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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第十六話 倒木事故

運転士は飛び起きると、すぐに自分の列車にエンジンをかけた。輪にした太いロープと斧を持った三人の作業員が乗り込んできて、ゾロとローを見て「何だコイツら」という顔をしたが、運転士が「気にするな」と三人に言った。
作業員のうちの一人が、運転士に状況を説明する。
「立ち往生してるのは、こっから30キロくらいの地点らしい。倒木の手前で止まれたから、車両の故障も怪我人もないそうだ」
「不幸中の幸いだな」
メンテナンス列車は、ゾロとローが乗り込んでから最も速く走って、約20分で現場に到着した。
そこでは、大きな針葉樹が線路の上に斜めに倒れて列車の行く先を遮っていた。これをメンテナンス列車の運転手と三人の作業員、それに始発列車の運転手と車掌も全員で力を合わせて、線路の上からどかさなければいけない。
列車の乗客の何人かは、勝手に車両のドアを開けて外に出ていた。それを見て、作業員の一人が「街が近いから、歩いて行こうと思う奴がいてもおかしくないか」と言った。
ローが倒木をどかす仕事に入ろうとしている運転士や作業員達に取り引きを提案した。
「乗せてくれた礼に、倒木をどかすのはおれがやる。それでさらに頼んで悪いんだが、人を探すために列車の中に入らせてもらいたい」
それを聞いた全員が驚いて呆れたが、ローが能力で倒木をどかすと驚嘆して、口々に感心の声をあげた。
「手間がかなり省けたな」
「あとは線路の点検だけだ」
「それじゃあ、ちょっと列車の中に入らせてもらうぞ」
ローがこう言って列車のほうに向かおうとすると、メンテナンス列車の運転士が、わざとドスを利かせた声で言った。
「俺達は線路の点検を始めるが、車両の中で女と物の投げ合いなんか始めたらタダじゃ置かねえからなっ!」
列車は3両で、乗客の人数は定員の半分くらいだった。人を探すのは一人でも十分と思われたので、ローはゾロ一人に車内に入らせ、自分は外で待っていた。
しかし…。
「いない」
眉間にシワを寄せたゾロが、ローのところに戻ってきて言った。
ローも眉間にシワを寄せる。途中の駅で降りたのを見逃したか?または…。
「勝手に降りた客もいたな…」
しかめっ面の男二人の側に、興味津々の運転手達がやってきた。
「なんだ、見つからなかったのか?」
「この列車に乗ってたのは確かなのか?」
当初の予定より仕事が早く片付いて機嫌が良い面々は、ワイワイと積極的に二人の問題に介入してきた。
「探してる女の特徴は?」始発列車の車掌が聞いた。これにはローが答える。
「年齢は20歳前後で、服装は白いニット帽にTシャツとパンツ。髪はダークブラウンでやや長め。リュックサックを背負っているはずだ」
「ああ、その客なら乗ってたな」
「本当か?!」
ローとゾロが、車掌に同時に飛びつく。
「ああ、乗ってたと思うが…車両の中にいなかったのか?」
他のメンバーも口を挟んでくる。
「勝手に降りてった客の中にいたんじゃないか」
「街が近いと言っても山道だ。男ならともかく、今頃後悔してるかもな」
「男連れだったんじゃないのか?」
ローとゾロは、列車を降りていった乗客がたどるであろうルートを教えてもらった。
「まず、線路の右側の丘を登るんだ。丘の上までいけば道路と街並みが下に見えるから、あとはそれを目指して丘を下りていけばいい。降りてった乗客達もおそらくそうしてるはずだ。人が通ったところには跡が残ってるからそれをたどれ」
「街に出るまでどのくらいかかる?」
「一時間くらいだ」
ゾロとローは礼を言ってその場を離れた。
「頑張れよ~。お前たちから聞いた話し、面白かったぜ!」
メンテナンス列車の運転士が叫んだ。「それだけ強い女なら、こんな小さな丘なんかすぐ越えちまうかもしれないぞ。急いで行け~!」
ゾロとローは一度振り向いて手をあげ、林の中に入って行った。二人を見送った後で、作業員の一人が運転士に聞いた。
「その女、強いのか?」
「ああ、剣の腕がたって、その上怪力らしい」
「へえ…」
「あの客がか?」唯一、タビーらしき人物を実際に見ている車掌は、首をかしげた。
「あの二人のうちの一人は、その女と決闘するのが目的だそうだ。目からビームが出るとか出ないとかも言ってたな…」
「ふうん」「なんかスゲエな」「色恋沙汰じゃなかったのか」
「俺はそれもあると見ている」
「ほう」「なるほど」
しばらくはこのメンバーの間で、三人の関係が深く考察されるだろう。

ローとゾロは丘を登った。運転士達が言った通り、地面や草が踏み荒らされていて、人が通った跡が分かる。
丘は林で覆われていて、木を切り出す時に使われているのであろう道が一応は付いていたが、やはりハイキング程度の服装は必要だった。サンダルやパンプスでは歩けない。
丘の頂上にはすぐに到着した。丘のふもとに街と道路が見える。ここからの道のりが長そうだが、ひたすら歩いていけばいつかは着くのだろう。
「列車から降りて行った奴らは…さすがに見えねえか」
ゾロが斜面を見下ろしながら言った。
丘を下り始めて間もなく、二人は異様な気配に気づいた。
「おい、何か変な感じがしねえか?」
「ああ、そんなに近くじゃねえと思うが、人のうめき声も聞こえる」
二人は急いで気配がするほうに向かった。
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