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俺と彼女の退屈な日常

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第6話

「ほい。あたしからのプレゼントだよ♪」
「おう、サンキュ」
 美少女から手渡されたペットボトルの烏龍茶(何故か俺の要望は聞かれなかった)の蓋を開け、それを喉に流し込む。
「さてさて。じつは君に聞きたいことがあったのですよ」
 美少女は、先ほど自販機で買ったトマトジュースを飲み、「……不味いよぉ~」と瞳に少し涙を浮かべた後、俺の方を向いてそう言った。
「聞きたいこと?」
「うん」
「なんだ?」
「うん、まぁ……その……」
 なかなかに口を開かない美少女。
 まさか、
『君に、好きな人はいますか?』
とか、
『実は……一目惚れしました! 付き合ってください!』
 とか言うのじゃなかろうか?
 そうなった場合、俺はどうしよう。
 たしかにこの娘は可愛いけど、まだ出会って間もないし、俺はこの娘のことをなにも知らない。なら、付き合うのは早計じゃないか?
 いや、でも――
「……桐野紗奈とは、どういった関係なのかな?」
 そんな俺の妄想を打ち砕くかのように、美少女は、そう言った。
 ……はい?
 あ、そうか。最近桐野と仲がいいように見えるから、勘違いしたのかな?
「桐野? 友達ってことになるのかな?」
「と、友達ですかっ!?」
 俺がそう答えると、彼女は異様なまでに驚いていた。
「え、えっと……友達で間違いないと思うけど」
 たしかに、知り合って間もないが、一応同じ志を持つ者同士だし。まあ、友達、あるいは同志、と言っても嘘ではないだろう。
「そか……よかった……。やっと、紗奈にも友達が……」
「? どうかした?」
「ううん。少し驚いただけだよ」
 そこまで驚くようなことだっただろうか?
「とにかく、ありがとう! あの……名前を聞いても、いいかな?」
「お、おう。一年五組の真白恭介だ」
「真白くん……ううん、恭介くんだね。あたしは、一年三組の宮原朱音(みやはらあかね)。朱音でいいよ?」
 言って、宮原が右手を差し出してくる。俺が疑問顔をしていると、
「握手だよ。仲良くなるには、握手するのが一番だから♪」
 にっこりと笑顔を浮かべ、宮原はそう答える。
 その笑顔に少し胸をときめかせながら、俺は握手に応えた。
「はい♪ これであたしたちは友達、だよ」
「お、おう」
 やばい、可愛い!
「ところで、さっき四階で誰かを探してたみたいだけど」
「ああ、実は」
 俺は、新しく部活動を作ること、作るためには色々と必要なものがあること、などを宮原に話す。
 すると、
「う~ん……その部活って、紗奈も入ってるんだよね?」
「ああ」
「そういうことなら、あたしも部員になってあげるよ」
 なんとも嬉しいことを言ってくれた。



「宮原朱音です。よっろしく!」
 時は流れて翌日の昼休み。
 俺たちの作る新しい部活に入部することを了承してくれた宮原を、他の二人と合わせていた。
「おっふぉう!」
「…………」
 そんな宮原の姿を見て、村上は発狂、桐野は無言という、それぞれ違った反応を見せる。
「恭介、グッジョブ!」
 爽やかな笑顔を浮かべてサムズアップしてくる村上。
 そんな村上に、とりあえず右手の中指だけを立てて返事をする。すると、村上はなぜかショックを受けていた。
「……おい、真白。何故よりにもよってコイツなんだ」
 片や桐野は、露骨に嫌そうな表情をしながら俺にそう訊ねてくる。
「駄目なのか?」
「……私は、コイツが苦手なんだ」
「何で――」
「さぁ――――なぁ――――っ!!」
「きゃっ!?」
 突然、俺の言葉を遮って、宮原が桐野に思いっきり抱きついた。
 どうでもいいが、桐野から出た悲鳴が予想よりも可愛かったことに驚いた。
「さな紗奈さぁなぁ~♪」
「ええい! くっつくな! 暑苦しい!」
 抱きつき、頬をすり寄せる宮原と、それから逃れようと暴れる桐野。
「うっひょ――――――ぉいっ! 女の子同士の絡みキタ――――っ!! ぶふぉ! 鼻血が……」
 隣では、村上が興奮して鼻血を噴出していた。
 なんだろうか、この光景は。
「もう、紗奈ったら。こんなおもしろそうなことしてるんだったら、親友のあたしにくらい教えてくれてもよかったのに~」
「誰が親友かっ!」
「ん? あたしと、紗奈が」
「お前が勝手に言ってるだけだろう!」
「またまたぁ~そんなこと言っちゃって~。照れてるのかな?」
「照れてないっ! さっさと離れろ!」
「んふふ~♪ またまたぁ~ご冗談を~」
「はぁーなぁーせぇー!」
 じゃれ合う桐野と宮原に、鼻の穴に先を丸めたティッシュを詰めては、二人を見てまた鼻血を噴出す村上。
 そんな光景を、俺は十数分の間、ただ傍観していた。
「まったく……」
 ようやく宮原を引き剥がした桐野は、ふう、と安堵のため息を漏らした。
「まあ、こんな奴でも、いないよりはましだろう。さて真白、五人目は?」
そう尋ねると、村上はバツの悪そうな顔をした。
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