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神様はアタシの胸に

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: 山科
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第21話


「ほら、俺たちが入学してすぐ、体育館裏に新しい倉庫ができただろ? そのせいで、今まで使っていた地下倉庫が、閉鎖されたじゃん? 何か隠すには、うってつけの場所だと思ったんだけど……」
 違うかな? と続ける涼太。
 ……そういえば、そんなものがあったな、とあたしも思い出した。
 あたしは行ったことはないけど、友達から、「Hをするんだったら、そこが一番バレにくそう」という話を聞いたことがある。まったくもってバカな理由だが、たしかにそういう情報があたしのデータベースの中にもある。
 普段は鍵がかかっているから、入れないらしいけど。
 ……ならやつらはどうやってそこでHをしたというのか。デマか?
 しかし……
「行ってみる価値はありそうだな」
「だろ?」
 校内を闇雲に探し回るよりも、可能性がありそうな場所を探した方がいい。
 つか、もっと早く言えよ。
 と内心で涼太に文句を言いながら、あたしたちは中央階段を下り、地下倉庫へ向かう。
 ここの階段の下に行くのは初めてなので、若干緊張する。
 階段を下り、大きな鉄製の扉の前に立つ。ゆっくりとそれを押していくと、思ったよりも簡単にそれは開いた。
 鍵もかかってないらしい。
 ということは、だ。
 ここに、簡易版モザイク化計画を起こす機械があるかもしれない。
 地下倉庫の中に足を踏み入れると、そこは想像以上に広い空間だった。
「待ってたよ、飛鳥。それに涼太くん」
 不意に、どこからか声が聞こえる。
 コツコツ、と、誰かが、奥から歩いてくるのがわかった。
 少しずつ、姿が露わになっていく。
「な……っ!?」
「やっほー」
 現れたのは、クラスメイト兼親友の、上野衣智。
 ショートカットの髪に、人懐っこさを感じさせる笑み。
 間違いなかった。
「なんで、お前がここに?」
 ここに普段鍵かかっていることは、周知の事実だから来る人間はあまりいないはずだし、第一今は授業中のはずだ。
 悪い予感がした。
「それはね、ボクが奈々子さんの仲間だからだよ」
「……マジ?」
「うん、マジ」
 悪い予感は的中してしまった。
 智が、綾瀬川奈々子の仲間。
 つまり、敵。
「なんでだよ? なんで綾瀬川奈々子の仲間に?」
「簡単だよ。奈々子さんは、ボクの願いを叶えてくれるって言ったから」
「願い?」
「そ。ボクの妄想力のレベルを、上げるっていうね」
「妄想力のレベルを?」
「知ってるでしょ? ボクが、レベル1の落ちこぼれだって」
「…………」
 妄想力のレベルは、1~7まである。
 その中でもレベル1というのは、この島の中では落ちこぼれだった。
 いや、落ちこぼれよりも扱いがひどいと言ってもいいかもしれない。
 露骨に無視されたり、嫌がらせされたり、いじめられたりなんてことは、うちの学校ではないけど。他の学校では、結構ひどいらしい。
 この島では、妄想力者以外は人間じゃない、みたいな感じも一時期あったらしいし。
「だから、ボクは奈々子さんに協力することにしたの! もう落ちこぼれって言われないために!」
「智……」
「さあ! 戦おうよ飛鳥! ボクの後ろの扉の奥に、飛鳥が探してる機械がある。それを壊したいなら、ボクを倒すしかないよ!」
 言って、智は腰につけている大きめのウエストポーチから水の入ったペットボトルを取り出すと、ふたを開けて放り投げる。
 中に入っていた水が、飛び散った。
「『攻める水(ウォーター・バイブ)』!」
 瞬間、ペットボトルから飛び散った水が、一か所に集まり、形を成していく。
 細い、蛇のような姿をする水。
「どう? これがボクの得た能力だよ」
『能力……まさか、お主にも神様が宿っているのか?』
「にゃはは。正解だよ。奈々子さんがくれたんだ。ボクに新しい力を!」
 智は、横に置いてあった大きな物に被さっていたシートをはぎ取る。
 その下から現れたのは、大量のバケツと、水。
 智が手を振りかざすと、水は轟音を鳴り響かせながら、一か所に集まり、今度は竜の形を成した。
「さあ? どうしたの飛鳥? 能力を使わないの?」
「……シャル、あたしの能力……」
『……すまぬ』
「ですよねー」
 さすがにもう期待してないよ。
 ええい! こうなったら仕方がない! あたしの鍛えられたこの話術で!
「智! あたしは智とは戦いたくない」
「どうして?」
「どうしてって……どうしてもだ!」
「理由になってないよ。ボクは、飛鳥と戦いたいけどね」
 交渉失敗!
 しかし、智はこんな性格じゃなかったはずなのに。
「智……」
「さあ、お喋りはこれで終わりだよ。心配しなくても、飛鳥と涼太くんには、危害を加えないから。ちょっと監禁されてくれればね」
「監禁っ!?」
 涼太が大声を上げる。まあ、監禁って言われれば、誰だって驚くよな。あたしだって驚いている。
「じゃあ――」
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