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赦されざる者たちは霧の中に

原作: その他 (原作:かつて神だった獣たちへ) 作者: 十五穀米
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霧の扱い方

 同じ人間同士でさえほぼ理解はなかなか難しい。
 察するや理解しようと努力する程度でしかない。
 三人は難しい問題に直面したような表情を見せながら、マックス(仮名)の話に耳を傾け続けた。
「で、その使役は人であったり生き物であったり魔物であったり精霊であったり。まあ、個々の能力次第でなんでもありなんだけどね。あいつは植物を自在に操る、使役する能力を持っていた。普通、そういった能力を持っている者は攻撃的ではなくどちらかといえば一族の反映のためとか、なるべく人の血を吸わなくてもいい方法とかの研究に没頭するタイプなんだよね。血は鉄分だからさ、鉄の味のする果実の発明とか。でもあいつは違った。植物を兵器として使うんだ。あの蔦はなにが化けたものだと思う?」
「なにって……あれは密林の中にしか生殖しない植物だって。そう調査報告を受けているけど?」
 ライザがそういうと、
「そうなんだ。じゃあ、あれからさらになにか発展させたんだ、あいつは」
 と、マックス(仮名)は自問するようにいい、
「ああ、だからか。苦戦したのは……」
 と、納得したような言葉を口にした。
「ちょっと、こっちにもわかるように説明をして」とライザ。
「ああ、ごめんね。俺もさ、想定外続きでちょっと自分的納得がほしいんだよね。実はさ、元々はきみたちでいうところの豆っていうの? あれが化けたものだったんだよね。ええっと、豆類で背が伸びる系の」
「元は豆系……出現当時なら有力情報だけど、今となってはね。で、元々のそれは人を襲ったりとかもしたの? まあ密林じゃあ、人喰植物なんていうのも存在しているみたいだし。もうなにを聞いても驚かないわ。だから、遠慮しないで言っちゃって」
「いえ、あんな触手のようにうねうね動いたりはしてないですよ? ただ無駄に巨大化したり。で、そんなに巨大化させてなに得なんだって突っ込まれてましたから」
 マックス(仮名)はその時のことを思い出したのか、クスッと思いだし笑いをした。
 すぐに笑いは消え、真顔に戻る。
 スッ……と今までのチャラい雰囲気さえも消えていた。
「その時からいろいろと暗躍していたのかと思うと、悔しいですけどね。止められなかったというよりは気づいてやれなかったことに」
「それはあなたのせいではないと思います。マックス(仮名)さん」とシャール。
「そうよ。誰がなにを思っているのか。心の奥底まではわからないものでしょう?」とライザ。
「それをいうなら、俺も同じだ。ケインがなにを思いなにを企てていたかなんて、まったく考えもしなかったし予想もしていなかった。おまえはその者をどうしたいんだ? 話を聞いていると、ケインを追いかけたいというよりは、その者を追いかけているように思える。今なら間に合う。引き留めたい……そういうことか?」とハンク。
「そういえば、ヘンリエット曹長はケインに殺されかけたんでしたっけ?」
「……ああ」
「曹長は個人間。けれど俺の方は一族の派閥も関係しているんで、簡単には割り切れない」
「どういうこと?」とライザが聞き返す。
「先にも言いましたけど、一族の根底は同じ意識を持ちつつも、細かいところにいくと派閥問題に発展する。歯止め役的な人物はどの派閥にもいて、そいつらがあちらをたてこちらをたてと気を回しているおかげで、一族の中での争いは起きにくくなっている。だけど今回のことは……ケインの擬神兵としての能力は俺たち一族と酷似しずきているため、誰がそれの元となっているのかで疑心暗鬼になっているところがある。こんな時こそ一族を結束がとうたう者もいれば、それは手ぬるい、人間を滅ぼしてしまえばいいと過激になっている者もいてね。あいつはどちらかといえばそっち派だ。けど、人間を全滅とまでは思っていないと思いたい。汽車の乗客を手に掛けたのは申し訳ないという気持ちと、まだその程度でよかったという思いがある。それぞれの派閥からこちら、人間の世界に送り込んでいてね。どこがどう動いているのかはわからない。俺が接触できたのも片手で足りるくらいだからね」
「話をまとめると。
 1、一族は一枚岩ではない。
 2、ケインの擬神兵としての能力のオリジナルを探している。
 3、ケインを探している。
 4、ケインの件でこちら側には確認できないほどの者が紛れ込んでいる。
と、こんなところかしら?」
 ライザは自分の認識を確認するようにまとめた。
「そうだな。俺としては……あ、いや。俺を送り込んだ組織の考え方としては、
 1、無関係の人間を巻き込まない。
 2、情報は正確に、必ず裏をとる。
 3、人間に危害を加えている一族をとめる、そして人間側にたち守れ。
てな感じで、敵対する意志はない。ぶっちゃけると、うまくやっていきたいわけよ」
 マックス(仮名)がそういうと、シャールは小さく頷いた。
「わかりあえる、理解しあえる、私はそう思います。双方の落としどころは必ずあると思います」
「ああ、そうだね。やっぱいいね、お嬢さんは。ええっと、シャールちゃんって呼んでもいい?」
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