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赦されざる者たちは霧の中に

原作: その他 (原作:かつて神だった獣たちへ) 作者: 十五穀米
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ハンクの疑心

「ソレデモ、ハナス、ベキ。コレ、ドウ、シマツ、スル?」
「……ああ。ねー? どうしよっか?」
 とマックス(仮名)はジェラルドを見た。
 ハンクは、その視線で、ジェラルド軍曹はことの真意を知っているのだと悟った。
「いつ、です?」
 ハンクはジェラルドに問う。
 おおかた、薬草採取の時にでも打ち明けたのだろう。
「だいたいの予想はしているのに、あえて聞くかね」
「愚問です。どんなことがあっても俺が彼を殺さないと思っていたのなら、買いかぶりすぎです」
「もちろんだ。優先順位がある。とはいえ、彼がシャールさんを襲わない限り、半殺しくらいで止めるだろう?」
「……さぐり合いは結構です。こちらの世界にいれば、ひとまず干渉はされない。という認識でいいんだな?」
 話の後半はマックス(仮名)に向けての確認。
「それであってる」
「それで? あんたらはなにを画策している?」
「人聞きが悪いな。そんな、出し抜くようなことは考えてないよ。どこかで腹割って話せる場所が必要だと思ってね。あっちじゃ話は筒抜けだ。一枚岩じゃない。用心しろ。だが、まさか同じ組織内でも分裂しかけているとはな……」
「アア……。コチラモ、オナジダ。ダガ、ワカラナイ、ワケデモナイ」
「ん、そうだね。こうも進展がないと、そりゃ実力行使を訴えたくはなる。だからって、人間を的にしてとかは、やりすぎだ」
 ふたりの会話から、だいたいの真相が伝わってくる。
 ハンクは厳しい表情を変えない。
 ジェラルドは大筋は打ち明けてもらえているが、それ以外はまだ知らない。
 黙って聞く立場に徹するつもりでいるが、濁されれば追求るつもりではいる。
 シャールは、マックス(仮名)たちがやろうとしていることよりも、それに黙って従っているオーレン(仮名)の真意が気になっていた。

※※※

 ハンクは尚も厳しい表情を変えずに、マックス(仮名)とピエロに問う。
「確認するが……」
「それでいいよ。隠したりはしないからさ」
 マックス(仮名)は軽い口調で返すが、顔は真面目だ。
 マックス(仮名)の態度は、ふざけている、と言われても不思議ではないが、今では彼の持つ、こういった態度に救われると感じるシャールだった。
 ピリピリとした空気の中にいるのが息苦しくなる。
 そんな時に、マックス(仮名)は表情や態度、口調で柔らかいリセットをする。
 はじめは勘に障ると思っていたハンクやジェラルドも、彼がそういった態度にでると、自分の気持ちをリセットできているような感覚になっていた。
 ハンクは張りつめた気持ちを吐息とともに外に出し、新しい空気を吸い込む。
 再びマックス(仮名)とピエロを交互に見て、答えるのはふたりのどちらでもいいが……と視線で流した。
「いきなりやってきたふたり、あれはイレギュラーだったんだな?」
「うん、そう。だって、口約束だけどトップないしそれに準ずる立場の人が交わした約束だからね。違えるなんてありえない。たぶん、あっちの組織も勘弁してくれと思ってるんじゃないかな。けど、それでもあのふたりに意見できないという弱さもある。オーレン(仮名)をどう使うかは彼らに一任していたんだと思う。いや、一任というよりは黙認かな。その辺りはオーレン(仮名)に契約の内容とか、羊皮紙に書かれていたはずの内容とか打ち明けてくれればわかることだけど、たぶん、口外しないという記述も入っているはずだから、できないね」
 マックス(仮名)はハンクに答えながら、時折オーレン(仮名)を見る。
 オーレン(仮名)はマックス(仮名)の話を聞きながら、時折頷いていた。
 おおむね、マックス(仮名)の推理はあっているのだろう。
「イレギュラーの出現で、オーレン(仮名)に身体的異常がでたのは本当で、演技ではない。どこまでが本当でどこからが演技だ? これまでの様子からすると、オーレン(仮名)を連れてピエロがこっちに移動……逃げる直前までが本当、それ以降が演技だと思うが」
「当たり。イレギュラーだったんだけど、考え方によってはラッキーなイレギュラーだったんだよ。オーレン(仮名)がなぜ頑なに黙秘をするのか、それでも何か聞き出せることはないか。イレギュラーのふたりに暴露させることはできないかって」
「それで怒らせたのか」
「人は怒ると理性が飛ぶから。とくにあれは耐えることに弱い。案の定、こっちの誘導に引っかかってくれたわけ。でも、思ったより聞き出せたよ。どうにかしてこちら人間の世界に行くことができれば、ひとまず安心とか、ライザ少尉の居場所とかも」
「だが、リンクとかいうのをしているのだろう? こちらでのことも知っていたぞ?」
「だけど、オーレン(仮名)の意識がない時はリンクできない。つまり、意識がない状態で、オーレン(仮名)の幻覚の中に入り、少尉をこっちに連れ戻る。気絶しているふりをしておけと指示しておいたのは、それで済めばいいと思ったから」
「隠す必要もないと思うが?」
「うん。でも、そういうのってあるでしょ?」
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