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いち、にい、さん!

原作: 銀魂 作者: 澪音(れいん)
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24話 似ている人


「………」

「…なんだ」

参ツ葉さんと帰路につき、玄関を開けるとちょうど私たちと同じように出掛けていたらしい壱橋さんも帰ってきたところだった。「おかえりなさい」と振り向くと、思わず参ツ葉さんと同じタイミングで壱橋さんを見つめながら固まっていると、居心地悪そうに顔をしかめながら壱橋さんが呟いた。

「今日の人、会ったことがある気がしたのってさ」

「参ツ葉さんも思われました?」

ヒソヒソと耳元で囁いた参ツ葉さんも同じことを考えていたらしい。
今日ファミレスで同席した人が、あれからどこかで会ったような気がしてならなかった。
けれど結局その結論はファミレスに居る時には分からず仕舞いに終わってしまい、ただ偶然相席になっただけの坂田さんとはそのまま自然の流れで解散になった。
帰宅途中も、参ツ葉さんが色々な話をしてくれたけれど、頭の片隅でずっとそのことばかりを考えてしまい、次に坂田さんに出会ったら気付くだろうかと思っていたけれど。こうしてよく壱橋さんを見てみると似てるんだ、壱橋さんと今日出会った銀髪さんが。

「何の話だ」

「あ、ごめんね。いっちー。実はさ、今日ファミレスで相席になった人がいっちーにそっくりで」

「それで俺の顔を見ていたと」

壱橋さんは呆れたようにため息を吐くと、私たちの横を通り抜けて先に土間の方へと上がってしまう。それに続くように下駄を脱ぎ、揃えてから上がると興味がないように思えた壱橋さんも案外自分にそっくりな人がどんな人か気になるらしい。普段なら早々に自室の方へ引っ込んでしまうというのに、今日は上着を置いてくるだけですぐに戻ってこられた。

「そっくりも何もないよ、私は最初ピンと来なかったんだけどさ。この子が、ずっと気にしてたみたいで。案外付き合いの長い私たちよりちゃんといっちーのこと見てくれてるよ。よかったねぇ」

にんまりと笑みを浮かべ、子供に言うような口調の参ツ葉さんにスッと目を細めた壱橋さんが、私の方を見てから「そんなに似ていたのか?」と尋ねられる。改めて聞かれてしまうと、何だか答えにくくて笑って誤魔化してしまいたくなるのだけれど。壱橋さんとあの方の違うところと言えば、正直髪の色くらいだ。

「髪色が向こうは白髪だったんだよねぇ。いっちーが白髪に染めたらそっくりかも?」

「なぜ俺がそいつに寄せる必要がある。」

呆れたようにやれやれと首を横に振った壱橋さんとその人は確かに髪を染めて服装を一緒にしてしまえば身内と言えど分からなくなってしまうだろうけれど。

けど、何となく、壱橋さんと今日出会った坂田さんは持っている雰囲気が異なっているから案外すぐに判別つくのかもしれない。壱橋さんは何処かピリッとした空気を感じるというか、瞳に力があるけれど、坂田さんは温和な印象を得た。参ツ葉さんは「だらしない感じだよね」と比喩したけれど、それも頷ける感じ。けれど、2人共周りをどことなく安心させる雰囲気を持っていることは、似ているのかもしれない。




「あれ、お宅昨日の」

今日は参ツ葉さんが急用で「街」の方に戻る為、ひとり江戸の街に出てくると鉢合わせたのは昨日の坂田さんだった。坂田さんの後ろには可愛らしい女の子がいて、女の子は一瞬怪訝そうな顔をすると「銀ちゃんの女アルか?」と坂田さんに向かって尋ねて、手のひらで強引に口をふさがれていた。

「こんにちは。先日はどうも」

挨拶をしないのもなんだろうとお辞儀をすると、坂田さんは「あー」と言いながら女の子に「ちょっと向こうに行ってろ」と言って不審がられていた。かくいう私も、チラチラと向けられる坂田さんの視線に何かあるのだろうかと不安が募っていくばかりで、結局坂田さんは「ジュース買って来い。金渡すから」と言い、無理やり向こうに追い払ってしまった。

「あの、何か?」

「あー違ったら悪い、先に謝っとくけどさ。お宅、もしかして沖田君に追いかけられていた人?」

「沖田」その名前に嫌でも反応してしまう。
壱橋さんや葯娑丸君にはもう関わらないように、と言われていたからなるべく屯所から離れた場所を歩いていたのだけれど、どうやら坂田さんは彼らの知り合いらしい。

「あの、私別に悪いことしてたわけじゃ!」

「ああ、いや、俺も別に連中のところに連れて行こうとかじゃねぇからさ」

苦笑いを浮かべ、手をひらひらと振った坂田さんは、少し困ったように右上の方を見つめていると、やがて「昨日の名刺」と私の方を指差され、つられるように昨日頂いたばかりの名刺の入っている着物の袖の方を見ると、「いつでも連絡してこいや」と言われて弾かれたように顔を上げてしまった。

「見たところお宅武術心得ているようには見えねえし。難癖つけられて困っているってぇなら助けになるぜ。そこそこ役に立つかもしんねーぞ」

坂田さんはそう言って少しさ迷うように浮かせていた手のひらを私の右肩にポン、と乗せると向こうの方で先程の女の子が「銀ちゃん!そろそろ行かないと出掛けてしまうヨ!」と声を上げた。それに坂田さんは「今行く」というと私の方に視線を戻して軽く挨拶を交わすとそのまま別れた。

真選組の人達の知り合いみたいだったから慌てて大声を出してしまったから不審に思われたかも、なんて半生しながら歩いていると、ちょうど向こうから歩いてきた葯娑丸君が私の前に立ち、私の額を小さく小突いた。どうやら一連の流れを偶然目にしてしまっていたらしい彼は、私に何も聞かずにただ黙って隣を歩いてくれた。


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