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いち、にい、さん!

原作: 銀魂 作者: 澪音(れいん)
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15話 「発見」


「仕方ないですねィ、土方さんにも買ってきやすよ。山田のばあさんの店は饅頭屋なんですがねィ、何味がいいですかィ?」

「いや何の話?やれやれみたいな顔すんな、俺がその顔したいわ」

何で俺が呆れられているのか。
心底腹立たしいが、俺はきっと物凄い顔をしているのだろう。
通りすがりの人間が俺を見ては悲鳴を上げて去っていく。
それが分かり慌てて咳ばらいをすると、総悟が俺の気を逆撫でるように「何味にするんでィ」と追及してくる。

「ちなみにお勧めは「味噌カツ味~ハバネロ風味を添えて~」「納豆キムチ味~超激辛特性ダレ」「ハバネロの唐辛子巻き」が人気でさァ」

「何で頑なに激辛追い求めてるんだよその店。プレーンねぇのか、プレーン」

視線では総悟の言う女を探しながら、それを周りに悟られぬように会話は総悟に合わせた。
こうすることで俺達が真選組で誰かを追っていると思わせない作戦か、よく考えりゃ、こいつなりにカモフラージュを考えたのかもしれねぇ。

「プレーン味もありやすがおすすめ出来やせんよ。ただの激辛なんで」

「何でだよ。何でどれもこれも激辛なんだよその店。ただの激辛ってなんだ。じゃああれか?マヨネーズキムチ味みたいなのねぇのか、納豆キムチがあんならあるだろ」

「ないですねィ。ばあさん、マヨネーズをこの世の敵くらい嫌いなんで見せたら鬼の形相で追いかけまわしてきやすよ。爺さんの仇とか言って」

「マヨネーズは人に恨まれるようなことなんかしねぇ!き、きっと別の原因があんだよ…断じてマヨネーズは人を死に至らしめるようなものじゃ」

「爺さんにたこ焼き買ってくるように頼んだら、爺さんが間違えてたい焼き買って来ちまって、激怒したばあさんに飛び蹴りされて全治1週間のけがをしたらしいんでさァ。それ以来マヨネーズを仇のように」

「そのケガ、マヨネーズ関係なくね?」

「爺さんを飛び蹴りした時に右手に持ってたマヨネーズが邪魔で本領発揮できなかったらしいんでさァ。」

「よし、わかった。その女とっ捕まえる前にそのばあさん捕まえるぞ。マヨネーズの名誉回復と、ついでに爺さんの生命の危機を救うのが優先だ」

煙草を口にくわえ、火をつけるためにライターを探していると、あちらこちらから迷惑そうな視線を向けられ、口元をひくつかせながら火のついていない煙草をしまい込んだ。まったく喫煙者が生きにくくなったものだ。ため息を吐き手持無沙汰になりながら怪しい女がいねぇか辺りを見回していると隣から「あ」と間の抜けた声が響き、総悟の方を向いた俺は間髪開けずに後ろに体を逸らした。

視界いっぱいに広がったバズーカからは何ら躊躇もなく爆風が吹き荒れ、幸いにも壁を背に立っていたせいで人への被害はなかったが、後ろの店の壁が大破した。それに口元を引きつらせながら、俺たちの周りに居た人間が悲鳴をあげながら逃げ去っていく声と、店主のおっさんの「きゃああ!」という何とも言えない悲鳴が聞こえた。

「なっにすんだ総悟てめぇ!!!」

「あ、ごめん。誤爆った」

「あ、ごめんじゃねぇだろうよ!?なにラインで誤送信しちゃった、ごっめーんみたいなノリで謝ってんの!?てへぺろじゃねぇんだよコラァ!危うくこっちの生命が消えるところだったわ!!」

「女の隣にいる男の顔が土方の野郎にそっくりだなー取っ捕まえたら適当に重罪なすりつけて打ち首にして、当日間違えたフリして本物の土方斬るかな俺天才って思ってたら、振り返ったら万事屋の旦那にクリソツで。びっくりしたら発砲してやした。まあ落ち着いて考えりゃどっちに似てても凶悪顔ですねィ、打ち首にしやしょ」

「色々とツッコミを入れてぇが生憎俺の身体はひとつしかねぇから敢えてこれだけ言わせてもらうが。万事屋の顔が凶悪だろうが関係ねぇが俺の顔は凶悪じゃねぇ。あと俺の暗殺計画はやめろ」

「お茶目なのに。ノリが悪い男は嫌われやすぜ?」

「ノリで殺されてたまるか!」

やれやれと首を横に振る総悟に色々言いたいことはあるが、総悟がスッと目を細めて何処かを見つめたまま歩き出すのに俺も何か言うのをやめる。話している途中、俺の右隣にいた総悟が、そちらに背を向けるように左側に移動したことで大体の位置は掴めていたが、総悟の後に続きながらその先にある路地の方を見ると桃色の着物がほんの少しだけ見えた。総悟の向かう先を見てもどうやら今路地に入った女のことらしい。

「あれか?」

「そうですねィ。女の方は俺に気付かなかったようですが、男の方はさすが、俺達真選組の面子を把握しているようで俺と目が合うと女が俺の視界に入らないように遮りやがった」

「攘夷の人間の可能性は?」

「さあねィ。見た事ねぇツラだったが、下っ端まで把握してる訳ではねぇ。取っ捕まえて尋問にかけりゃ分かることでさァ」

俺達が先程騒いだせいで、人混みが引いて出来た道を歩いていくと先程桃色の着物の女が入っていった路地裏を覗き見る。相手も追われているのが分かっているらしい、見えたのはやはり着物の端だけで、反対側の壁に背を付けて路地裏を覗いていた総悟と目を合わせて頷き合った。


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