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日常personification

ジャンル: その他 作者: アラスカ
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朝から元気なアイツ

朝日が登り始め、カーテンの隙間から、薄っすらと日の光が漏れてくる。
街も人も動き出し、徐々に、射し込んでくる光が強くなってくると、準備運動をし始め、気合いを入れているモノがヒトリ。

「さて、そろそろ仕事の時間か…。」

そう呟き、カチッという音が部屋に響いたかと思うと、大きな声でベッドに横たわる“人”に話しかける。

「起きろー!!時間だぞー!!ほら!下でお母さんが、朝ごはん作ってるぞ!もうすぐ出来上がっちゃうぞ!呼ばれる前に、顔洗ったり着替えたりするんだろ?なぁ!」

横たわる“人“は、ううん…あと、5分…と言いながら、枕元で叫ぶカレの頭にポンッと手を乗せて、黙らせる。

「…しょーがねぇな。あと、5分だけだからな?」

少年は案外、大人しく申し出を受け入れて、次に備えて、再び準備を始める。

「しっかし、毎日毎日、この時間に起こしてくれって頼む割には、あと5分、あと5分って言って、また寝るよなー。そんなに起きれないなら、寝る前にケータイと話しするの、辞めればいいのに。」

全く、困ったヤツだ!と言ったように、銀色の髪を揺らし、黒い衣服を纏った少年が、横たわる彼女の顔を見つめながら、呟く。

そんな『あと5分』攻防を数回繰り返すと、下の方からお母さんの『ご飯出来たわよー。起きなさーい。』の声が聞こえてくる。
もうこれ以上はダメだ!と、少年は気合いを入れて、最終手段に出る。

「起っきろー!!!!」

そういうと、横たわる彼女から布団を剥ぐ。
布団を剥がれた彼女は、ううん…と呻きながら、開かぬ目を必死に開け、掛け布団を探す。

「こらー!また寝ようとするなー!もう寝かさないからな?これで、何度寝だと思ってるんだ!今起きないと、朝飯食わずに、学校へダッシュする羽目になるんだからな!?泣くのはお前だぞ!!」

呻きながら起きようとしない彼女を、両手で揺すりながら語りかける。
そこまでされて、ようやく、重い瞼をゆっくりと開けるが、焦点は未だ空を仰ぎ、夢と現実の狭間にいるような顔をしている。
そんな彼女を見た少年は、この手は使いたくなかった…と、一瞬渋い顔をしたが、意を決して行動に出る。

「おい、起きろ。いつまでそんな可愛い寝顔を、俺に見せてるつもりだ?早く起きないと、我慢出来なくて…き、キス、しちまうぞっ!」

途中まで、きちんと保った覚悟も、あまりに恥ずかしい言葉に、言い澱み、崩れ、いつもの少年に戻ってしまう。
が、中々現実に意識を戻せなかった彼女は、そんな萌えセリフに、一気に目が冴え、跳び起きる。
急に彼女が、体を起こしたため、彼女にまたがっていた少年の体は、後ろに倒され、転がった。

「てて…やーっと起きたかー。ほら、もう7時回ったぞ?早く支度しないと、メシ食う時間無くなっちまうぞ?」

ようやく起きた彼女は、少年の言葉に驚き、ドタバタと大慌てで1階の洗面所に走り降り、顔を洗ったり寝癖と戦い、部屋に戻ってきたかと思えばパジャマを脱ぎ捨て、制服に着替えて、髪を結う。
そして、カバンを持って、リビングへと走り降りて行った。

「ふぅ、やれやれ。一先ず、今日の俺の仕事は終わったなー。ったく、毎日の事ながら、どうしたらもっと、アイツのこと、スッキリ、ササっと起こしてやれるかな?」

少年が、うーん?と腕組みをして悩んでいると、枕元に礼儀正しく座っているぬいぐるみのクマオが、声をかける。

「最初から、乙女ゲームっぽいセリフで起こせば良かったんじゃない?いつも通りに、正統派で起こしても起きなかったのに、僕が言った通りにしたら、1発で起きたじゃない。」

へへんっと、少し誇らしげな顔でドヤるクマオに、ぐっと敗北感に襲われながら言い返す。

「あれは最終手段だ!あんな恥ずかしい言葉、毎朝言えるかってーの!しかも、あんなの聞きなれちまえば、効果無くなるじゃねーか。もっと、アイツが自発的に起きれるようになる方法を考えないと!俺だって、いつまでアイツを起こしてやれるか、分からないんだからさ。」
 
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