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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第十九話 救出劇

ドナリス公の命令でタビーを追跡している複数の部下達は、電伝虫で互いに連絡を取り合った。タビーが通った道順が、複数の目撃情報によって次第に明らかになっていく。やがて、どの地点をどのくらいの時間に通るか、ある程度の予測が成り立った。
「この森の中なら、襲撃しても人の目に触れにくいだろう。付近にいる者に待ち伏せさせよう…」
タビーを列車で誘拐した3人の男は普段からドナリス公のごく近くにいる立場の者だったが、次にタビーの追跡と誘拐の命を受けたのは、他の部下だった。
先の3人であれば、ドナリス公とタビーの関係も、タビーがどのような人物なのかも熟知していた。
よって、タビーを丁重に扱うことも命令の一部と心得ていたが、同じ認識がこの者にもあるのかどうかには、おおいに疑いの余地があった。
しかも、今回のタビーの追跡はより多くの人数が必要であったため、部下からその手下、またその下の者へと、命令が伝言ゲームのように引き継がれた。
こうなると、実際にタビーを捕らえる役割を言い渡された者には、「女を生かしたまま捕らえろ」程度のことしか伝わっていない。
さらに悪い事に、この者達は、自分達が捕らえなくてはいけない女が、どうやら悪魔の実の能力者であるらしいことを仲間から聞いていた。つまりこれは、手加減したら自分達がやられると思っている可能性があるということである。
このようなタビーの身の安全にかかわる事柄を、ドナリス公がどのくらい関知しているのかは不明であった。

ローとゾロによるタビーの追跡は困難を極めていた。馬で移動しているタビーに対して、二人は徒歩である。山道のためヒッチハイクできるような乗り物等も通らない。追いかけようにも双方の距離は広がるばかりだった。
初めのうちははっきりと跡が残っていたタビーの馬の蹄の跡も、その後に人や別の馬が通ってかき消されてしまいそうになっている。二人に焦りが見え始めていた。今のままでは、タビーを追うことはできない。しかし、どのような手段があるだろうか。
そのような時だった。遠くの林の中から上空に向かって、短い閃光が火花のように走り飛んだのが見えた。
「!!」
ローの肩にあった鬼哭がいきなり動いた。鬼哭は閃光がほとばしった地点に向かって、矢のように飛び去った。タビーの危機を察知したのだ。
「ちくしょうっ、鬼哭だけ先に行っちまいやがった!」
ゾロが苦々しく言う。
空にまた閃光が散った。戦闘の激しさが想像できた。
「くそっ」
ローはゾロの腕をつかむと、まず数百メートル先の木の枝の上、次はその先の空を飛んでいた鳥の位置、と言うふうに、何度もシャンブルズで瞬間移動を繰り返して閃光が走った場所を目指した。ほぼ直線距離で瞬間移動していても、随分と長い時間がかかったように感じられた。それほどまでに閃光が光ったところは遠かった。
それでも、二人はやっとタビーの姿を確認できるところまで近づいていた。タビーは10人以上の賊に囲まれ、地面に座りこんでいた。馬の姿は見えない。おそらく、タビーは馬から振り落とされたのだ。怯えた馬はどこかに走り去ったのだろう。
小さな火ではあったが、周囲の草木が燃えていた。ビムビムの実の能力者は口から炎を吐くこともできると言うが、タビーがやったのだろうか。
タビーの側にいる鬼哭が、賊の一人に襲いかかって跳ね飛ばした。
賊は木刀やこん棒を武器に、丸腰のタビーに襲いかかっていた。いざという時に使えるように、真剣を腰に下げているものも数人いる。
タビーは目からビームを出して応戦しているが、大勢を相手にしているせいか、本日2度目の戦闘のせいか、攻撃は今までよりも弱々しい。
ローとゾロは近くの地面に着地した。まず、ローがシャンブルズでゾロとタビーの位置を入れ替えた。ローは一歩踏み出してタビーの前に立ち、自分の体を盾にしてタビーをかばう態勢を取った。ほぼ同時に、鬼哭が自分で飛び跳ねてローの手に戻ってきた。
敵陣の真ん中に現れたゾロは、一太刀で10人以上の賊を一網打尽にした。
全て一瞬の出来事だった。

大掛かりに行われたタビーの2度目の誘拐計画は、ローとゾロが参戦したことによって失敗に終わった。
ゾロに倒された賊は、その場に倒れたまま動けないでいる。ゾロとローが周辺を探ると、近くにこの男達が乗って来たであろう10頭以上の馬と、1台の荷台のある馬車が停められていた。
「まだ馬に乗れるか?」
ローがタビーに訊ねると、タビーはしっかりと頷いた。
襲撃犯の馬の中から3頭を選び出し、三人はその場を後にすることにした。
ゾロがタビーに訊ねた。
「どこに向かうか計画はあるのか?おれ達はこの国は初めてなんだが…」
「この道をこのまま先に進もうと思う。国境を越えてガスケーニュ王国に入れば、昔お世話になった人の家までそう遠くないはずだけど…」タビーはここで言葉を切って、少し間を置いてから言った。「日暮れまでに国境を越えるのは、無理かもしれない」
今日中に国境を越えるのは、もともと厳しかったのだ。
「あなた達も一緒に行ってくれるの?」タビーは二人に問うた。
「そのつもりで来た」ローとゾロは力強く受けあった。
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