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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第三十五話 モラン邸にて

二人のただならぬ様子に、タビーとマリウスは思わず息を飲んだ。
「とうとう、出家なさってしまいました…」
「しかも、とても遠くの寺院に、お一人だけで…」
タビーとマリウスは胸をなでおろしたが、二人の使用人はよよよと泣き崩れた。
「英断だったのかもしれません。あれ以上借金が増える前に店を畳んで…」
「よほど心がお疲れになったのでしょう…。モラン様は今もその寺院にいらっしゃいます」
「でも、数か月前にこのようなものが…」
フロリモンが一冊の本を出してきた。
“チョコレート店経営から一転して僧侶へ ~地位と名声よりも心の安寧を選んだ男の物語~”
「…」
「それからこのようなパンフレットも…」
カントーもガサガサと何やら出してきた。
“辺境の有名寺院に伝わる処方で作られたスーパードリンク(チョコレート味)が今ならお手頃価格!!購入者からの感動の声がぞくぞく!!「薄毛が治りました」「体の底から力が湧いてきます」”
「……モラン様はかなり回復されたようですね…」
マリウスが感想を述べると、フロリモンとカントーは嬉しそうに言った。
「はい、このような便りが届くようになって、私共も安心しました」
タビーはためらいながらも、質問せずにいられなかった。
「…お二人は、これを買ったんですか?」
「まさか!もしも私達が注文書を送ったりなぞしたら、モラン様はそれの10倍の量を、請求書を付けずに送ってくださるに決まっています!」
「この本はモラン様のほうから送ってくださったサイン本です!」
「そ、そうですか…すみません」
モランもこの二人の使用人も、なかなか強烈な人物のようである。

さっきマリウスとタビーが思いっきり泣いて、その涙が乾いた頃に、フロリモンが客間に入ってきた。
フロリモンは二人が一緒にいるのを見ても驚きもせず、「何か御用はございませんか」と声をかけた。
これにマリウスがしっかりした声で答えた。
「今から電伝虫でツールーズ城に連絡を取ります。この人を城に送っていかないと…私もその時に一緒に帰ります」
どうやらタビーとマリウスは“ツールーズ城の侍女と知り合いの青年貴族か何か”という設定のようである。
「それでは、私はしばらく下がっていましょう。後でお茶をお持ちいたします」
フロリモンはこう言って下がった。しかし、マリウスはポケットに入っているはずの電伝虫をなくしてしまっていた。
「あれ?電伝虫がない…落としたのかな?オクタビアの電伝虫はある?」
「持ってきてないわ。急いでたから」
「参ったな…この屋敷に電伝虫があればいいんだけど…」
タビーはこの屋敷に来た時に抱いた疑問を口に出した。
「今のうちに訊いておきたいんだけど、ここは私達が知ってるヴァレリー様のお屋敷なの?」
マリウスはちょっと苦々しく笑って、「そうだよ」と答えた。
「ヴァレリーはこの国に住んでいるようだよ。僕は1年半くらい前から、たまに会ったり連絡を取ったりしてた」
そして眉をしかめて少しの間黙ったが、すぐにタビーに質問してきた。
「君は侍女のふりをして城を抜け出してきたの?でも、どうやってここが分かったのかな」
「実はマリウスが私に会いたがっていると言われて誘い出されて…。でも、明らかに怪しかったから相手を脅してここに連れてこさせたの」
「相手を脅した?! 剣でかい?なんて無茶を!」
マリウスは一瞬怒ろうとしたが、すぐにしゅんとなった。「ごめん、元はと言えば僕のせいだ…」
「そんなこと気にしないで…」
タビーには他にも話したいことがあったが、マリウスにとって重要だと思われることから話した。
「私を誘い出そうとしたのはサミエルよ」
マリウスは特に反応を示さなかった。黙って前を見たまま、何かを考えている。
「驚かないのね」
「うん、彼はヴァレリーと知り合いだからね」
タビーはじっとマリウスの横顔を見ていたが、思い切ったように話し出した。
「私、ビムビムの実を食ったわ。だからサミエルを脅すことができたの」
「えっ!?」
「ビムビムの実を食ったことは、まだ城の誰にも話していない。なんだかバタバタしていて話しそびれてしまって…。でも、こんなに身近なところに敵が入り込んでいたから、話してなくて良かったかもしれない」
タビーはビムビムの実を食った経緯をマリウスに話した。
「ビムビムの実はもうないって聞いてたよ。でも、まだ持ってる振りは続けてるって…」
国王であるマリウスは誰かから…おそらく先王である父親から、このように聞いていたらしい。
「ビムビムの実を食ったから、私はプレシ公国から一人で帰って来られた。今の私は、剣が無くてもそれ以上に戦うことができる」
「オクタビア…ごめんね。大変だったよね…」
タビーはこれには首を横に振って答えた。
そして、マリウスにこんなことを訊いてきた。
「ビムビムの実を食って怪物になっても、私は私よ。そうでしょう?」
「これからは夫婦喧嘩はできないね」
マリウスはわざと眉をしかめて、唸りながら言った。タビーはおかしそうに笑った。
「さて、この屋敷の人に電伝虫を借りよう。もっと早く城に連絡を入れるべきだったかもしれない」
「そうね、きっとみんな心配してる…」
幸いなことに、この屋敷に電伝虫はあった。マリウスとタビーはルナンに連絡を入れた。
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