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ふたり暮らしはじめました

原作: ONE PIECE 作者: うさねこちゃ
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独占欲の強いおれは誰にもローを譲りたくねェ訳で

 ローと一緒に住み始めてから半月ほど。
 ゲイバーで働くローに合わせて、必然とおれの夕飯の時間も深夜帯に変わった。
 何故なら、ローの家事スキルは壊滅的で、料理などまともに出来ないもんだから、放っておけばコンビニ弁当やカップ麺で済ませようとするからだ。
 朝は簡単な朝食に、昼は夕飯の残り物を使ったおれの手作り弁当、夜は栄養バランスを考えた夕食。
 初めの内は小食過ぎていたローも、二週間毎日おれの飯を食っている内に、平均並みには食えるようになっていた。
 それに、青白くほんの少しコケていた頬も、今では健康的な色と張りを持っていて、何処からどう見ても健康体そのものだ。
「ごちそうさま。んまかった」
 ローはそう言って手を合わせる。
「はい。ごちそうさま」
 バイトがある日は毎日最終電車で帰ってくるローとの食後は、いつの間にか今日一日どんなことがあったのかを話すことが日課になっている。
 酒に強くないらしいローは客に勧められても、上手く躱して逃げているようだが、毎回そういう訳にはいかないらしい。
「何で手を握るのが好きなんだろうな?」
 ロー曰く、何故かやたらに手を握られることが多いのだそうだ。
 間違いから始めたバイトだけれど、マスターや店子がローの容姿に惚れたらしく〝酒を作る寡黙キャラ〟でいいからとローを雇ったらしい。
「綺麗な手をしてるからじゃねェか?」
 そう言いながら、おれもローの手を取って見せる。
 手が触れたときに一瞬ローがピクリと動いたが、そんなことは気にせずに指に指を絡めてやった。
「ほら、おれのゴツゴツした指とは全然違うし」
 下心に気づかれねェようにしつつ、色んな角度からローの手を見て楽しんだおれは、困ったような顔で動けないでいるローを見てクスッと笑う。
「おれもローがカクテルとか作ってくれたり、酒注いでくれる様子見たら、綺麗な指に触ってみたいって思うかもな」
 最後に短く切り整えられた爪に触れて、ローの手を離す。
 とは言うものの、ローに触れる客が居るってのは、あまりいい気がしねェ。
 業種柄仕方ねェことなのだろうが、スキの多いローのことだ、狙われていても気づいちゃいねェだろうし、迫られたら逃げることが出来ないんじゃねェかと心配になっちまう。
「おれは、コラさんの手のほうが好きだけどな。男らしいし」
 そう返すローの笑みは、まだあどけなさが残っている。
 おれとは違う意味での〝好き〟だろうに、その言葉があまりにも嬉しくて、思わず頭を撫でてしまった。
「可愛いなァ、ローは。ありがとうよ!」
「子供扱いすんなって……」
 恥ずかしがって、ほんの少し拗ねたような顔をしながらそっぽを向いたローは、本当に愛らしいと思う。
「ほら、後片付けしておくから、先に風呂入ってこい」
「あ、ああ。いつもありがとう」
 ローの後ろ姿を見送り、完全に姿が消えたところで深いため息をひとつ。
 たった半月、それだけの期間の同棲だってのに、ここまでローを好きになるとは思わなかった。
 だとすると、多分ロー目当てで通っているかもしれない客たちの中にも、本気でローに惚れる奴が居てもおかしくはないだろう。
「アイツ……、放っておいたら喰われるんじゃねェか?」
 如何せんローはスキが多い。
 そして嫌な予感ほど当たるってもんで――
「尻触られた……」
「あー……マジか……」
 ローの手に触れたあの日から更に一週間後、それなりにショックを受けているらしいセクハラ事件は、やはりロー目当ての客がやらかしてくれたようだ。
「尻触られるとか初めてで、どうしていいのか分かんなくて動けなかった……」
 コイツはアレだな。
 ローは咄嗟の行動ってのが出来ずに、その場で固まるタイプの人間のようだ。
いよいよローが誰かに喰われちまうんじゃねェかって焦りが湧き起こる。
 独占欲の塊のようになっているおれは、ローの尻が初めて誰かに触られたって事実に、異様にムカつき始めていた。
「ロー、あのよお……非常に言い難いことなんだが……」
 おれはそう言いつつローとの距離を縮め、肩を抱いてやる。
 身長差があるので、当然ローは困惑した様子でおれを見上げていた。
「お前、いざってとき、自分で身を守れんのか?」
「え、それってどういう……っ!!?」
 言葉の間にローの腰に手を滑らせて抱き、もう片手でローの尻を撫でる。
 それでもローは硬直するだけで、逃げることはしない。
「ほら、今だって逃げねェで……。このまま襲われたらどうするんだ?」
「なっ、でも……おれ、男だし……」
 だから大丈夫とでも言うのだろうか。
「あのなあ。ロー、お前、現に尻触られても抵抗出来なかったんだろ?」
「あ……。でも、お客だし……」
 男にしては形のいいローの尻は、ほどほどに弾力もあって、撫でるだけでも手が心地好さを覚える。
「客だからって、嫌なことされても嫌って言えねェようじゃ、お前、喰われちまうぞ」
 そう言って今度は手を揉む仕草に変えていく。
 ローは顔を真っ赤にしながらも、身を捩るだけでおれの腕の中から逃げる様子はない。
「そ、それは……困る……」
 おれを見上げていたローは、困ったように目を逸らしながら呟いた。
 その仕草がいちいち可愛いもんだから、おれはローの顎を持ち上げて間近で顔を見つめてニッコリと笑ってやる。
「で? 逃げねェの?」
「え、あ……。でも、コラさんだし――……っぅ!!?」
 おれだから逃げないって理由の意味は知らねェ。
 ただ、スキだらけで逃げることすらしないローの唇をキスで奪い、言い訳も抵抗も何もかも防いでやった。
 誰かに先を越されるくらいなら、先に奪ってやろうって思ったって訳だ。
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