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Gray

原作: 名探偵コナン 作者: takasu
目次

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そう言って誰とも目を合わせず、1点をみつめたまま、口元だけで笑顔を作り言葉を発する彼女は奇妙だった。

狩生「矢神…?」

「私、まだ仕事終わっていないので、着替えたらすぐに現場に向かいます。この騒ぎはなかったことにしましょう。…大丈夫、まだ頑張れますから…」『笑え…!笑える…!大丈夫。まだ頑張れる。まだ大丈夫…!』

消えそうな声でそう言った彼女はおぼつかない足取りでその場を後にした。


狩生「いい機会だ、お前たちに教えてやる。…あいつの両親は俺に気に入られていたから公安の仕事をしなかったんじゃない。」

全員「え…」

狩生「お前たちを巻き込みたくないからと仕事は全て自宅からやっていたんだ。…通常のココの人間より多くの仕事をこなしていたよ。…だからあいつには仕事をしている両親の姿しか記憶にないはずだろうな。…だからあいつは文句一つ合わずに仕事をこなしていたんだ。両親のやってきたことを自分がするために。…なのに何も知らないお前たちは噂に流されあいつを嫌な目で見ていたんだ。…あいつは誰よりもココの人間を大事にしていたんだぞっ…頼むから、あいつにこれ以上日本という国に絶望を与えないでやってくれ…」

その話を聞いた降谷はその場にいることが辛くて、そっと一人本部から出て行った。

広い廊下に響いているすすり泣く声。

その声を辿るように降谷は歩いて行くと非常階段のドアの前のところで小さく座っている彼女がいた。

声をかけようとしたが彼女が誰かと電話をしていると気がつくと何となく隠れずにはいられなかった。

「…まだっ、頑張れます私…っ…。」

(もう充分じゃないか?少し休んだらどうなんだ)

「大丈夫…大丈夫ですっ。…熱のせいで気が弱くなっちゃって…こんなんじゃ、だめ…ですね…」

母を埋めて泣きながらスマホを耳に当てている彼女の後ろ姿はとても小さく見えた。

(せめて体調を整えてから働け。倒れるぞ)

「ハハッ…。…ねぇ、赤井さん…。私…父と母がこうして働いていたと思うと、自分がなにも知らずにこうしてのこのこと生きてたのが嫌になるんです。…私、もういいかなっ…。疲れちゃった…」

…ガチャッ…

(おい、よせ)

「ありがとうございます、赤井さんがこうして話を聞いてくださってたから今日まで頑張れたと思います。…今日、雨なんですね…久しぶりに空を見上げた気がします…。もう自由にな…」

…ガタンッ…

降谷「何してる!!」

「え…降谷さん…」

彼女のしようとしていることがわかると降谷はすぐさま非常階段のドアを開け手すりに足をかけようとする彼女わ引っ張った。

(頼んだぞ、降谷くん)

赤井はそう言い残すと電話切った。


引っ張られた勢いで古谷を押し倒す形になってしまった(名前)

「あ…すみません」

気まずそうに降谷の上から降りて立ち上がった彼女はフラフラとした足取りで階段を登って行く。

降谷「待て」

彼女の腕を掴んだ降谷。

「…サボって、すみませんでした。…すぐに仕事に戻ります。」

絞り出すように声を発した彼女の表情は見えない。

降谷「仕事なんていい!一体お前はっ…」

そう言って彼女の前に立つとポロポロと涙を流す彼女の顔が目に入った。

降谷「何泣いて…」

「…私なんかに、構っちゃダメです。…失礼します」

口元だけで笑顔を作る彼女はいつ壊れてもおかしくない程目に光が宿っていなかった。

降谷「ま、待て!」

「まだ何かっ…」

降谷「赤井と話していたな。…なぜだ」

「知り合い、というところです。…申し訳ありませんが赤井さんについては私から話すことはありません…」

そういうと彼女は非常階段のドアを開け本部に荷物を取りに行ったようだった。


彼女が本部に戻ると何とも気まずい空気が流れていた。

「…すみません、荷物を取りに来ました…。すぐに仕事に戻ります」

静かに頭を下げて荒れているデスクを簡単に片付けていった。

上司「矢神っ…その…」

狩生から話を聞いたのか全員が申し訳なさそうに近寄ってくる。

「すみませんでした。」

上司「え…」

「私が使えないばかりに上司の皆さん、部下の皆さんに不快な思いをさせてしまい手を出させてしまった挙句、狩生さんに怒鳴らせてしまう自体になってしまい申し訳ありませんでした。…今まで以上に…仕事を…」『ヤバい…苦し…』「ハァッ…ハァッ…仕事、覚えられ…ハッ…ように…」『だめっ、ここで倒れちゃ…だめっ…』

上司「矢神っ?!どうした?!」

「ハッ…ハッ…すみ…ませ…すぐに仕事に…」

…ガチャッ…

狩生「矢神っ!!」

「狩生さ…ん…も…、ハッ…ハァッ…すみま…せっ…」

狩生「矢神、喋るなっ。ゆっくり呼吸しろっ」

「…こんな…の…ハァッ…いつもの…こと、です…よ…っハァッ…」

狩生「前より酷くなってるじゃないかっ。すぐに医務室に運んでやるからな」

「…っ!…だめっです!…私…仕事…して…皆さんに……ハッ…ハッ…迷惑、かけた、ぶん…とり、戻さ…ない…と…」

…バタンッ…

そう言い残してついに彼女は倒れてしまった。
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