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君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第18話

「ともかく、全力で頑張るよ」
 ビシッとサムズアップ! (多分)好感度アップ!
「でも、いくら作戦を立てようが、兵と武器がなければどうにもならないんじゃないかな?」
「……まあ、その通りだけど」
 喜多村には水を差すなと言いたいね。
「僕は地図の確保のほかに、色々と情報を探ってみるよ。幸いというか、山中高校にも顔見知りが数人いるし」
 報道部の実力をみせてあげるよ、と続ける喜多村。うん、頼もしい。
「作戦に関しては竹中君が。情報に関しては僕がやる。だから、会長殿と副会長殿には、資金調達と兵の確保を担当してもらうのが妥当だと思うのだけれど……どうかな? あ、ついでに司馬君もね」
 今、司馬の存在を忘れてただろ。……まあ、仕方のないことだと思うけど。
「俺はそれでいいぞー。孔明の名前が伊達じゃないってこと、見せてやんよ!」
 苗字の竹中も、羽柴秀吉に仕えた竹中重治と同じだし、俺って軍師になるべくして生まれたもんだからな。そう思っていた中学時代もありました。
「わ、わたしもそれで大丈夫ですっ! が、頑張ります」
 控えめに胸の前でガッツポーズ。仲山もやる気十分らしい。
「私もそれで構いませんわ。……ただ、そこのキモオタはいらんけどな」
「ははっ……まあ、そう言ってあげるな。司馬君だって役に立つかもしれないだろうさ」
「ちっ、まあ、了解だ。こほん。私も劉華ちゃんとともに頑張りますわ」
 この人って二重人格者なの? ちょっとおかしくない?(主にお頭が)
「ああん? 今失礼なこと考えなかったかコラァ?」
「ひぃっ!? め、めっそうもない!」
 もう怒らせないようにしよう。
「次やったら殺す♪」
 そんなとびっきりの笑顔で言われたら逆に怖いよ漏らしちゃうよ。
「ふふ、もう仲良しになってるんですねお二人とも」
「「どこが!?」」
「ほら、息ぴったりです」
「ち、違うから! これはたまたまなんだからねっ!」
「ツンデレっぽく言うなや! ち、違いますわ劉華ちゃん、仲良くなんてないですからね」
「そうなんですか……」
「あうぅ……そ、そんな悲しげな表情をしないでください劉華ちゃん! 私たち仲良しですから!」
「え?」
「調子合わせろコラァ!」
「ひぃっ!?」
 のど元にナイフ……ではなく定規を突きつけられる。定規と言っても、冠から放たれる殺気は尋常ではない。殺される……っ!
「ハ、ハイ。ボクタチナカヨシデス」
 脅されているのに仲良しですとかおかしすぎると思うけどね!
「そうですか! 美羽ちゃんにお友達ができてわたしも嬉しいです。今度はわたしがお友達を作らないと……っ!」
「はぅあっ!?」
 その場に勢いよく倒れる冠。なんだよコイツ。ホントに頭おかしいんじゃないの?
「ま、まさかここまで純真だったなんて……それに比べてアタイときたら……よよよ」
 どこから取り出したのか、ハンカチを噛みしめながら泣き出す冠(涙なんて出てないけど)。自分がギトギトに汚れているから、何色にも染まっていない仲山を見てショックを受けているんだろうな。
「取り乱しました。申し訳ありません」
 ようやく調子を取り戻した冠。パイプ椅子に座り直し、こほんと咳払いをする。
「ともかく、資金面と生徒への戦争参加の促しは私と劉華ちゃんが担当します」
 今ナチュラルに司馬はいないことになったよね。
「大丈夫だ」
 口角をニッと吊り上げ、ドヤ顔で俺を見る冠。
「司馬には、お前の補佐を担当してもらう」
 全然大丈夫じゃなかった。
「いらないよ! ほんとにいらないよ!」
「む。失礼だぞ孔明! 我輩、役に立つからな!」
「なんでお前は急に話に入ってくるんだよ! 一瞬誰だかわからなかったよ!」
「ふふふ……我輩は今まで力を溜めていたのだよ」
「……はぁ、そうかい」
 疲れたから話を打ち切る。もういいよ。
「では、司馬は竹中と一緒に行動ということでいいな?」
 冠が訊ねると、
「うぅ……は、ははははははははははいいいいいいいい! だだだだ、大丈夫で候」
 司馬が壊れた。
「「っ!」」
 きゅぴーん☆ と、俺と冠の瞳が光った。
 そして、冠と目と目で会話。アイコンタクト。なんでこんな出会ってすぐの人とアイコンタクトなんでできるのか。まあ、同じ目的を持った同志だからだろう。目と目が合う瞬間好きだと気付いた。んなわけあるか。
「あー。お前、女子と話せないのか」
「そんなことないだろう! なにを言っているんだ孔明! 我輩を馬鹿にしているのか?」
「そうか。では冠」
「ああ。おい、司馬」
「ななななな、なんでおじゃる?」
 この反応、間違いない。
 コイツ、女性恐怖症だ。
「くくく……面白いおもちゃを見つけた……っ!」
 不敵な笑みを浮かべる冠。コイツってやっぱSなのかな? Mではなさそうだけど。
 まあ、この馬鹿で遊ぶのは暇なときでいいだろう。今はこんな屑に構っている暇はない。
「じゃあ、今日は解散でいいのか?」
 仲山に訊ねると、仲山は少しの逡巡を挟み、
「はい。今日はもう、できることはなさそうですし」
 と答えた。
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