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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第四十四話 回想、これからのこと(一)

ツールーズ城に春がやって来た。もうすぐ16歳の誕生日を迎えようとしていたタビーは、アルが大学から帰って来たばかりのところを捕まえた。
「アル、バスコニア国王の養子になる話しが出てるって聞いたけど…」
アルはタビーにちょっと笑ってみせてから言った。
「よく知ってるね」
去年の春から、アルの日常はとても忙しくなっていた。それまでは、一つ年下のタビーやマリウスと一緒にゆったりとした学習カリキュラムで伸び伸びと学んでいたが、今は大学に通っている。大学の授業は厳しいらしく、タビーとマリウスがアルとゆっくり話しをすることは少なくなってしまっていた。
今年からは二人もアルと同じ大学に進学することになっている。だからと言って、以前のように3人がいつも一緒にいられるかどうかは分からないが。
アルの笑顔を見て、タビーは恐る恐る訊ねた。
「どうするの…?断るでしょう?」
しかし、アルは優しくこう答えた。
「受けようと思ってる。伯父は良い人だし、バスコニア王国もいいところだし…」
タビーは何も言えなかった。泣きそうになるのを必死でこらえた。
「オクタビア、泣かないで。君を泣かせたのをマリウスに見つかったら、僕は殺されてしまうよ」
アルは冗談めかして笑わせようとしたが、とうとうタビーの目から涙がこぼれ落ちた。
タビーとマリウスは数週間前から恋人同士になっていた。誰にも話していなかったが、アルは気付いていたらしい。
アルは妹に語りかけるようにタビーに話した。
「養子に行くと言っても、今すぐという訳じゃない。何年か先の話しさ」
しかし、それからわずか1年半後に、アルはバスコニア王国に行ってしまった。
引き止めるのは我が儘で残酷なことだと周りから言われた。淋しいと思うのは子供っぽい感傷かもしれないと自分で思った。
アルからはっきりとした好意を示されたことがある訳ではなかった。それに、マリウスと結ばれることはタビー自身も望んだことだった。
しかし、婚約を発表した時も、結婚式を挙げた時も、胸のどこかに穴が開いているような感じがした。

マリウスとタビーの結婚式の一か月前…。
バスコニア王国にやって来たガスケーニュ王国の使者が、ドナリス公アルに謁見を求めた。アルは故郷からの使者の訪問を喜んだ。
謁見に来たのは当時の侍女長だった。この年配の侍女長にはアルも子供の頃から世話になっていたので、親密にいろいろなことを語り合えると思っていたのだが…。
「マリウス様とオクタビア様の結婚式を欠席していただきたいのです」
侍女長は申し訳なさそうにアルに言った。
「理由は?」
アルの問いに、侍女長はすぐには答えなかった。
式が近づくにつれ、タビーは神経質になってふさぎ込むようになっていた。ただ、侍女長はもっと以前からタビーの変化に気付いていた。ちょうどアルがバスコニア王国に行くことが内々で決まった辺りからだった。
マリウスとタビーの結婚がこんなに早く決まったのは、本人達…とりわけタビーの希望が強かったからだと聞いている。だがもしかしたら、タビーはアルが遠くに行ってしまう淋しさから、やけになっていたのではないか。
このような不安定な時にタビーとアルを会わせたら、何かが起らないとは限らない。これが侍女長の考えだった。
彼女の心配事はもうひとつあった。それは、当時ガスケーニュ国内に溢れかえっていた3人に関するゴシップである。
陰湿で意地の悪い噂話が宮廷にまで聞こえてきており、もうすぐ華やかな結婚式が行われるというのに、宮廷内には重苦しい空気が流れていた。
ゴシップをこれ以上勢いづかせないため、それに新たなゴシップを生み出さないためには、アルには申し訳ないが、アルが二人の元に来るのを阻止するしかない。これはあくまでも彼女の独断だった。
「何卒…。お二人のためでございます。これ以上はご容赦くださいまし…」
侍女長はアルに頭を下げた。
アルは言う通りにした。留学を理由に二人の結婚式に欠席し、遠くから祝いの言葉と花を贈った。

ローはすぐにヴァレリーの体と首をポンとくっ付けた。
「普通にこうやりゃ、それでくっ付くんだぜ」と、アルに向かってブツブツ言っていたが、それはしょうがないと言うものだろう。
ガヤガヤと大勢の人間が、焼け跡になったヴァレリー邸にやって来た。警察と消防だった。
消防車は、木製の荷台に水を入れた大きな樽を積んで、ポンプ付きのホースを繋いだものだった。これが30台以上やって来た。火事の規模が大きかったので、近隣にある消防車を全てかき集めて来たのだった。
警察もたくさんの人数がやって来た。実は、初めに二人が駆け付けたのだが、屋敷の周りを10人以上の賊が取り囲んでいたので、応援を大勢集めて来たのだった。
気を失って倒れている盗賊達は全てお縄になった。逃げた者も、男達の中の誰かが口を割れば捕まるだろう。
警察官の一人が、タビーが侍女の制服を着ていることに気付いた。
「あなたはツールーズ城の侍女ですか?侍女がなぜここに?」
これにはアルが対応した。アルは自分がバスコニア王国のドナリス公であることを明かし、この場を仕切った。
「侍女とこちらの青年はちょっと理由があって…。二人はツールーズ城に送ってやって下さい。城には私から連絡を入れましょう」
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