーティを呼んできてください」

「電伝虫?いつこの部屋に電伝虫を置いたのですか?」

「以前からありましたが…。なにせ特別室ですので。インペルダウン内の特定の番号にしか繋がらないものです」

「そうでしたか、すみません。すぐにバーティさんを呼んできます」

そう言って、看守のうちの一人が廊下を走って行った。
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