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神様はアタシの胸に

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: 山科
目次

第1話

プロローグ

「……なんなのさ、この状況は」
 少しずつ蒸し暑くなっていくのを肌で感じる六月の下旬。
 そんなとある日の夕方。あたし、椎名飛鳥(しいなあすか)は、目の前で起きているこの不可思議な光景に目を疑った。
 当たり前だ。
 だって、
「む、胸が……」

 あたしのつつましやかだった双丘が、
 ブラジャーなんてものは必要なかった胸が、
 男子に「まな板には興味ねえ」と馬鹿にされ続けること10年のこのおっぱいが――

 グラビアアイドルのように大きくなり、弾んでいるのだ。
 こう、『ばいんばいん』と……。

 成長期だからなのか?
 まさか。
 学校から帰ってきて少し昼寝している間に、おっぱいの大きさが五倍くらい育つなんて、普通ありえないだろう。
 そうか、これは妄想だ。
 あたしは無意識のうちに、小さな胸にコンプレックスを抱いていたんだ。
 だから、こうして胸が大きくなる妄想を具現化しているんだ。
 なんだ、そうかそうか。あはは。
 そう納得して、あたしは再度目を閉じようとする。でも、そんなあたしの希望は、簡単に打ち破られた。

『おお、目が覚めたかの』

 あたしのおっぱいが、喋ったのだ。
 次の瞬間、あたしのおっぱいはまばゆい光を放ち、そこからバレーボールくらいの大きさの光の玉が飛び出した。
 あたしの胸は、空気の抜けたボールのように、ちっちゃくなっていく。
「……っ!?」
 言葉が出ないまま、あたしは勢いよく起き上がる。
 その光の玉は、部屋の中を飛び回った後、あたしの目の前に落ち着いた。
『実はお主に大事な話があるのじゃが……この姿では話しにくい。今から、本来の姿に戻るから、少し待て』
 光の玉はそう言うと、徐々に形を人型へと変えていく。
 形が定まると、光は弱くなっていき、そして、裸の幼女へと変わった。
「うむ。やはりこのすがたの方がおちつくのう」
 恥ずかしげもなく、全裸のまま、うーん、と伸びをする幼女。
 腰の辺りまで伸びた銀髪に、エメラルドのように透き通った碧眼。触れたら滑らかな感触を味わうことができそうな白い肌に、アクセントとして胸に添えられた、桜色の二つの突起。年齢にして、だいたい十歳前後ってところか。
 女のあたしでも、素直にこの娘は可愛いと思った。
 って、今はそんなこと考えている場合じゃない!
 一体全体、これはどういうことなんだ?
「…………」
「うむ? どうしたのじゃ? そのようにおどろいたようなかおをして」
 驚いているんだよ、実際。
 あたしのおっぱいから、目の前にいる幼女が生まれた(?)ことに。
「さて、あすか。しゃるのなまえは、『シャルロット・F(フラトリス)・K(キャシー)・イヴァネッタ』。いちおう、かみさまのはしくれをしておる」
「…………」
「たんとうちょくにゅうにいうが、しいなあすか、おぬしに、たのみがあるのじゃ」
「……頼み?」
 いろいろと聞きたいことはあるけど、とりあえずそれらを置いておいて、あたしはそう尋ねた。
 シャルロットと名乗った幼女は、「うむ!」と成長なんて全くしてないようなぺったんこな胸の前で腕を組み、頷いた。

「せかいを、すくってほしいのじゃ!」


 頬を思いっきり抓っても、この悪夢は覚めなかった。

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