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赦されざる者たちは霧の中に

原作: その他 (原作:かつて神だった獣たちへ) 作者: 十五穀米
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正式な共闘へ

「オーレン(仮名)ですよ。過激派の。今回の件で人間と共存しながら調査している者のリストは派閥を越えて共有でしたよね? 俺があっちに行くときにリスト確認したから。まああいつとはこっちにいる時からの腐れ縁というか。まさか過激派に荷担するとは思ってもいなかっただけに、ビックリだったよ」
「確かなのか?」
「植物をあれだけ自在に操れるのはあいつくらいしか知らないし。そーいえば、どういう傾向で行動しているのかも共有が鉄則でしたよね? 敵は同じケインなわけだし」
「そうだな。確認させよう」
 アストレイ(仮名)がどこからともなく霧を作りだし、それでコウモリの姿をつくる。
 霧でできたコウモリは天井をすり抜け姿を消した。
「驚かせたみたいだな」
 三人の顔色を見たアストレイ(仮名)が本当に申し訳なさそうな顔で言う。
「不安がる必要はない。あれはボクの言葉を仲間に伝える手段のひとつだ」
 その方法も人によって違うらしい。
 しばらくすると扉をノックする音がして、フードを被った男が対応。
 男は扉の向こうにいる者としばし会話をすると、アストレイ(仮名)に耳打ちをした。
「なるほど。それは困りましたね。あちらの責任者に正式に抗議を入れましょう。それと、このことを保守派の組織に連絡を。できればすぐにでもこちらに顔を出してほしいと」
 それを聞いたフードの男は壁をすり抜けて姿を消した。
 なにを話していたかはわからないが、指示のないようからあまりいい流れではないことだけはわかる。
「マックス(仮名)」
「ん?」
「かなりまずい流れだね。せめてオーレン(仮名)を目撃した時点で、情報を入れてほしかったよ」
「え? そんなにまずい状態?」
「かなり」
 そしてアストレイ(仮名)は三人の顔を確認するように見てから、言葉を発した。
「さて。マックス(仮名)からあなた方はこちら側に協力をしていただけるとのことでしたが、それは今もお変わりなく?」
「ええ、もちろんよ。その代わりとしてあなた方にも協力をしてほしいとお願いしているので」
 とライザは返す。
「協力要請の内容はおおよそ検討はついています。クロード・ウィザース少佐の行方と救出ですね?」
「そうよ」
「では急ぎ計画を練りましょう。その彼はかなり危機的なところまで追い込まれています。もしかしたらもう手遅れかもしれません」
「……っう! さっきの情報、私たちにも聞く権利、ありますよね?」
「もちろんです。ただ説明は一度で済ませたく、今、ほかの組織の者を呼んでいます。あなた方の事情を説明し、今回限りの共闘を提案します。構いませんね?」
「それで構わないわ。ただし、必ず頷かせて」
「当然です。一族の一部が暴走しているのですから。どちらかといえば我々は条件なしで、あなた方の条件を受け入れる形での共闘であるべきとボクは思っています」

※※※

 物音、足音、気配。
 それらが全く感じられないのは、どうやらシャールだけではないようだ。
 ただ、それをわかっているのはマックス(仮名)とアストレイ(仮名)のふたりだけということ。
「ずいぶんとお早いお集まりで」
 アストレイ(仮名)が言うと、どこからともなく別の声が響く。
「ことがことだからな」
「この事案は最優先と判断をした」
「これだから過激思想のやつらは厄介なんだ」
「基本、人間と群れるのは不本意でしかないが、致し方ないですね」
 声色は低かったり甲高かったり、心地いいトーンだったり。
 そして歳の感じも若そうであったりそうでなかったり。
 なぜ感覚でしか言えないのかといえば、シャールとライザ、そしてハンクには声意外で判断できる要素がなにひとつないからだった。
「申し訳ありませんね、人間の方々。こちらにも明かせない理由があるので、姿を明かさないことをご了承いただきたい」
 アストレイ(仮名)はとても紳士的かつ腰を低くしてこちら側に願い出ている。
「姿を見せない、名を明かせない。人間的ルールやマナーでいったら完全アウトだけど。でも、そちらの事情、というのにも理解を示せないほど狭い心は持ち合わせていないわ。代表として、マックス(仮名)とアストレイ(仮名)さんが表にたってくれると言うのなら。やはり顔も素性もわからない人を無条件で信用してというのは都合がよすぎるっていうのが私個人の感想と意見よ」
 だからこの判断でシャールやハンクを責めないでほしいと、ライザは付け加えた。
 それを聞いたアストレイ(仮名)は、
「当然の判断ですよ。これでも一応、人間の世界とはどういうところなのかくらいの調べはしています。とても不躾な態度をしているという自覚もあります。それでも……」
 人間の協力なしでは解決できないと思うから……と彼は言った。
「それではほぼ集まったようですので改めて議題を進めたいと思いますが、異論は?」
 アストレイ(仮名)の問いかけに意義はでない。
 むしろ無言でいると言った方がいい。
「無は肯定と判断いたします。円滑に進めるため、無は肯定、わずかでも引っかかるものがあれば言葉にして伝えること。みなさま、よろしいですね?」
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