ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
目次

第12話

 とりあえずは校舎以外の拠点を捨てて、校舎を全力で守るというのが負けない方法だろうか……。幸いにも、背後は海、南側は中立エリアであるショッピングモールだ。攻められる方向は二方向。不可能な話ではないはず。
 もしくは、奇襲部隊を向かわせて防御の薄くなった敵校舎を奪うとか?
「うーん……なんだかなぁ」
 この学区内の正確な地図でもあれば、もう少し考えられるんだけど。残念ながらそんな便利なものは手元にはない。
 とにかく、今回の戦争さえ乗り切れば二週間は安全な期間が得られるんだ。そのときに態勢を立て直せば他の学校も簡単には攻め入ることができなくなるだろう。
 なんて、歴史シュミレーションゲームで手に入れた知識と経験だけど。まあ、ないよりはマシだろう。
「さて次は、っと」

二・戦闘方法について
 戦争は、体表面上に特殊なシールドを張り巡らせる装置と、剣、槍などの武器を利用した近接戦闘によって行われる。武器は学園都市が開発、販売したもののみ使用可能である。
 武器により受けたダメージが一定量を超えると、シールドが解除され装置が戦闘続行不可能を知らせる合図を送る。戦闘続行不可能となった者は、速やかに自分が所属する学校の校舎内に戻り、戦争が中断されるまで待機する。
 戦争には全校生徒全員が参加可能だが、シールド発生装置と武器がない者は参加することはできない。
 戦争に直接参加する者は、携帯電話をはじめ一切の通信機器の使用はできない。

「ううむ……」
 そこまで読んだところで、一息つくために紅茶をすする。
 乾いた口内が、急速に潤っていく。うん、まずい。もう一杯。
 っと、ふざけるのはこの辺にしといて。
「武器……か」
 戦争をするためには武器が必要。だが、そんな物は学校に入学してから二週間近く経った今でももらっていない。
 ってことは、自分で買うか、もしくは生徒会長が戦争前に調達して戦争に参加する生徒に配るかのどちらってところだろう。システムから考えて、おそらく後者のはず。
 ここでも資金が必要になってくるのか……。えげつねえな、学園都市のシステム。
 現状、うちの学校にどのくらいの資金があるのかはわからないが、あまり多くはないはず。なにしろ生徒会長が不在だったのだから。
 となると、だ。戦争に参加できるのはそこまで多人数ではないだろう。本隊の防備を固めないと負けてしまう以上、人数を割いて奇襲部隊を作るのも難しいはずだ。
 うーむ。これは予想をはるか上に上回るヤバさだ。やヴァい。
「こんなとき、天下の諸葛孔明さんならどうすんのかね……」
 ばたんと後ろに倒れて天井を見上げながら、呟く。
 孔明なんて大層な名前を持ちながら、なんもできやしない。今も、昔も。
 そんな自分に、腹が立つ。
「……はぁ」
 勢いをつけて起き上がると、俺は空になったコップを手に、台所へと向かい二杯目の紅茶を淹れる。
「さーって、頑張んべ!」
 気合を入れなおした後、俺は『よくわかる学園都市』とのにらめっこを再開した。

◇ ◇ ◇ ◇

 そして翌日。
「どうした孔明。やけに眠そうじゃないか。もしや、我輩との決着をつけるべく徹夜で作戦を考えていたのか?」
「んなわけあるかい」
 ちょっと正解だけど。作戦を考えて徹夜したってところが。
「くっくっく……そう隠さずともよい」
「あー、はいはい。わかったから前を向け。キモイ」
「うぐ……っ! き、貴様ぁ……っ! 中学の時後ろの席だった滝本と同じことを言いおって……ちくしょうっ!」
 そんなことを言いつつも、素直に前を向く司馬。あー、これでようやく身体を休めることができ――
『ただいまより、全校集会を始めます』
 ――ると思った俺の幻想を、ステージ脇に立った長宗我部先生がぶち壊す。そげぶ!
「はふぅ」
 大きなあくびをしながらも、シャットダウンしようと思った頭を再起動させながら、俺は体育館のステージの方へ視線を向ける。
 本来なら放課後になっている時刻なのだが、さっき長宗我部先生が言った通り全校集会があるため、こうして体育館に集まっていた。 
 しっかし、眠い! 眠い! 眠い! 大事なことだから三回言いました。 
 昨日(正確には今日だけど)気が付いたら登校時間だったというミステイクをしてしまった上、授業中は司馬の鼻息と独り言のせいで一睡もできなかったこの状況。そら眠いわ!
 まあ、文句を言ったところで司馬は、
『くっくっく、この程度の策にひっかかるとはな……』
 と笑うだけだし。イラっとするだけだから何も言わないことにする。今度耳栓買ってこないと。
『そ、それでは、臨時生徒会長に就任することになった仲山劉華さんより、今回の戦争に関するお話があります……っ』
 精一杯背伸びをしつつそう言う長宗我部先生に皆が胸ときめかせている中、緊張した様子がひしひしとうかがえる仲山が、ゆっくりとステージを上がっていく。
 あ、右手と右足が一緒に前に出てる。リアルで初めて見たな、これやる人。
 そのまま仲山はステージの中心にセットされた演台の前に立ち、その可愛らしい顔をマイクへと近づける。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。