ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
目次

第2話

第一幕

 学園都市。
 ライトノベルや漫画などにはよく出てくる単語だったが、それはあくまで空想の産物だった。
 そんな夢みたいなものが現実となったのは、今からちょうど五年前のことだ。
『有能人材育成総合学園都市』。数カ国が合同してのプロジェクト。詳しいことはわからないが、数十年前にそのプロジェクトを開始。
 太平洋に面積約百万㎢の人工島を造り、その上に多数の学校やら公共施設やらショッピングモールやら……とにかく、生活に必要な建物を建築していく。
 そして、『学園都市』が実際に機能できるようになったのが、五年前。
 なんというか、途方もない話だ。
 それでも、そんな夢みたいな話が現実になった時は、俺は小躍りして喜んだわけで。

「ふ……ふふ、うっひょぉぉおお――――――――――――――――――――――ッ!!」

 俺たちを運んできたフェリーから降り、学園都市敷地内に一歩足を踏み入れた瞬間、俺は喜びのあまり叫び声をあげてしまった。
 当然、そんな俺は周囲の新入生から白い目で見られるわけでして。
「……アウチ」
 俺、竹中孔明(たけなかこうめい)は入学初日から、一生消えないトラウマが生まれましたとさ。まる。
 ……大丈夫だよね? ぼっちになったりしないよね?

◇ ◇ ◇ ◇

 この学園都市内には、変わったシステムがいくつもある。
 その一つが、まず俺たち新入生――正確には入学希望生だけど――が最初にやるべき『適性テスト』。
 学園都市と言っても、一つの巨大な学園に学園都市内にいる学生全員が通う、というわけではない。
 敷地内には、生徒数一万人を超えるマンモス校から生徒数が二百に届かない小さな学校、超エリートばかりが集まる学校に不良一歩手前ばかりが集まる学校などなど、さまざまなものがある。それも、幼稚園から大学院までだ。
 当然、入学希望生にも入学したい学校があるわけだが……大抵の人は学園都市内で一番の学校面積に施設、さらには将来希望する進路への後押し、学園都市内の施設を全て無料で使用できる権利に食事つきの豪華な寮、そして権力(・・)。入学すればそれら膨大な恩恵が得られる、『大帝国学園』への入学を希望しているはず。もちろん俺もその中の一人だ。
 だけど、入学希望生のほとんどが大帝国学園に入学してしまうと他の学校が機能しなくなってしまう。そのために、『適性テスト』というシステムがあるわけだ。
 入学希望者は学園都市に入島すると、数か所のテスト会場に移動。そこで、まずどの学校に入学を希望するかを学園都市側に伝える。
 入学希望者多数の学校は、より優秀な生徒を獲得するために希望者をふるいにかけるのだが……これが適正テストだ。
 適性テストの内容は学校によって違い、聞いた話だと大学入試レベルの試験問題を十分間で解かせるだとか、九人で一つのチームに分けて野球大会だとか、ジャンケンなんてところもあったらしい。
 そんなことを思い返しつつ、俺は割り当てられた会場にたどり着く。会場は『山中学園』という、周囲を山で囲まれた学校だった。
 会場に着くとすぐに学校内の一室に案内される。
 室内には教師らしきバーコード頭のさえないおじさんと、低身長で童顔の少女らしき女性の二人だった。
 どうやら、まずは面接をするらしい。
「どうぞ、椅子にお座りください」
 おじさんが手で用意されたパイプ椅子へ腰かけるように合図したのを確認してから、俺はパイプ椅子に腰を下ろした。
 よし、大丈夫だ。
 説明もなしにいきなり面接だったから緊張したけど、大きな失態はやらかしていない。
「えー、ではまず、名前と出身中学を」
「はい。竹中孔明。出身は、三嶋中学です」
「はい、竹中孔明君ね」
 おじさんは目で隣に座る少女へと合図を送った。少女は横にある本棚を漁り、資料を一つ取り出しておじさんに手渡す。
 どうやら、あれは俺の資料らしい。
「はい、それでは面接を始めますが……竹中孔明君、君が入学を希望する学校はどこですか?」
「はい、大帝国学園です!」
「……大帝国学園、ですか……」
 おじさんは、またか、とでも言いたげな表情をする。
 いや、だって普通そうでしょ?
「では、これからいくつか質問をしますので、正直に答えてください」
「はい」
 そうして、俺はおじさんの口から流れるように放たれる質問のラッシュに、焦らず丁寧に答えていった。
「はい。ではこれで面接は終了です」
 おじさんは手元に置いてあった緑茶を一口含んだ後、そう言った。
 ちらり、と目線だけで壁にかかっていた時計を確認する。どうやら、三十分近く経っていたようだ。それだけ喋り続けていたらそりゃあ喉も乾くだろう。
「ですが、大帝国学園は現時点で入学希望者が入学可能人数を超えていますので、竹中くんには続いて適性テストを受けてもらうことになりますが……よろしいですか?」
「はい。大丈夫です」
 当たり前だ。
 ここまできて、やめるわけないっしょ!
「わかりました。適性テストの会場はこの上階にある3‐Dの教室です。多少待機時間があるとは思いますが、空いている机に座り係りの者が来るのを待っていてください」
「はい。わかりました」
「それでは、面接は終了です。お疲れ様でした。適性テスト、頑張ってください」
「はい。ありがとうございました」
 おじさんと少女に頭を下げる。そしてゆっくりと立ち上がり、失礼しましたと言ってから教室を出る。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。