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ずっとずっと

原作: その他 (原作:ハイキュー) 作者: ノムさん
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第1話

Side 岩泉

牛島若利。及川の宿敵。
何度も何度も、俺たちは牛島に挑戦して、その度に倒されてきた。
中学3年の時に、最後の戦いが終わった。高校を選ぶ段階で、及川は牛島から勧誘を受けているようだった。同じ高校に来て、俺にトスを上げろ、とそう言っているようだった。確かに、どう考えても及川は牛島と組むべきだろう。白鳥沢高校に行って。強いアタッカーと強いセッターで、当然のように全国大会に進み、そして及川は輝かしい未来を掴む。
それでいいと思っていた。いや、「それが」いいと。

だけど、及川は青葉城西を・・・・俺を、選んでくれた。正直言ってめちゃくちゃ嬉しかった。誰がどう考えたって、白鳥沢に行ったほうが及川のためになる。なのに、「王者」ではなく、それでもまだ俺と「挑戦する側」でいることを選んでくれたこと。ここで俺たちは、今度こそ、この3年を使って「選ばれし者たち(天才)」を倒し、勝者の旗を掴むことを誓った。

「絶対勝とうな」
「うん。もちろんだよ、岩ちゃん」
「「今度こそ」」

二人で誓って、四人になって、そして青葉城西というチームになった。今やもう、何十人もの仲間と一緒に、俺たちは夢を追っている。だけど、及川の隣は俺で、相棒も俺だけだ。どれだけ仲間が増えたって、それだけは譲れない。

side 花巻

ぶっちゃけ異常だと思った。岩泉と及川ーーーというよりも、岩泉が。最初は及川から岩泉への態度が普通じゃないなって思ったんだ。いつもベタベタしてるし、とにかく岩泉のこと大好きかよ!幼なじみといえど!みたいな感じ。でも、そうじゃないって気づいた。及川は「岩泉の愛に応えてる」だけなんだって。
実のところ岩泉が及川のことを異常なほど愛していてーーー、及川はそんな岩泉に応えている。そう、それが真相。少なくとも俺はそう思ってるし、多分松川も気付いてるんじゃないかな。
この前なんて、俺と及川と岩泉の3人で帰ってて、その時は松川はいなかったんだけど。ベタつくのなんの。俺のこと忘れてんのか?ってくらい。最初は3人で話してたんだけど、いつの間にか2人の世界を作ってた。気まずいレベル。ほんとに。いやー、あれはやばかったね。

side 松川
及川と岩泉?あー・・・、ちょっと距離近いよね。確かに。花巻も気付いてる見たいだったけど。
まー、でも仲間がそういう意味で付き合ってようが俺は気にしないよ。てか、実のところ、隠してるだけで付き合ってるんだと思ってたよ。及川の周囲への威嚇やばいし。
この前昼休みに岩泉のところに行ったんだけど、あいつ及川がくるまでずーっと入り口をチラチラみんのな。どんだけだよ!って。で、及川が来たらツンツンするし。いない時はずっと気にしてるのにさ。でもさっきも言ったけど、俺は二人が付き合ってても気にしないから。けどまあ、これは内緒ね。

side 及川

「いーわちゃん、帰ろ」

中学生の頃と違い、ある程度の自制を覚えた俺は、夜遅くまでオーバーワークをし続ける事はなくなった。だから、こうやってちゃんと岩ちゃんに自分から帰ろうと声をかけるし、心配をかけないようにちゃんと毎晩のようにメールもする。というか、そうじゃないと岩ちゃんがうるさいから。これが異常な事は知ってる。周りの幼なじみはこんな事してないし、岩ちゃんがおかん気質な事を踏まえても少しおかしい。マッキーとまっつんにも言われた。
けど、それもまあいいかなって思う。だってこうしないと岩ちゃんとの絆は切れる気がするから。
だから今日も、「おやすみ」とメッセージを送る。すぐについた既読と、同じ文章だけ書かれた返信に、これは意味があるのかな、と思う事は口に出さない。それに、岩ちゃんの部屋から俺の部屋の電気がついてるかも見れるのに。
でもまあ、こうして俺がメッセージを送ってるだけで岩ちゃんの気持ちが晴れるのなら、それでいい。それでいい、と思うんだ。
大概俺も岩ちゃんへの愛が強いからさ。

side 岩泉

今日も今日とて及川からの就寝を知らせるメッセージがスマートフォンを鳴らす。「おやすみ」とだけ書かれた簡素なメッセージに踊る心をなだめて、それに返信して、そのまま窓の外に視線をずらす。及川の部屋は真っ暗だ。
23:47就寝。大体いつも通りのスケジュールだ。及川がオーバーワークしていたことを知ってる俺は、少し過保護になってる。その自覚はある。踊る心の正体はまだわからないけど。
一日中会話してて、登校から下校まで一緒。その後も俺が及川の部屋に行くか、俺の部屋に及川が来るか。それだけずっと一緒だ。でも、俺はそれでも足りない。もっとずっと及川と一緒にいたいと思ってる。実際には何も話してないで、各々好きなことをしてるだけ。たまーにバレーの話をしたり、花巻がどうだ松川がどうだ、というような話をしているだけ。
俺は、【及川徹について】と書かれたメモ帳に今日の就寝時間を追加してスマートフォンを閉じ、そのまま暗闇へと落ちていった。
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