ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

赦されざる者たちは霧の中に

原作: その他 (原作:かつて神だった獣たちへ) 作者: 十五穀米
目次

作戦は…

「……どうぞ」
「ありがとう。あなた方、もしくは近しい人に催眠的な術を使える者はいるだろうか」
「医者が治療で行うことはある。そして薬物を使い、拷問として行うこともあるくらいかしら?」
「そうですか。それが答えです」
「え?」
「今、あなたがおっしゃったことですよ。拷問にも使う。つまり、彼、オーレン(仮名)の能力は他人の作った幻覚の中に入り込み、そして意識を持ち去ることができるということです。普通、このようなことはしません。出来たとして、意識を持ち去られてしまった者はもう戻ってこない確率があります。危険な行為と認識しているのでしないですよ。でも、それをしてしまう。よくいえば素直で純粋なのでしょうが、それを悪用する者もいるということです。そして彼は少し変わったところがあり、煙たがれていたところもあります。そんな時にあなたが必要だと言われたらどうでしょう? 誰だって必要と言われたら悪い気はしませんよね?」
 オーレン(仮名)が実はいい人であるとまでは言わないと付け加えられた。
「それって、少佐の脳内をひっかき回すってこと?」
「可能性としてあると思いますよ」
「ありがとう。危険度は把握できたわ。もうひとつ。少佐の肉体は……」
 ライザはアストレイ(仮名)とマックス(仮名)の両方をみた。
 どうやら答えるのはマックス(仮名)らしい。
「霧の中というのはこことは別の作られた空間と思って話を聞いてほしい。霧を使って移動経験をしているから理解はできると思うからざっくりと言うけど。意識だけではなくてね、肉体も一緒。三人が霧から抜け出せたから意識も肉体も元の世界に戻ることが出来た。意識だけ持って行かれたら肉体はたぶん元の世界に戻り、意識不明のままになるはず。でも少佐は肉体も戻っていないから、肉体と精神がオーレン(仮名)のところにあると俺は思う。あとは心がどこまで持つか。拷問って肉体の方は耐えられても精神面はこたえるって聞くから、精神面をいじられたらもう手遅れかもしれない」
「そのオーレン(仮名)という人物はどれくらいケインに対して憎悪を抱いているかわかる?」
「ケインに対しての憎悪っていうなら、ここの一族全員がほぼ大差なく抱いているから、オーレン(仮名)がなりふり構っていられないに乗っかって行動している気持ちはわかる。でも、無関係の人を手に掛けてまで……というのは違う。それをしたらケインと同類になるからね。だから理性がいつまで保てるかが問題なんだよ、ライザ少尉」
「じゃあ、その理性は?」
「期待はできないかな。もう手を下しているかもしれない」
「言っておくけど。少佐をどうこうしてもケインに繋がる情報はないわよ? 知っていたらこんなに苦労はしないわ」
「それ、本当に。彼の近くにいたから俺にはわかる。ただ、質問の仕方を変えればヒントくらいは得られるかもしれないって期待はまだ持っているくらいかな」
「あなたの、マックス(仮名)のその見解は、ここにいる方々も受け入れてくれているの? 少佐はケインのことを知らない。少佐から得られるものはないと」
 それにはアストレイ(仮名)が答えた。
「そこは徹底させます。少佐には手出しさせません。そしてケインと接触したというシャールさん。あなたも。信用していただいて大丈夫です。なにかあれば、マックス(仮名)が盾になるかと。そうですね、マックス(仮名)」
「え? マジで言ってんの?」
「当然です。それくらいの覚悟があるからこそ、我々の世界に連れてきたのでしょう? 残念なことに、人間を見下す者もいます。食料としてしか見ない者もいます。そういうところに、軍人の方々ならいざしらず、一般の女性を……」
 どうやら、シャールのことをとても気遣ってくれているようだ。
 それに対しシャールは、
「私は自分の意志で来ています。その、私のことでそちらの方々が争ったりしないでください。私も目立つ行動はしませんから」
「そうしていただけると助かります」
 アストレイ(仮名)は冷たく返したが、それが本意ではないことを、これまでの対話の中で感じていた三人だった。

「さて。話を戻しましょう。作戦はやはりオーレン(仮名)のいる幻覚に入り込んでいくしかないでしょうね」
「気づかれてはじかれたら終わりだけど?」
「そこをどうにかするのがあなたの役目でしょう、マックス(仮名)」
「え? それも俺? というか真面目な話。そういうのに特化したやつ、ほかにもいるだろう? そいつの協力ははずせない」
 ヘラヘラしていたかと思えば真顔で意見するマックス(仮名)。
 それを受けてアストレイ(仮名)は、
「わかりました。皆々様、聞いての通りです。幻覚能力に長けている人物を推薦していただけませんか?」
 と姿無き方々へ訪ねた。
「承知した。こちらにあてがある。協力させよう」
 どこからともなく声だけがする。
「ありがとうございます。これでひとつ解決ですね。次はどうするのですマックス(仮名)」
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。