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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第三十四話 朗報

「やっぱりお前の仕業か~~~っ!!」
「彼女は無事なはずだ…。た、助けてくれ………」
ゾロが憤怒の形相でヴァレリーの襟もとを締め上げようとしたのを、アルがとめた。
ローが地獄から響いてくるような暗い声でヴァレリーに質問した。
「こんなことをした目的は何だ?」
「た、単にマリウスの次にオクタビアまでいなくなったら大騒ぎになると思っただけだ…。それ以外の目的はない…」
「他にも何か企んでいることはあるのか?」
「な、何もない…」
ゾロが胸ぐらから手を離すと、ヴァレリーはほっとしたように大きく息をついた。
アルが事務的に訊ねた。
「ヴァレリー、この機会に確認させていただきますが、マリウスは本当にあなたの屋敷で無事でいるんでしょうね?」
「しつこいぞ。そうだって言ってるだろう」
ヴァレリーは襟の部分を直しながら反抗的な態度で答えた。
さっきの自供で、ヴァレリーには少なくとも王妃の失踪に関する何らかの罪があることが判明したため、アルはこれまでとは態度を変えて、思っていることを堂々と口にした。
「あなたが信用に値する人物なら、我々もこんなふうにあなたの言動を疑わずに済むのですが…。ロー、ゾロ。ルナン先生にオクタビアの居場所を知らせるよ。ボートレイ街ならツールーズ城からのほうが近い。城から誰かに行ってもらおう」
アルがルナンの電伝虫に繋ごうとした時、逆にルナンから電伝虫が入った。
受話器を取ると同時に、ルナンの弾んだ声が聞こえてきた。
「アル!マリウスとオクタビアから連絡があったぞ!二人とも無事で、ヴァレリーの屋敷に一緒にいるそうだ。君達はそのまま二人のところに行ってくれ。二人にもそう伝えてある」
「オクタビアも一緒ですか…。良かった…」
アルが安堵した表情を見せた。ローとゾロも、しかめていた表情を緩めた。
この連絡によって、それまであった張りつめた雰囲気ががらりと変化した。
ゾロがヴァレリーに冷笑を向けながら言った。
「あんたの計画はどっかで上手くいかなかったらしいな」
「ふん」
ヴァレリーが懲りずに反抗的な態度を取ったが、ゾロもローも無反応だった。二人が無事であることが判明した今となっては、ヴァレリーに対する関心はほぼなくなっていたのだった。
ルナンとの会話を終えたアルが、ローとゾロに声をかけた。
「先を急ごう。二人を早く迎えに行ってやらないと…」
アルはちょっと緊張していた。数年ぶりにマリウスとタビーに直接会うのだ。
(マリウスとオクタビア…。二人は僕に笑ってくれるだろうか…)
実は、ローとゾロも秘かに緊張していた。
(まさかアイツの旦那の顔を見ることになるとは…)
(おれ達はルナンのオッサンの屋敷でアイツに置いてかれたんだよな…)
(おれ達がここにいる経緯と理由は一応説明できるが…)
(もしも、何でまだいるんだとか、しつこいとか、うぜえとか思われたら…、おれはもう生きていけねえ…)
二人の無事が確認できて、ローとゾロとアルは今や吞気にも自分達の心配事に心を悩ませていた。
彼らがヴァレリーの屋敷に着くまで、もうしばらくかかる。


…このお屋敷が建ったばかりの頃は、当時の私達の主人であったモラン様の商売も順調でございました。モラン様はチョコレート店を経営しておりまして、一時は社会現象を引き起こす程の大人気店に登り詰めたのですが、やがてその勢いは終息し、追い打ちをかけるように原料価格の高騰やライバル店の出現等もあり…、モラン様のチョコレート店はみるみる業績を落としていったのでございます…

ヴァレリーの屋敷の客間でタビーとマリウスはお茶をいただきながら、二人の使用人の昔話を聞いていた。
さっきタビーを屋敷に入れてくれた使用人はフロリモンという名の60歳の男性で、馬の世話をしてくれたのはカントーという50歳の男性だった。
「この屋敷はモラン様がお母様のために建てられた別宅で…なぜならモラン様のお母様と奥様はたいそう折り合いが悪く…」
「まあ…」
二人の使用人は、20年前にこの屋敷が建てられた時よりももっと前からモランのもとで働いていたのだそうだ。カントーはずっと独身だが、フロリモンは以前は夫婦で働いていた。今一人でいるのは、数年前に離婚したからだった。当時4人の子供はすでに独立していた。
「売上げの回復を図るも思うようにいかず…モラン様は、比較的早い段階でこの屋敷をお売りになられました。使用人付きという条件で…」
「それはお気の毒に…」
マリウスが真剣に相槌を打った。
「いいのです。モラン様にはとても良くしていただきましたし、私共も働き口を失わずに済んだので、普通に解雇されるよりもずっと良かったと思っております。しかし…」
モランのチョコレート店の低迷は続いた。モランは必至であの手この手を打ったが、状況を好転させることはできなかった。
「新製品はあたらず、腕の良いチョコレート職人が引き抜かれ、銀行から貸し剥がしにあい…」
「税務署からも申告漏れを指摘され…今まで何も言ってこなかったくせに…うっ、うっ…」
二人の使用人は目元にハンカチを当てていた。
「家庭では再び同居となった奥様とお母様が毎日喧嘩をされて家の中はボロボロ…。お子様達もアイドルの追っかけや趣味のコスプレで多額のこづかいを浪費してばかり…」
「それで…悩んだ末にモラン様はとうとう…、とうとう……」
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