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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第三十一話 マリウスの涙

タビーはとっさに、ここは侍女のふりを通したほうが良いと思った。
「ツールーズ城への連絡はちょっと待ってください。申し訳ありませんが、是非こちらにいらっしゃるお客様に会わせていただきたいんです。国王陛下ではないことは分かりましたが、もしかすると知っている人かもしれないから…」
「しかし…」
タビーは本当のことを巧みに織り交ぜながら、使用人を納得させにかかった。
「このお屋敷のご主人は、バスコニア王国のご出身でしょうか。もしそうなら、ヴァレリー様と私は昔からの知り合いです」
「それは…」
自分の主人について何も知らない使用人は、肯定も否定もできなかった。
どちらにせよ、もう一人の使用人に馬の世話をしに行くように言わなければいけない。その時にどうしたらいいかも相談しよう。そう考えた使用人は、「しばらくお待ちいただけますか」とだけ言ってタビーを客間に通すと、急いで行ってしまった。
タビーは客間のソファにそっと腰を掛けた。もしも客人に会うことを断られたら、あの使用人を脅さなければいけないのだろうかと考えていた時、自分の名前を呼ぶ声にはっとして顔を上げた。
「オクタビア…」
客間の入り口に立っていたのはマリウスだった。

「マリウス!!」
タビーはマリウスに駆け寄った。マリウスは人差し指を口の前に立てて「しー」と小さな声で言うと、ちょっと廊下のほうを振り返って様子を見た。そして、タビーをソファのところに連れて行って、二人で並んで座った。
「この屋敷の者には僕だって感づかれてないからね。そのままにしておこう」
タビーよりも濃い栗色の髪に、整った優し気な顔立ち。従兄弟同士であるマリウスとアルは、面立ちがなんとなく似ていた。しかし、アルは金髪で、細身のすらりとした背格好をしているが、マリウスは肩幅が広く、首も太く短めでしっかりした体型をしている。
マリウスは上の階のゲストルームで考え事をしていたが、何やら外で騒がしい声がしたので窓から様子を伺っていた。それでタビーらしき女性がいるのに気づき、頃合いを見計らって客間に入ってきたのだと言った。
「マリウス…」
マリウスは、タビーが思っていたよりも格段に柔らかな表情をしていた。電伝虫でのあの会話以来、タビーが恐れていた刺々しさや冷たい雰囲気は全く感じられない。
「一体どうしたの…?どうして城からいなくなったの?電伝虫で話したあの会話は一体何?私…、とても不安で、プレシ公国から一人で帰って来たのよ…」
タビーは声が大きくなり過ぎないように気を付けながら、マリウスにそれまでの感情をぶつけた。
マリウスは、タビーにかすかに笑ってみせた。
「心配をかけてしまったね…」
そして笑顔のまま、苦しそうにポロリと一粒の涙を流した。

ルナンの別荘で、アルとローとゾロはヴァレリーを取り囲むようにして立っていた。マリウスがいるヴァレリーの屋敷に、できるだけ早く行きたかった。しかし…、
「何かが怪しい…。他にも何か企んでることがあるんじゃねえのか」
ゾロはヴァレリーにすごんだ。ゾロはヴァレリーの態度にどうしても引っかかるものを感じていた。
ヴァレリーは何も答えなかった。ゾロを睨み返しながら「手荒な真似はするなって、さっき言ったよな?」と言ったきり、口を閉じてしまった。
ローもゾロと同意見だった。そこでアルに、何らかの異常が起こってないか、ルナンに電伝虫で確認するように言った。ルナンからの回答は、特に何も報告されていないというものだった。
「ルナンのオッサンに、何かおかしなことが起こるかもしれないから気を付けるよう言うんだ」
電伝虫でルナンと話しているアルの耳元に、ローが指示を出した。
そこでアルは、ルナンには一度ツールーズ城に戻って現状の確認をしてもらい、自分達はマリウスのところに向かうことを伝えて電伝虫を切った。
「ところで…」
ローが口を開いた。
「こいつも連れて行くんなら、おれ達の言うことを素直に聞くようにしといたほうがいいな…」
ゾロが同意した。
「ああ、そのほうがいい。隙をついて逃げ出そうなんて気は起こさないようにしておくに限る」
ローは何の前触れもなく自分の発言を実行に移した。シャンブルズでヴァレリーの心臓を取り出し、小手調べとして軽くその心臓を握った。
「うわあああああ!」
ヴァレリーは大声で叫んで、その場に崩れた。
「悪かった。そんなに強く握ってないつもりだが…。それにあんたは丁重に扱わなきゃならねえんだった…」
ローの言葉は脅し文句なのか、それとも本当に悪いと思っているのか、この場にいる誰にも分からなかった。
「悪いがあんたの心臓は預からせてもらうぜ。国王の無事が確認できたら返してやる」
「さあ、さっさと立て」
ゾロがヴァレリーの腕をつかんで立たせた。
ヴァレリーは真っ青な顔をして、大人しくローとゾロに従っていた。
アルも驚いていた。
「君達は…何なんだ?」
この問いにはゾロが答えた。
「こいつは悪魔の実の能力者だ。心臓を取られた奴が死ぬようなことはないから安心しろ」
(あんたのはとこも悪魔の実の能力者だぜ)
ローとゾロは心の中で思った。しかし、口には出さなかった。
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