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俺と彼女の退屈な日常

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
目次

第8話

第二章
    ~リアは友達が少ない~

 放課後。俺は五人目の部員を探して校内中を歩きまわっていた。
 なぜか、今回は村上が「別行動じゃなく、一緒に探そうぜ!」と言ってきたため、村上は俺の隣にいる。
「さあて、オレの未来の彼女はどこにいるのかな?」
「いないんじゃないか? この世のどこにも」
「なるほど。これから生まれてくると?」
「いいや、生まれてこない」
「……それって、オレは一生童貞ってことですかね?」
「だろうな」
「泣くぞっ!?」
「泣けば?」
「うぅ……ち、ちくしょ―――――――――――――――――――――――――――っ!」
 はい、泣きました。
「うるせえよ! 泣くな!」
「お前が泣けって言ったんだろ!」
「はいはい」
「……オレ、ホントにメンタル丈夫だよな。凄いよな。……まあいい。んで、五人目はどうするよ?」
「ああ。どうするかな……」
「とりあえず美少女ってのは決定だけどよ。んでも、校内で有名な美少女たちは、二、三年を含めて、みんななにかしらの部活に入ってたりするんだよな……」
 良く調べたな。さすがは村上だ。
「つーことはだ、まだチャンスがあるのは校内で有名になってない美少女ってことになるんだけどよ」
「いるのか? そんなやつ」
「わかんね。オレも、入学してから今日までの時間は、美人の先輩達のことを重点的にスト――もとい調査してたからな」
 ツッコまん。俺は絶対ツッコまんぞ!
「可能性があるのは一年生ってことになるんだけどよ、それでも、男子から人気がある女子は、全員が他の部活に入ってたりすっからなぁ……」
「ふぅむ……」
 そうなると、村上の言う美少女を勧誘するのはほとんど無理だろう。
「……五人目は男子にするか」
「それはアカン! 絶対にだ!」
「でも、お前の言うことを信じるなら、お前が望む美少女を勧誘するのは難しいだろ?」
「それでも、だ! お前は桐野と朱音ちゃんがいるからいいけどよ、オレにはいないんだぞ! 恋人候補が!」
「正直、どうでもいい」
「おまっ!? もしお前がオレの立場だったら、絶対にオレと同じこと言うからなっ!」
「言わねえよ」
「なら想像してみろよ。もしも部活中ずっと、オレが桐野と朱音ちゃんとまだ見ぬ五人目の美少女といちゃいちゃしてて、お前は一人でそれを眺めているとしたらどうなるか。死にたくなるぜ?」
「…………」
 その光景を想像してみる。…………。…………。……うん。想像の中の俺は、一人で泣いていた。
「……悪かった、村上。すごく憂鬱な気分になったわ」
「だろ? さあ、オレたちの部活に入ってくれる美少女を探そうぜ!」
「……ああ」

 それから、俺たちは五人目の部員を探して校内中を歩き回ったわけだが……。

「……見つからねえな」
 人がいそうなところをある程度見回ったが、俺たちの部活に入ってくれるような美少女は一人も見つからなかった。
 というよりも、村上の美少女チェックが厳しいのだ。俺が、かなり高レベルな女生徒を指して、
「あの娘は?」
 と村上に訊ねると、返ってくるのは決まって、
「まだまだだね……」
 という台詞。
 村上に彼女ができない理由は、理想が高すぎるからなんじゃないだろうか?
「まあ慌てるなよ恭介。美女は寝て待て、って言うだろ?」
 聞いたことないけどな。
「だから、今日は探すの諦めようぜ。そういえば、桐野が部室と顧問は今日中に方がつくって言ってだろ? そっちを見に行こうぜ」
「……そうだな、そうすっか」
「うし、ならこのチャンスを生かして、さっそくゲットした朱音ちゃんの電話番号に電話をかけるぜ!」
 そう高らかに宣言して、村上は取り出した携帯で宮原に電話をかけた。
「…………」
 だが、いっこうに宮原が電話に出た気配はない。十数秒ほど経ったところで、村上も諦め、嘆息しながら携帯をポケットにしまう。
「朱音ちゃん、出なかった……」
 がっくりと肩を落としながら言う村上。
「忙しくて気付かなかっただけじゃないか? 気付いたらすぐにかけなおしてくれるだろ?」
「そ、そうだよな! うん、そうに決まってる!」
 俺がフォローをいれると、途端に元気を取り戻す村上。相変わらず現金なやつ。
 と、そんな村上に呆れていると、制服の上着の内ポケットに入れていた、俺の携帯電話が小刻みに震えだす。
 確認すると、そのバイブレーションは着信を知らせるものだった。
 画面には『宮原朱音』の文字。
「…………」
 一度村上に視線をやった後、電話に出る。
『やっほー恭介くん♪』
「おう、どした?」
『ん? いや、村上くんから電話があったから、なにかな? と思って』
「……なら村上に電話しろよ」
『いやぁ~……ねぇ?』
 村上には電話したくない、ということだろうか?
『あはは、冗談だよ~……半分くらい。それで、用事ってなんだったのかな?』
「ああ、そっちは順調かな、と思ってさ」
『うん♪ 顧問は確保したよ♪ 部室の方も、紗奈が頑張ってるおかげで、もうすぐ――あ、帰ってきた』
 電話の向こうで、宮原と誰か、おそらく桐野が話しているのが聞こえてくる。
「なあ、恭介。その電話、誰からだ?」
 それを見計らってか、今までおとなしくしていた村上が話しかけてくる。
「ああ、宮原から」
「がーんっ!? う、うぅ……」
 ショックを受けた後、その場に座り込む村上。
「どうせオレなんか……」
 と、柱の陰で体育座りをしながらリピート再生する村上は、もうどうしようもないくらい、イラッとした。
『きょーすけくーん! 聞こえるー?』
「あ、悪い。なんだ?」
 携帯の受話口から、再び宮原の声が聞こえる。
『うん。とりあえず、紗奈に一回代わるから。詳しいことは紗奈に聞いてね?』
 そう言って、しばらくした後、
『もしもし』
 今度は、受話口から桐野の声が聞こえてくる。
「おう。どうだ? 部室と顧問は?」
『うむ。先ほど方がついたところだ。部室と顧問は、無事確保した』
「ほんとか?」
『ああ。とりあえず、一度集まらないか? どうせ五人目の部員は見つかってないんだろう?』
「集まるのはいいけど……なんで見つかってないってわかったんだ?」
『馬鹿の性格を考慮した結果だ。どうせ、『五人目は美少女、これ決定!』とか言っているのだろう? それに、こんな中途半端な時期に部活に入ろうと思う人間なんて、余程の変り者だろうからな。そんな変り者、校内には宮原一人ぐらいしかいないはずだ』
 桐野の後ろで、宮原が『ひっどーい! あたしは変り者じゃないもん!』と叫んでいるのが聞こえてくる。
「まあ、お前の考えは正解だよ」
『うむ。もっと褒め称えてもいいんだぞ?』
「遠慮しとく」
『そうか? それは残念だ。なら、馬鹿を連れて旧校舎に来てくれ。三階の一番奥の部屋だ。そこが、私たちの部室となる』
「旧校舎の、三階だな?」
『うむ。では、待っているぞ』
「了解。そんじゃな」
『ああ。また後で』
 電話を切って、それをポケットにしまった後、未だに体育座りをしている村上に声をかける。
「ほれ、さっさと立て」
「……しくしく。もうやめて、オレのライフはもうゼロよ……」
「オーバーキル上等」
「あんたは鬼かっ!」
「はいはい。さっさと行くぞ」
 いつまで経っても立ち上がらない村上の首根っこを掴んで、引きずりながら旧校舎を目指して歩き出す。
 と、そんな時。再び俺の携帯がブルブルと振動し始めた。確認すると、今度は桐野からの着信。
「もしもし?」
『真白、頼みがあるんだ』
「頼み?」
『喉が渇いた。飲み物を頼む』
「……そういうのは村上に頼んでくれよ」
『馬鹿に頼むと、睡眠薬やら媚薬やら、怪しい薬を混入されそうだからな』
「…………」
 村上は、桐野にどんな奴だと思われているのだろうか?
 それに、今さらだけど、あいつのあだ名は『馬鹿』で決定なんだろうか?
 今回に限っては、さすがに村上に同情してもいい気がしてきた。
『そういうわけで、頼んだぞ真白。ああ、ちなみに私は緑茶で、宮原は中庭の自販機に売っている紅茶、それからコーラを一つ頼む』
「ん? ああ、わかったけど」
 コーラは一体誰のだろうか?
『それではな』
 その言葉を最後に、桐野からの通話が切れる。
 俺は仕方ないな、と嘆息した後、村上をその場に放置して、飲み物を買いに中庭へと向かった。
「ってちょっと待って恭介! オレはどうすればいいんだよ!」
 知らない。
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