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君主な彼女と軍師公明

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
目次

第1話

ぷろろーぐ

「立て! 立つんだこうめいっ!」
「む、むりだよ……もう、うごけないよ……」
「ええいっ! なんじゃくな。お前をそんなふうに育てたおぼえはないぞ!」
「ぼくもそだてられたおぼえはないよ……」
「ああ言えばこう言う! なんじゃくな!」
「いたっ!? た、たたかないでよー!!」
「ふん! まったく、わたしのいいなずけがこんなにもなんじゃくとは……おじいさまに言って、いいなずけをとりけしてもらおうか」
「え……だ、だめだよもうちゃん!」
「だったらもう少し体をきたえろ! もうすぐ小学校に入学するんだろ!」
「そ、そうだけど……」
「毎日毎日本ばかり読んで! そんなのだからなんじゃくなんだ!」
「うぅ……だってぇ」
「だってじゃない! ……なあ、こうめい」
「うぅ……なぁに?」
「お前、そんなにわたしとけっこんしたいのか?」
「うん! したい!」
「そ、そうか……」
「? どしたの? もうねえちゃんのかお、まっかだよ?」
「う……うるさい! こほん。とにかくだ、こうめい」
「うん」
「わたしは、わたしがみとめた男としかけっこんするつもりはない」
「う、うん……ぐすっ」
「ああもう! そうしょげるな! 話はさいごまで聞け!」
「……う、うん」
「まったく……いいか、こうめい。わたしがみとめる男とは、わたしよりも強い男だ」
「もうねえちゃんよりも……つよい?」
「ああ」
「む、むりだよそんなの! もうねえちゃんにかてるひとなんていないよ!」
「ふぅ……ならば、わたしはずっとけっこんしない。一人で生きていく」
「なら、ぼくは……」
「もし、おまえがわたしにみとめられたいのなら、どりょくしろ。そして、いつの日かわたしよりも強くなれ」
「…………」
「む? どうしたんだ、急にだまって」
「ねえ、もうねえちゃん」
「なんだ?」
「いっこ、やくそくして」
「やくそく? ああ、いいぞ。わたしにできることならば」
「ぼく、がんばってもうねえちゃんよりつよくなる。もうねえちゃんにかってみせる。だから、もしもうねえちゃんにかったら――」
「わたしに勝ったら?」
「――ぼ、ぼくと、けっこんしてください!」
「……っ!?」
「だ、だめ……かな……?」
「…………」
「も、もうねえちゃん?」
「ふふっ……はっはっは!」
「な、なに!?」
「いや、なんでもない。ただうれしかっただけだ」
「う、うれしい?」
「いや、こっちの話だ」
「そ、そう」
「こうめい!」
「は、はい!」
「やくそく、してやろう」
「ほ、ほんとにっ!?」
「ああ。おまえがわたしに勝ったら、そのときは、わたしはお前のものだ。けっこんしてやる」
「や、やくそくだよ!」
「ああ、やくそくだ」





 俺が人生で必ず守ると決めた約束が一つある。
 それは幼少期にした、一歳年上の幼馴染みとの約束。

『俺が勝ったら、結婚する』

という、ベタといえばベタな約束だ。
 俺が勝ったらって、何に勝ったらなのかと幼少期の俺にツッコミたい。

 でも、この約束だけは、絶対に守りたい。
 そのために、今まで努力してきたんだ。


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