ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
目次

第二十三話 明かされる真相

「あ?!」
「は?!」
ローとゾロはのけぞらんばかりに驚いた。そんな二人の様子を無視してリュシーは話しを続けた。その表情は、なんとなくではあるが笑っているようにも見える。
「はい、タビー様はご結婚されていらっしゃいます。そろそろ3年になるでしょうか。結婚式には私も参列させていただきました」
「アンタはタビーと親しいのか?」
つかさずローが、気軽な世間話しを装って質問した。
「はい。昔はタビー様は休暇のたびにこのお屋敷に遊びにいらっしゃいましたから…。子供同士の遊びの時は、年の近い使用人もお仲間に入れていただいたんです」
リュシーはちょっと懐かしそうな顔をした。子供の頃、オクタビアと二人の男の子は、当時家庭教師だったルナンのこの屋敷によく遊びに来た。この3人と子供の使用人達とで、ピクニックや魚釣りに何度も出かけた。
ローは秘かにリュシーの様子を観察していた。
「ここは大きな屋敷だな」
「はい」
「タビーの家も同じくらい大きいのか?」
しかし、頭の良いリュシーはここでローの質問に答えるのをやめた。
「私にはこれ以上のことはお話しできませんわ」
「誰なら話せる?」
ローは悪魔のような魅力的な笑顔と直球の質問を、獲物に向かって投げた。
リュシーは、ローだけでなくゾロにまで真剣な熱い眼差しで見つめられて、赤くなって答えた。
「使用人には無理ですわ…」

タビーとルナンは、すでにマリウスのいるツールーズ城に向けて馬車で出発していた。ルナンの屋敷からツールーズ城までは馬車で約半日かかる。よって、途中で少なくとも1回は馬を替えなければいけない。立ち寄るであろう馬場の場所は、リュシーが教えてくれた。
「お二人の馬車は出発したばかりですから、先回りできると思います。あなた方が乗ってきた馬は疲れていますので、新しい馬をお使いください」
リュシーは馬屋番に言って、新しい馬を用意してくれた。「またこのお屋敷に戻ってきてくださいますよね?」と言いながら。
主人から二人を歓待するように言われていたので、他の使用人達は疑うことなく、リュシーの指示で二人のためにいろいろと手を焼いてくれた。
「お前…どういうつもりだ?」
使用人達に聞こえないところで、ゾロがこっそりローに訊いた。
「俺はボディガードのつもりでアイツに付いてきた。ここに送り届けた時点で役目は終わりだ。だがな…」
ローは小ズルそうな目でゾロを見ながら言った。
「あんなオッサンから礼だ報酬だ言われてカチンときたのは俺も同じさ。しかし、あそこでゴネてもうるさいと思われるだけだ。とりあえずあの場では大人しくしといて、後から好きにやらせてもらおうと思った次第だ」
「ふん」
ゾロは口をへの字に曲げた。
頬を染めたリュシーが、離れたところから二人に向かって小さく手を振った。
「…どうすんだよ、あの女」
「別にどうもしねえだろ」
ローが無関心そうに言った。
使用人達の手厚い支援を受けて、ローとゾロはリュシーが示した「質問に答えられる人物」を捕獲するために出発した。

タビーとルナンの馬車が街道沿いの馬場に到着すると、馬場の支配人がルナンに伝言を持ってきた。
ルナンはタビーに断ってから、馬場の管理棟の中の応接室に出向き、すぐに戻って来ると、自分はあとから行くと言って、また管理棟の中に入って行った。その後すぐにタビーの馬車は出発した。
「私の心臓を返してくれないか?」
応接室で、ルナンは青ざめた顔で言った。
「ちょっと付き合ってもらったら、すぐに返すさ」
応接室の椅子には、薄ら笑いを浮かべたローと、無表情のゾロが座っていた。

一人になったタビーは馬車の中で、そう言えばさっき、ルナンにビムビムの実を食ったことを言いそびれた…と考えていた。
タビーがビムビムの実を手に入れたのは、プレシ公国で不審者に襲われた、あの夜だった。
今はプレシ公国の王妃であるマリウスの叔母は、6年前にこの国に嫁ぐまで、宮廷内でタビー達3人の子供をたいそう可愛がってくれていた。
この優しい叔母が、アルとマリウスの企てを知って取り乱したタビーの相談に乗り、力を貸してくれたのだった。
タビーはすでに単身で帰国することを決めていた。不審者が尋問されて語ったことや、電伝虫でマリウスが話したことを全て信じられなかったというのもあったし、もしも真実だった場合は、内々で事を収めたいと考えていた。
よって、表向きは体調不良でプレシ公国で療養していることにして、友好国訪問の予定は全てキャンセルし、供の者はプレシ公国に留めることにした。このことは本国へは知らせず、真相を明かすのも信用できるごく少数の者だけとした。どこかに第2第3の内通者がいないとも限らない…。
プレシ公国の王妃は、タビーと二人だけの時、部屋の奥から箱を出してきた。
「これをあなたにあげるわ。あなたは剣の腕が立つけど、一人きりの長旅は心細いと思うから…」
箱に入っていたのは、ビムビムの実だった。
「ビムビムの実!叔母さまが持ってらしたの?!」
ビムビムの実は何十年も前にガスケーニュ国王に献上されたと伝えられていたが、そのありかは王族の中でもほんの一部の者しか知らなかった。
叔母はにっこり笑って言った。
「ここに嫁ぐ時に父がくれたの。いざという時は自分で食ってもいいし、売れば莫大なお金に換えられるからって。こんなに遠い国に嫁ぐことになって心配だったんでしょうね」
プレシ公国は、ガスケーニュ王国から船と陸路で1か月以上かかる。何かあっても簡単に帰ってこられる距離ではない。
「どう使うかはあなたの自由よ。必ず無事に国に帰って」
タビーは迷わずにビムビムの実を食った。そして、一人だけで長い道のりをやっと帰って来たのだった。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。