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君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第22話

「相手は、必ずしも一枚岩ではないようだね。生徒会長に従う生徒は、およそ半数の約二百五十名ほどらしい。よって資金も潤沢というわけではないので、武器も揃ってはいるけどそこそこの物ばかりらしいよ。
 戦争時に気を付けるべきところは、生徒会長の土田光宙。警察官の父親に鍛えられたおかげで、剣の腕はなかなかのものらしい。頭は悪くはないが、特別良いわけでもない。性格は猪突猛進みたいだね。後方で指示を出すって言うよりは、前線で自ら戦うタイプ。
 ちなみに彼女いない歴=年齢のチェリーボーイとのこと。他に何か知りたいことはあるかな?」
「「…………」」
「む? 竹中君に冠さん。黙り込んでどうしたんだい?」
「いや、お前それ、どうやって調べたんだよ」
「? いや、知り合いから聞き出したり、実際山中高校に行って調べたり……」
「……若干引くわ。引くくらい凄いわ。ちょっとキモいわ」
「き、キモっ!?」
「いや、いい意味でだぜ? 喜多村実里」
「……そうかい」
 若干涙目の喜多村。冠、言い過ぎだぞ。俺も同感だけど。
「でも、助かったよ喜多村。敵兵数がわかったのは、やっぱり大きいからな」
「……そうかい。キモいと言われる行動をとりながら頑張ったかいがあったよ」
 あ、根に持ってるっぽい。
「んで? 作戦はどうなってんだよ、竹中孔明」
 喜多村の嫌味をスルーしながら、俺に問いかけてくる冠。
「ん、ああ」
 もう一度地図を見る。うーん……やっぱりこれしかないと思うけど、これでいけるのかと聞かれれば微妙っていうかなぁ。
 まあ、とりあえずは俺の考えを言って、二人の意見を聞こう。司馬? 寝てるよ。
「三つあるんだけども。まず一つ目の案は、伏兵」
「伏兵?」
「そ、伏兵」
 地図を指差す。喜多村と冠も、俺の指先に視線を集めた。
「うちと山中高校をつなぐ街道の、ちょうど真ん中あたりを主戦場にする。んで、時期を見計らってあらかじめ周囲の森に伏せておいた兵が敵軍に襲いかかる」
「ベタベタな作戦だな。十五点」
「ふむ。僕もそれで勝てるとは思えないのだけど……」
「まあ、普通にやったら多分勝てないだろうね」
「ぶっ殺すぞコラァ!」
「ひぃっ!? ナイフをのど元に突きつけないでもらえますかねぇっ!?」
「アタイは勝てる作戦を立てろっつってんだよ! 負けるのわかってる作戦をアタイに伝えるな殺すぞ!」
「いや、最後まで聞けって。普通にやったらって言っただろ」
「……じゃあ、まだ続きがあんのか?」
「ない」
「お祈りはすんだかい? じゃあ、あの世に逝きな」
「やだよっ! だから最後まで聞けって!」
「あん? だってテメェ、もう続きはねえって言ったじゃねえか」
「作戦の続きはないよ。問題は伏兵のやり方だよ」
 おとなしく話の続きを聞く気になったのか、ナイフを懐にしまう冠。それ、なんで誰も咎めないの? まあいいけど。
 嘆息しつつ、鞄から将棋の駒をいくつか取り出すと、地図の上に並べていく。
「まず、これが敵。喜多村の話を聞く限り、敵総大将もここにいるだろう」
 歩と王将を街道に配置。そのほかにも、山中高校校舎にも数個歩の駒を置いておく。
「で、こっちの主力は戦争開始と同時に北上。この付近で敵とぶつかる。仲山は校舎にて待機する」
 織館高校の校舎に歩と王将を置き、歩を滑らすように街道の真ん中まで移動させる。
「ここでぶつかりあってる間に、別働隊が森の中を移動。校舎から少し離れた……そうだな、まあこの辺りに待機する」
 織館高校の校舎から、一キロ弱離れた森に、歩を数個置く。そこより先は森が途切れ街並みが並んでいるので、埋伏できるギリギリの位置となる。
「そんで、埋伏官僚の合図とともに本体は退却。一目散に校舎まで駆ける。敵生徒会長の性格からして、追撃するだろう。敵の先鋒が市街地に入ったあたりで、伏兵が襲いかかる。それと同時に主力部隊は転進して敵先鋒と再びぶつかる」
 ここまでの動きを、地図上の駒を使って説明していく。
 大丈夫、今のところ頭で思い描いたことを全て説明できているはずだ。
「だけど、兵数ではこちらが劣る。これでは勝てないんじゃないかな?」
「ん、まあな。でも、兵全員で敵総大将を討つことだけを考えれば」
「総大将を討つことはできる、か……ふむ、案外いい作戦なんじゃないかなと僕は思うよ」
「…………」
 喜多村は納得してくれたが、冠はどこかお気に召さないご様子。腕を組み、目を閉じて何かを考えている。
 この作戦の欠点に気が付いたのだろうか。
「……五十点だな」
 数秒の後、冠はそう告げる。予想より低いなぁ。
「……どこが駄目だった?」
「まず、兵力の差。こちらは最大でも二百。敵は最大五百。伏兵が各個撃破されるかもしれないし、別働隊を組織して伏兵を無視して本陣急襲なんてことも考えられる。そうなった場合、耐えられないだろう」
「たしかに」
 もっとも、こっちも敵も、最大兵力を動員することはできないわけだけども。それでもこういった事態が起こることも十分に考えられる。
「それになにより、敵総大将が前線にいなかった場合はもう詰みじゃねーか。まともにやりゃあ、兵力が多い方が勝つだろうよ。兵って言っても、訓練もされてないただの生徒なんだからな」
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