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ローを牢屋敷から助けたのは誰でしょう?

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
目次

その二 サンジの場合

ワノ国花の都羅刹町の牢屋敷…。
ホーキンスに捕まった仲間を助けるために自ら捕虜となったトラファルガー・ローは、傷だらけで牢の床の上に座りこんでした。
海楼石で作られた手枷で拘束されているので、悪魔の実の能力を使うことはもちろん、自分の意思で動き回ることすらもままならない状態である。

ホーキンスとドレークによる尋問は激しいものだったが、ローは決して口を割ろうとしなかった。殴る蹴るの激しい暴行のせいで、ローの額や唇からは血が流れていた。

やがて尋問が一時中断され、周りから人気がなくなった時、廊下の隅で何かがわずかに動いた。
「?」
ローはそれにすぐに気が付いたが、廊下には何もいない。気のせいかと思った時、やはり何かが動くのが見えた。

「ロー、助けに来たぜ」
「黒足屋か…」

サンジはジェルマのレイド・スーツを着ていた。このスーツは身につけた者の姿を人の目に映らなくすることができる。つまり、サンジはこのスーツのお陰で自由に透明人間になれるのだ。

「手枷を出せ。鍵は手に入れてある」

サンジはすでに手枷の鍵を盗み出していた。しかし、ローはちょっと困ったような、半分怒ったような複雑な表情を浮かべた。

「おれは自分の仲間を助けるために、お前達が止めるのも聞かずに出て行ったような奴だぞ…。その結果、自分が捕まっちまった…おれは後悔していないが…。それに、危険を冒しておれを助け出しても、何の得にもならねえぜ。おれは忍者の奴らと行動を共にする気はねえ…」

「そんなことはどうでもいい。俺達は同盟を組んだ仲間だろ。助けて当然じゃねえか」

「これはおれ自身が招いたことだ。自分で始末をつける」

「だが、海楼石に繋がれちまって、お前に策はあるのか?能力者は海楼石にやられちまったらどうしようもねえだろう」

これはローの痛いところを付いていた。助けたい一心でべポ達三人と自分の身柄を交換したが、この状況を自分だけで打開する策はローにはなかった。

サンジはあの手この手でローを説得しようとしていた。何としてでもローを助けたいという熱意が伝わってくる。
ローはふと頭に浮かんだ疑問を口に出した。

「黒足屋…。お前はどうしてそこまでしておれを助け出そうとしているんだ…」

ローにしてみれば、これはさほど深い意味のない質問だった。「戦力は少しでも多いほうがいい」とか「同盟を組んだ義理」とか、その程度の答えが返ってくるとばかり思っていた。

しかし、この質問を投げつけられたサンジは異様なほどに動揺した。体が震え、額から大粒の汗を流している。

「そ、それはつまり…え~っと」
「?…」

このサンジの様子は、ローに猜疑心を抱かせた。
(こちらの質問に対する反応が激しすぎる。おれは知らず知らずのうちに、こいつの指摘されたくない部分を突いたのかもしれない。それは一体何だ…。もしかしたら内通者はこいつだったのか?おれを助け出そうとしてるのは…、おれを何らかの方法で利用しようとしてるってことか…)

一瞬だが、ローの目に殺気が灯った。しかし、悟られないように平静を装う。
同時に、ローは悔しさと悲しさも味わっていた。麦わらの一味の中に裏切り者が出たことが信じられなかった。

ローは何も気が付かないふりをして、サンジの提案に乗ることにした。

「分かったよ…。鍵を外してくれ」
「お、おうっ!」

サンジは嬉々として手枷を外した。
自由になったとたん、ローはサンジに対して物騒な物言いで詰め寄った。

「黒足屋…。何を企んでいる」

鬼哭を抜いて、刃先をサンジに向ける。黒足屋とやり合って自分は無傷で済むだろうかという考えが頭をよぎったが、見逃すつもりはなかった。

「ロー!待てっ、誤解するなっ」
「問答無用だ!」
「分かったっ、正直に言う。おれはただ…」

ローと睨み合う中、サンジは潔くきっぱり言った。

「おれはただ、湯屋を覗きに行った時間帯のアリバイをお前に証言してもらいたいだけだ!」

言い切った後、サンジは涼やかな微笑みさえも浮かべていた。

「さっき湯屋に行ったんだが、うっかり覗いているのを見つかっちまったんだ。結構な騒ぎになったから、もしかすると町で噂になるかもしれねえ…。だが、すでにおれには前科がある。ナミさんやロビンちゃんにまたかと思われたくない…。つまり、こうなっちまったからには白を切り通すしかねえ。それには俺のアリバイを偽装証言してくれる奴が必要なんだ!」

「…そんなの他の奴に頼めばいいだろう。長鼻屋は…」
「ダメだ。あいつはその時間帯はナミさんと一緒にいた」
「ロボ屋は」
「ロビンちゃんと一緒にいた」
「骨屋」
「同じだ」
「ロロノア屋…」
「おれがあいつに頼み事ができると思うか?」
「…」

ローはたじろいだ。サンジはニヤリと笑うと、胸を張って堂々とこう主張した。

「おれの陰謀は…、ワノ国の湯屋を全制覇することだっ!」

ローはサンジの勢いに圧倒されていた。もういい。助けてくれて有り難いのは確かなのだし…。

「おれを逃がすことがお前の陰謀なら、―乗ってやるよ…」
「おうっ!悪いな、ロー!今後はできるだけ見つからねえように気を付けるが、もしも見つかっちまったらその時も頼む!!」

サンジは嬉しそうにしている。
ローは思考能力を半分失った状態で、やって来たホーキンスを倒してから、その場を立ち去った。
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