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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第四十話 襲撃(三)

ローとゾロとアルは、ヴァレリーを先頭にして道案内をさせながら、馬を並足で走らせていた。
タビーとマリウスが無事でいるという連絡が入ってから、3人はやや上の空のような状態だった。決してのんびりと馬を駆っていた訳ではないが、3人共それぞれに、早く二人に会いたいような、でも会うのが怖いような、複雑な思いを胸に秘めていたのだった。
しかし、突然ローが声をあげた。
「おい、聞こえたか?」
「ああ」
「え?何が?」
ゾロにも聞こえたらしいが、アルは聞こえなかったようだ。4人は馬を止めた。
「まただ」
「爆発音だな」
「僕には何も聞こえなかったけど…」
常人よりも、日頃から鍛錬を積んでいる二人のほうが、こういう感覚は鋭いのかもしれない。
「おい、急ぐぞ」
しかし、ヴァレリーが不都合を主張した。
「駄目だ。馬の足の調子が良くない」
「あ?」「何?」
「並足なら大丈夫だが、走らせることは出来なさそうだ。なんなら俺抜きで行ってく…」
ヴァレリーは言いたいことを最後まで言うことはできなかった。ローがルームを発動し、無言でヴァレリーの首を切り落とした。
「うわ~っ!!な、なんてことを!…えっ?!」
アルが一瞬パニックになったが、ローは宙を舞ったヴァレリーの生首を左手で引っつかむと、アルのほうに首の切り口を向けて突き出した。切り口からは一滴の血も流れていなかった。
「馬が走れねえんじゃ誰かの馬に乗せてもらうしかねえが、大の男が1頭に2人乗るのはキツイだろうからさ…」
ゾロが言った。
「言っただろ。こいつに切られても死にゃしねえ」
ヴァレリーの生首が騒いだ。
「お前らっ、俺に一体何をしたんだっ?」
「うわあ…」
アルはその様子を見てたじろいだ。ローとゾロが、アルにこう言って馬の腹を蹴った。
「俺達はこいつの首に案内させて先に行く。あんたはどうする?」
「ゆっくり来るなら、そいつの体と馬を頼む」
「どうするって…」
アルはふたつの選択肢を突き付けられて呆然とした。
「か、体と馬を放っておく訳には…。ど、どうしよう…」
アルはヴァレリーの体を乗せた馬の手綱を捕まえた。こうやって自分の馬と並ばせて走らせるしかない。ヴァレリーの体は、美しい姿勢を保ったまま馬にまたがっている。
「僕も急がないと…。でも、これじゃ…」
ヴァレリーの馬は足が悪いらしいし、何より、馬を早く走らせたらヴァレリーの体が落ちてしまいそうだった。
「こんな感じでゆっくり行くしかないんだろうか…」
ローとゾロは先に行ってしまった。アルは困り果てながら二人の後を追った。


やけになった男が投げた爆弾は、ヴァレリー邸の屋上の隅の辺りに届いた。次の瞬間、爆音と共に大きな炎が燃え上がった。

バンッ!ボワッ!!

爆発の衝撃はさほど大きくなかったが、燃え上がる炎の勢いは凄まじかった。さっきの爆弾とは種類が違うようだった。
「ああっ!」
「おいっ、この火じゃ警察や消防に気付かれるぞ!」
しかし、爆弾を投げた男はこれらの抗議には全く耳を貸さず、大声で自分の考えを主張した。
「屋敷に火を付けるんなら、初めから徹底的にやりゃあ良かったんだ!ちんたらやってたらマジでやり損ねるぞっ!」
そして、懐からもう一つ爆弾を取り出すと、また屋上に向けて放り上げた。

バン!ボワァッ!!

また屋上で激しい炎が上がった。
「あ~あ、こりゃ手に負えねえぞ…」
「だが、確かに正しい部分もある」
この男に同調した一部が、火のついた矢を屋敷の屋上に向かって放ち始めた。比較的冷静な者は、遠巻きに見ながら他人事のように見物していた。
「ほほう、他の奴らもああいう武器を用意してたらしいな」
「もう統制が取れねえぜ」
その時、屋上の初めに爆弾が投げ込まれた辺りに、炎以外の光が見えた。
「何だあれは…」
暴漢達は息をのんだ。石造りの屋敷の屋上の角の部分に、ビームで斜めに切り目が入れられたのが、地上からでも確認できた。そして、切り取られた部分がゆっくりとずれたかと思うと、もの凄い勢いで地上に落ちてきた。
「逃げろ!」
「うわああ~~!」

ダダ~ン!ドシャ!ガラガラ…

切り取られた屋上の角が、凄まじい音を立てて地面に落下して割れた。悪魔の実の能力者は、1個目の爆弾のせいで火が付いた部分を切り取ったらしい。落ちてきたぶ厚い石材の表面は、いまだに真っ黒い煙を上げながら燃え続けていた。
火矢等で攻撃を加えていた連中は、これでも手を緩めなかった。
「ちくしょうっ!」
「さっきの爆弾はもうねえのかっ?!」
どこかから拾ってきた棒きれに火を付けて、屋上や屋敷の中に向かって投げ込む者もいた。
屋敷の中で燃えている火は、時間とともに勢いを増している。いつ屋敷全体が炎に包まれてもおかしくない。

「おのれ~、まだ来るか!」
屋上ではタビーが物凄い形相で怒りをあらわにしていた。
燃えている屋上の角をビームで切断して落としたが、火矢はまだうち込まれてきていた。時々、火が付いた棒きれや、石なども飛んでくる。これらは爆弾より格段に威力は小さかったが、やはり危険であることには変わりなかった。
「オ、オクタビア、こっちに戻るんだ!」
マリウスと二人の使用人が、屋上の真ん中に無防備に立つタビーに必死で呼びかけていた。
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