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赦されざる者たちは霧の中に

原作: その他 (原作:かつて神だった獣たちへ) 作者: 十五穀米
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軍人の目利き

 ふられたふたりは、それが必要と感じたときに……とだけ返した。

※※※

 霧がたちこめ、そして晴れると、そこは地下室の中に牢屋だった。
 等間隔に仕切られる鉄格子。
「見張りがいなくて平気なのか?」とハンク。
「術が施されているから大丈夫なんだよ」とマックス(仮名)。
「どうやって入るの?」とシャールが聞けば、
「普通に」とマックス(仮名)が答える。
 とくになにか特別なことをしなくても大丈夫らしい。
 オーレン(仮名)や、彼を連れ出そうと思う者以外はとくになにもしなくていいという。
 ということは、オーレン(仮名)自身に術が施されているのだろう。

 鉄格子で仕切られた空間に、拘束された状態のオーレン(仮名)と、顔を隠した人物が数人、そしてピエロくんもいた。
 さすがにジェラルドのお面くんの姿はない。
「モドッタカ」
「ああ。ちゃんと、軍曹を連れてきた。条件も聞き入れてもらえたよ」
 マックス(仮名)がチラリとオーレン(仮名)の方を見ていう。
 オーレン(仮名)は変わらず怯えているが、こちらの会話が気になるのか、時折視線が向けられる。
「ソウカ。デモ、ソレハ、オマエノコウセキ、デハ、ナイダロウ?」
「うわっ! そーいうこと、言う? まあ、そうなんだけどさ。で、どんな感じ?」
「カワリハ、ナイ」
「そう……か。それは困ったね」
 チャラい口調のマックス(仮名)だが、心なしか声に凄みがある。
 それから、珍しく真顔になり、変わってもらっていいか? と訊ねた。
「カマワナイ」
 ピエロくんと立ち位置が変わった。

「さて……と。どうせ、なにを聞いても、交換条件提示しても、おまえは口を割らないだろうってことくらいは、想定内だよ。その上で、今回はジェラルド軍曹にご登場願ってみた。おまえ、俺が抜けたあと、平然となりすまして居座っただろう? バレてないってことは、近くで俺を監視していたってことだ。凄く近くにいたんだな。気づかなかったよ。まあ、気づいたところで目的は同じだろうから、邪魔もしなかったけどね。で、入れ替わって少佐の近くにいて、それでなにも感じなかったのか、おまえは。近くにいたなら、わかっていたことだろう? 少佐にケインのことを詰問してもなにも目新しい情報はないってことくらい。軟禁くらいは大目に見れるけどさ、精神と脳をいじくるっていうのは、タチが悪い。かつ、無関係の人間を殺傷したのは、さらに悪質だ。それを指示したのは、そっちの代表だと推測している。そんなに怖いのか、おまえの組織は」
 オーレン(仮名)はマックス(仮名)の顔を見ない。
 見ないのではなく、見れないのだろう。
 だが、なにを言っているのかは理解しながらも、当てられる度に体を振るわせていた。
 つまりそれは、マックス(仮名)の見解が当たっているということになる。
「おまえはさ、嘘がつけない質なんだよ。向かないんだよ、こういうの。どっかでタガが外れブチ切れた。そして歯止めが利かなく、さらに暴走をした。一度動き出したら止まらない、止められない。で、ことの重大さに気づいていながら、気づかないようにしていた。最悪だよ。おまえ、たとえ許されても、これから先、何百年って生きていくは茨の道だぞ。そもそも、吸血鬼は自殺なんてできない。自分で命を絶てない。時代の流れにのって、体が対応していく。太陽の下でも歩けるし、十字架や聖水も役立たず。にんにくも杭も銀も効果はない。どうするよ? 殺してくださいって頼んだって、死ねないんだぜ? そんなことも考えていなかったのかよ」

 マックス(仮名)の話を黙って聞いていたハンクとジェラルドは、示し合わせたかのように、口を開いた。
「擬神兵だな」
 だが、意図的につくられた擬神兵と、彼らを一括りにしてしまうのは、失礼というものだ。
 擬神兵は神殺しの弾丸でしか死なないわけではないが、息の根を止めるまで相応のキズを負わせ、致命傷も与え続けなくてはならない。
 ことケインに至っては、回復能力もあり、なかなか難しい。
 そういった擬神兵にも効力があるのが、神殺しの弾丸。
 それを受け生還したハンクの身体能力ははかりしれない。
「ハンク・ヘンリエット曹長。彼をどうみる?」
「どう、とは?」
「軍人を長くやっていると、本能的なもの、訓練されることで培われるもの、成長の過程、さらには軍人としての資質みたいなものが見えてくる。訓練では優秀でも、現地では発揮できない者もいる。やつはかなり残虐な行為をし、卑劣な行為もした。それらをどう見る?」
「意志か命令か洗脳か……ということなら、意志と命令だと俺は見た」
「ほう……?」
「ケインへの敵意、吸血鬼一族としての誇り。そのあたりは一族全員の一致であると、マックス(仮名)が言っていた。俺も、それは本当だと思う。が、その思いだけでどこまでできるかは個人差がある。マックス(仮名)は情報収集に秀でているようだが、戦闘能力はからっきしだ。敵の背後をとっておきながら、最後のひと押しができない」
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