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君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第16話

 俺たち生徒会役員(臨時だけど)は、戦争に勝利する方法を模索し始めた。
 ……し始めたのだが。
「これは……負けるかもしれないね」
 仲山と冠生徒会役員が決まった旨を職員室に報告に行ってしばらくした後、パソコンからプリントアウトした資料を見ながら、喜多村がため息交じりにそう言った。
「どうしたんだ?」
「うん。これを見てほしい」
 言って、資料を手渡してくる。
 ええとなになに、『国家運営費』か。つまり、この学校、というより生徒会が学校を運営するために使えるポイントのことが書いてあるんだろう。わー、数字がいっぱい書いてあるよー。
 ……なるほどわからん。
「一番下に書いてある、現時点での残っているポイントを見てくれ」
 言われた通り、そこを見る。
『残ポイント 97821ポイント』
「……うん」
 10万ポイントには届いてないけど、そこそこあると考えていいのかな? かな?
 余談だけど、この学園都市で平均的な暮らしをするのならば、1日100ポイントあれば十分な程度だ。だから、10万ポイントというのは結構な大金……もとい、大ポイントだったりする。
「ちなみにだけどね、竹中君。うちと同程度の学校をまともに動かすのには、月に約3万ポイントあれば、まあ不自由しない程度に動かせるらしい」
「おお」
 じゃあ足りてるじゃん。三倍近くあるじゃん。やったね!
「喜んでいるところ申し訳ないが、もう一つ教えておくよ。戦争に絶対必要な武器とシールド発生装置……武器の種類によるとはいえ、合わせて約1500ポイント必要だよ」
「……おぉう……」
 てことはつまり、今あるポイント全て使っても65セットが限界か……。
 もっとも、全てのポイントを武器に使うわけにもいかないだろうけど。
「……勝てなくない? これ?」
「そんな感じがするよ。冗談抜きで、ね」
 額に手を当て、深々と溜め息をつく喜多村。俺も脱力してパイプ椅子に座り背もたれに体重を完全に預ける。
「そういえば、喜多村」
「なんだい?」
「なんで喜多村は今日、体育館に残ったんだ?」
「んー、まあ、隠してるわけでもないから言ってもいいんだけど……条件があるよ」
「おう?」
「竹中君が残った理由を教えてもらいたいね」
 どうやら、そこでじっと動かずに俯いている司馬のことは興味ないらしい。
「別に大したことじゃないぞ?」
「それでも、さ。どうだい? 条件をのむかい?」
「いいぞー」
「えらくあっさりしてるね……僕としてはそっちの方が好ましいけど。では、僕が残った理由から」
 一応、身体を起こして喜多村の方を向く。人の話を聞くのに背もたれに寄りかかったままというのは、失礼だしね。
「僕はね、報道部に所属しているんだよ」
「報道部?」
「そ。あ、織館高校にある報道部にも一応所属しているけど、僕が今言っているのは学管の方だからね」
 学管。正式名称『学園都市管理部活動』。
 学園都市管理部活動というのは、各学校に存在する部活動のほかに、学園都市が管理運営する部活動のことだ。
 野球部、サッカー部などの運動部はなく、今喜多村が言った報道部や、食品管理部、流通管理部、農林部なんてものもある。
 学園都市管理部活動は、その全ての部が学園都市を運営していく上で必要なものになっている。例えば、農林部なら学園都市内で食べられる野菜を育てたり、報道部ならば学園都市で発刊される新聞や、ちょっとしたテレビ番組を作ったりしている。
 部活動と言っても、言ってしまえば仕事と変わらない。しっかりと報酬という形でポイントをもらえるし。
「その報道部なんだけどね。入学して間もない僕は雑用をさせられているんだよ。これでも、情報収集能力とにはある程度の自信はあるんだけれどね。新人だからと言う理由で1年間は雑用をさせられるらしい」
「へぇ、結構厳しいんだな」
「だろう? だからこそ、先輩や学園都市本部に僕の力を認めさせたいんだよ。そのために、何かしらのきっかけがほしいんだ。例えば、『弱小高校、強豪高校を戦争にて打ち破る。その立役者に密着取材!』なんてね」
「そのために、自分が戦争で活躍しようってこと?」
「まあね。でも、僕自身の運動神経は悪くはないがとてもいいわけでもない。だから、生徒会に近づいて役員の誰かに手柄を立てさせたかったんだよ」
「なるほど」
「でも、いざ生徒会に近づいたらこの有様。一応生徒会長の性格やらの情報は掴んでいたんだけどね。さっきも言ったけど、副会長があまりに自信満々に『やる気のない人間は帰れ』なんて言うからさ」
 まんまと騙されたよ、と続ける喜多村。
「ついでに聞くけど、なんでこの学校に入ったんだ? もっと他にも選択肢があっただろう?」
「ああ。最初は別の高校を志望していたんだけどね。適性テストで落ちてしまったんだよ」
 仲間や! 仲間がおった!
「さて、次は竹中君の番だよ」
「ああ。って言っても、ホントに大したことじゃないんだけどな」
「それでもいいさ。聞かせてくれ」
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