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いち、にい、さん!

原作: 銀魂 作者: 澪音(れいん)
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34話 「落雷注意報」



途中他の隊士の人に出会い、副長さんと呼ばれていた男性の後を追ってやって来たのは少し離れた一室だった。後を追ってきた私を見た男性に外で待っていろと怒られてしまったけれど参ツ葉さんが巻き込まれている(巻き込んでいるの間違えかもしれないが)と知っていて見て見ぬふりは出来ない。

それに参ツ葉さんは女性だ。
いくら壱橋さんの手伝いをしていて、普通よりも強いと言えど、男性相手ではケガをしてしまうかもしれない。止めないと。諦めずに食いつくように粘る私に最後には副長さんは部屋に入ることを許してくれた。

扉を開ける前に、副長さんは一度だけ振り向き私と隊士の人に一度ずつ頷き、慎重に扉を開けていく。ごくりと生唾を飲みながら、いつでも飛び出せるようにした私は室内を見渡して唖然とした。


扉のむこうは、戦場でした。


部屋の隅に乱雑に積み上げられた机と椅子。
唖然と部屋の中の惨状を見つめる私たちをよそに、中央部に立っている参ツ葉さんと沖田さんは睨み合いを繰り広げている。隣に立っている男性が何かを落とした音がしたけれど何を落としたか、なんて構っている余裕もなかった。

「ガキ」と叫ばれて腹が立ったらしい沖田さんは参ツ葉さんに対して「ババア」と応戦し、「ババア」と呼ばれた参ツ葉さんは笑顔にも関わらず身の毛もよだつような殺気が出ている。

物音に驚いてやってきたのは私たちだけではないらしく、別室で話をしていたスキンヘッドのお兄さんと、葯娑丸君も後からやって来るとその惨劇を見て片方は頭を抱え、片方は呆れ眼をした。

「何してんだ総悟ォォォ!?」

副長さんの怒鳴り声に一同はハッとしたように、副長さんと隊士の方は沖田さんを、私は慌てて沖田さんの方を睨みつける参ツ葉さんの前に立つと彼女の名前を呼んで意識を逸らさせた。

「参ツ葉さん!」

「総悟!」

唇を尖らせ不貞腐れたように私と土方さんをそれぞれ見つめる2人は、何だか子供みたいだと思ったけれど、この前に起きたことを考えたらそんな可愛いものじゃない。

半壊した取調室は後から駆け付けた隊士の人が「また沖田隊長が」と言いながら後片付けをしてくれているが、半分は多分参ツ葉さんがやったんだと思う。

「あのババアがなめくさった口利くんで腹が立ったんでさァ。」

「いつもなめくさった口利いてんのはお前だろうが総悟」

「聞いてよ!あのガキが、「ババアの癖にそんな細かいことでカリカリと。あ、更年期か」なんて言うのよ!?そんな年じゃないよ私!」

「参ツ葉さん、だからって人様のものを壊していい理由にはなりません!」

葯娑丸君は傍観を決めるらしく、壁のほうで一連の流れを見ている。
そんな葯娑丸君に今はとやかく言うのは止そうと思う。あの街での一件について色々言いたいことはあったけど、今は大人しくしているのには変わらないから。

「更年期じゃねぇか。街中でああして恥じらいもなく怒鳴るなんて。ああ、更年期じゃなかったらただの騒音ババアか」

「やーね。人の往来も多いところでバズーカなんてぶっ放すなんてガキは「その後」のことも考えられないのかしら。武器も持たぬ一般人すらおさめられないの?」

私と副長さんが静止するも、お構いなしにお互いが見えぬように壁になって立っている私たちの横をするりと間をすり抜けてまた揉み合いをしている。

新しい部屋をせっかく用意してくれたというのに、参ツ葉さんは組み立て式の薙刀のようなものを、沖田さんは腰元の刀に手を添えたのが見えて、部屋には緊迫した空気が流れ込む。

少し離れた場所にいた副長さんとスキンヘッドのお兄さん、原田さんという方が同時に止めに入ろうと話しているのが耳に入る。葯娑丸君は相変わらず我関せず状態で静観するつもりらしい。

私はスッと目を細めると、着物の袖をひと捲りして、両腕の拳をきつく握りしめた。

一触即発、といった雰囲気の2人の横に立ち、急に出来た影に鬱陶しそうに見てきた2人が同じタイミングで「あ」と呟いた。

「いい加減にしなさいィィィ!!」

じんじん、と痛む拳に涙目になりながら、2人を交互に睨みつけると、どちらにもそれなりの衝撃が来たようで、頭を抱えながら驚いたように目をぱちぱちとさせながら私を見る。

「正座」

「え、えっと…あれ?怒っている?」

参ツ葉さんがいつもと違う雰囲気の私にへらり、と笑ってご機嫌取りに入っているのがわかった。けれど一度は注意したのに構わずに続けたほうが悪いと判断した私は、出来る限り視線を鋭くしてから2人にもう一度「正座!」と言った。

後ろで見ていた副長さん達が小さく拍手をしているのが聞こえた。
その後、静かに自分達の壊した取調室の掃除を手伝う2人と一緒に部屋に入り、粗方片付ける、先に片付けておいてくださった隊士の人にお礼を伝えて真選組を後にした。

家に着いて玄関で出迎えてくれた肆谷さんがしおらしい参ツ葉さんに驚いて目を丸くしていた。
そんな参ツ葉さんをからかう葯娑丸君に、一連の流れを真選組の人から聞いたらしい壱橋さんの雷が落ちるまであと少し。


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