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Gray

原作: 名探偵コナン 作者: takasu
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9

「…っ…す、みませっ…トロくてっ」

いつもとかわらぬ口調で俯いたままだが笑顔を必死に作って言った。

pipipi…

狩生「どうした?…あぁわかった。すぐに向かう。…降谷くん、風見くん、頼んだよ。」

2人「はい…」

狩生が席を外してすぐ、降谷と風見は彼女の両サイドにある自分のデスクに腰を下ろした。

降谷「手伝う。」

風見「俺も手伝います。その方が早く終わるだろ?」

そう言って二人は彼女のデスクの資料に手をかけようとした。

「ダメですっ!!」

二人の手を掴んでそれをさせないと言わんばかりの彼女の表情は誰にもわからない。

降谷「終わるわけないだろ」

風見「降谷さんのいう通りだぞ!」

「終わらせますからっ!明日の朝までにはちゃんとっ!降谷さん達は先に帰っててくださいっ!お気持ちだけ、お気持ちだけありがたく頂戴させて頂きますっ…」

風見「病み上がりだぞ?!無理をするな!」


「…っ私がやらなきゃいけないんですっ!」

降谷「これは本来他の人の仕事のはずだ。お前がやる義務はない」

「私に与えられた仕事なんですっ!…頑張らないと…頑張らないとダメなんですっ」

風見「そんなこと言ってもお前っ」

降谷「風見、早く終わらせるぞ」

風見「はいっ!」

そう言って二人はゆりの手を解くと資料を分担して仕事にかかろうとした。

「やめて…。お願いします…やめて…ください…」『もう誰にも頼りたくない…頼れない…全部自分でなんとかしないと…』

降谷「それは無理なお願いだ。」

「…やめて下さいって!!…これ以上私を惨めにしないで下さいっ!!」

そう言ってゆりは勢いよく立ち上がった。

風見「お前っ!せっかく降谷さんが手伝ってくれるって言ってるのに…!」

風見がそう言おうとしたが彼女はその場で倒れてしまい、その声は届かなかった。

降谷・風見「矢神!!」





降谷「ひどい熱だな…」『追い詰めてたのか…』

風見「こんなになるまで…。」『俺はこいつになんて酷い扱いをしてしまったんだ…。助けてくれたのにお礼も言えなかった…』

降谷は彼女を抱き上げるとそのまま病院へと連れて行くことにした。


医者「ったく!毎回無理しやがって!」

降谷「毎回…?」

医者「なんだ。君もこいつを追い詰めてる上司の一人じゃないのか?」

降谷「…」

医者「まぁいい。連れて来てくれただけマシだ。」

「…んっ…」

医者「起きたか?」

「あ…なんで先生が…?」

医者「あぁ、こいつが連れて来てくれたんだよ。」

「降谷さんが…すみません」

降谷「…」

医者「暫く仕事、休んだらどうだ」

「大丈夫ですよ!これくらい!全然平気で…」

医者「馬鹿か!いい加減にしろ!お前こんな状態で仕事してたらな…!」

「…ハハッ…休んだらもっと休めなくなりますから…」

そう言って諦めたように彼女は笑った。

医者「っ…」

「さ、点滴も終わったことですしかえります」

降谷「そんな身体で…」

「仕事、してないと余計なこと考えちゃうんで…ハハッ…では、失礼します…!降谷さん!ありがとうございました!お疲れ様です!」

そう言って署に戻った彼女を追いかけることはできなかった。

降谷「さっき言ってた君も追い詰めてる上司の一人だろうっていうのは」

医者「チッ…。知ってる癖によく聞くな。」

降谷「…詳しくは知りませんよ」

医者「公安の人間に話すことはない。帰れ」

降谷「話していただけるまで帰るわけにはいきませんね」

医者「俺から話すことはない。…ただ、お前が他の公安の人間と違うならあいつを見てやれ。一人の警察官としてな。」


翌日、署に向かうと罵声と多くの公安の人間が集まっていた。

降谷「何の騒ぎだ、風見」

風見「…っ降谷さん…」

そう言うと苦い顔をする風見の視線を辿れば公安の最高権力者である狩生さんが見たことのない形相で声を荒げていた。

それは丁度矢神のデスクのところだ。

矢神のデスクなのに本人の姿はなく、ボコボコになった上司と部下達が倒れている。

狩生「お前ら矢神がどんな思いでここで仕事をしていたかわからないのか!!この資料も!!この資料も!!あの事件の解決も!!お前達がゆるゆると仕事をしながら高い給料をもらってたのは誰のおかげだ!!他でもない矢神だろ!!なのにこれはどういうことだ!!矢神にこんな仕打ちを!!誰がこんな仕打ちをする権利がある?!答えろ!!俺が来なかったらお前ら全員犯罪者だぞ!!クビだ!!もう二度とその面を見せるな!!」

…ガチャ…

「狩生さん、そんなこと言わないで下さいよ。皆さんから親しまれている狩生さんにそんな言葉似合いませんよ… 」

俺が先ほど入ってきた公安本部の扉から入ってきた矢神は見るも無残な姿だった。

所々破けた服の下からは変色した皮膚が見えていた。

降谷「矢神っ…」

「狩生さん、私大丈夫ですよ…っ^^」

狩生「矢神っ…」

「だめ、ですよ。…皆さんにはご家族があって、一家の大黒柱なんですから…。私には身寄りのひとつもありませんし、これくらい…私に何かあったとしても…これくらい何ともっ…ないんです^^」
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