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俺と彼女の退屈な日常

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第13話

「というわけで、コイツが五人目の部員だ。ほら、挨拶してくれ」
「仙堂院リアだ。苦しゅうないぞ! 楽にしろ!」
 放課後。俺と村上は、仙堂院を連れて部室へとやってきた。
 部室内には既に桐野と宮原と武田先生の姿があった。
 その三人に、仙堂院のことを紹介する。
 つか、こんなに早く部室に来るなんて、武田先生は暇なのか? 仕事しろ仕事。
「ふむ。よくやったな、真白」
「すごいね恭介くん! さすが!」
「真白君。こんな可愛い娘を連れてくるなんて、君はなんて素晴しいんだ! ああ! もう! 今ならきみの靴を舐めることを少しだけ考えても良いくらいだ!」
「……あ、やっぱり俺は褒められないんだね。知ってたけどさちくしょう!」
 三者三様、俺のことを褒めてくれる、横にいる村上は、拗ねて部室の一角で体育座りし始めた。
「よろしくね、リアちゃん♪ あたし、一年三組の宮原朱音だよ♪」
「私は一年二組の桐野紗奈だ。よろしく、仙堂院」
「二年の数学教諭、武田宗一郎です。是非僕の妹になってください! 義妹実妹なんでもいいです!」
 三人は、椅子から立ち上がって仙堂院に近づくと、それぞれが自己紹介をする。いや実妹は無理だろ。どうやるんだよ。
 宮原は俺のとき同様、右手を差し出し握手を求め、桐野は淡々と要点だけを告げて再びパイプ椅子に座る。武田先生は……うん、こいつ馬鹿だ。
「さて、これで部員、部室、顧問全てが揃ったな!」
 桐野が、みんなを見渡しながら言う。
 その視線はどこか温かみがあり、普段のこいつとは少し違った眼差しだった。
「後は生徒会に部室申請書を提出して許可をもらえれば、それで部活として成立する。ついにここまで着たか」
「問題は、その申請書が通るかってことだな……」
 ぶっちゃけた話、『非日常を求める部活』なんてものを、生徒会、つまりは学校側が認めるとはあまり思えない。
 これがラノベとかだったらすんなりいくんだろうけど、残念ながらこれは現実なのよね。
「まあ、そこは私に任せておいてくれ。悪いようにはしないさ」
 自信満々に答える桐野。
「大丈夫なのか? そんな自信満々に」
「ああ。うまいことやってみせるさ」
 くちもとだけで微笑みながら、桐野は胸を張り自信満々にそう答えた。
「だがな、一つだけ決めなければならないことがある」
 言って桐野はこちらに視線を向けた。
「決めなきゃいけないこと? なんのことだ?」
「部長さ。この部活の部長」
「……そういえば、決めてないな。忘れてた」
 確かに、部活動である以上、部長は決めなくてはいけないだろう。
 俺は、誰が部長に相応しいか、ここにいる武田先生以外の面子を順に見ていく。
 村上は論外として、仙堂院もちょっとアレだし、宮原もどこか抜けているところがある気がする。
 となると、やっぱり桐野が適任だろう。
「そうだな、桐野がいいんじゃないか?」
「……私か? そうか?」
「うん、あたしもそう思うな。紗奈なら無問題(もーまんたい)だよ」
「……よくわからんが、ワタシは誰が部長になろうと、どうでもいい。興味もない」
「……この空気じゃ、オレが部長やるって言えねえなぁ、言えねえよ。いや言いたいけどね! 言わせてくれよ! だが断る!」
 なんだこいつ。うるさい。
「そういうわけで、オレも紗奈ちゃんがいいと思うぜ! 紗奈ちゃんに清き一票を投じよう! 受け取れぃいいいいい!」
「紗奈ちゃん言うな、気色悪い。殴るぞ」
「おっふぉう!? この流れに乗じて桐野のことを名前で呼ぼうとした俺の作戦を看破された!? なんという観察眼の持ち主だ!?」
 なんというバレバレの作戦なんだ。ダメダメ軍師だな。
 そんな村上はおいておき、さっきから黙っていた武田先生に目をやる。何か考える仕草をしていた先生だったが、しばらくして口を開いた。
「……うん、顧問の立場から言っても、桐野君で問題ないと思うよ。頭もいいし、人をまとめる能力にも、なかなか長けているようだしね。さすが優等生さんだ」
 にこやかに笑う武田先生。こういうときは講師っぽいなぁと思う。
「満場一致で、桐野に部長をやってもらいたいみたいだけど……どうする?」
「うっ……ううむ」
 少し照れた様子を見せた後、桐野は目を閉じて腕を組み、何かを考えた後、顔を上げ、みんなに告げる。
「……わかった。あまり人の上に立つのは好きじゃないんだが、仕方ない」
 しぶしぶといった様子で、部長になることを引き受けた桐野。
 その後、桐野は申請書に必要事項を記入して、それを生徒会に持っていった。
 俺たちは、「今日はこれで終了だ。皆、帰っていいぞ」と言い残した桐野を、ちゃんと部室で待ち(といっても武田先生は帰ったが)五人で帰宅した。
 なんにしても、これでようやく非日常を探せるわけだ。
 夜。寝るために布団に入った俺は、少しばかり明日の放課後が来ることを心待ちにしていた。
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