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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第十四話 ボーイ・ミーツ・ボーイ

あの時、シャンブルズを使ってタビーが乗った列車に乗り移ることも、ローにはできた。しかし、ローはそうしなかった。タビーが自分に気が付いて、目を伏せたような気がしたせいかもしれない。
ローは今、待合室のベンチに座って、これまでのことを考えていた。
タビーは何らかの理由で、人目を忍んで旅をしていた。ゴルジカ島に来るために、偶然出会った海賊の船に一人で乗り込むまでした。これは鬼哭の助言によるものだと言っていたが、かなり大胆な行動であることは間違いない。つまり、普通の客船には乗れなかった…またはそこまでいかなくても、できれば乗りたくなかったということではないだろうか。多額の船賃を惜しまずに払ったことも、それだけ安全と秘密を確保したかったということだ。
サニー号がゴルジカ島に到着した時、わざわざ人目が少ない早朝に船を降りたのも、少しでも人目を避けるために違いない。少数の仲間に見送られてサニー号を降りていくタビーが、ローには痛々しく見えた。
そう思うと、これほどまでに周りを警戒しなければいけないタビーを一人で行かせて良いものかどうか、無性に気になった。しかも、タビーの体はまだ完全に回復していない。だから後を追った。
しかしタビーは、いとも簡単にローを撒いて一人で行ってしまった。
(我ながら笑えるぜ)
ローは帽子の下でひっそり自分を笑った。
(信用されてなかったってことか?まあ、海賊を信用しろというのも無理な話しか…)
タビーは列車に乗った。これはローの予想に反していた。これまでのことから、タビーが不特定多数が乗り込む列車を移動手段に選ぶことはないと思っていた。
(いや、そうでもねえか?例えば、列車に乗ること自体が目的だった場合…誰かと列車の中で待ち合わせしていたとか、列車のどこかに何かを隠していたとか…)
ローはあらゆる可能性を考えるが、それは推測でしかないのだ。タビーにとって自分は邪魔者なのか、そうでないのかも、ローに分かるはずがない。
(さて、これからどうする…。さらに追うか、引き上げるか)
タビーが乗った列車は5:56発の始発列車で、行先は終着駅のツールーズだった。
(ツールーズに到着するのは13時間後か…結構かかるな)
始発駅であるこの駅から終着駅のツールーズまで行く列車は、1日にこの1本しかないらしい。途中の駅まで行く列車なら2時間後に出発するが、その先の乗り継ぎの列車に乗っても、その日中に終着駅まで行くことはできない。鉄道の営業が終わる時間が早いせいもある。
壁に貼られた時刻表を見ながら、そんなことをぼんやりと考えていた時、いきなり後ろから大きな声をかけられた。
「トラ男!見つけたぜ!」

ローが驚いて振り向くと、奇跡的にローを発見することができたゾロが、非常に嬉しそうな顔をして立っていた。
「探したぜ。タビーは一緒か?」
「…」
ローは驚きと戸惑いと自尊心のために、何も言えないでいた。ゾロが眉をしかめる。
「お前、タビーを追いかけてサニー号を降りたんじゃなかったのか?」
ローはますます答えに窮した。隙をつかれて逃げられたとも言えず、しかし、黙っている訳にもいかず、ローはこれに関する答えの一部だけを端的に答えた。
「列車に乗って行っちまった」
「なに?! 次の列車はいつだ?」
「…。2時間後…か、じゃなきゃ明日だ」
「あぁ?! なんだよ、その曖昧な答えは。2時間後と明日、どっちだ?」
「…」
「~~~。で、どこに向かったんだ?」
「…」
「おいっ、何を腑抜けてるんだっ。ちゃんと説明しろっ!!」
ゾロの怒声が飛んで、周りの人間が一斉に二人のほうを見た。ローは眉間にシワを寄せつつ、ベンチから腰を上げた。

二人は駅舎を出て、外から駅のホームと線路を眺めながら短い話しをした。
ここから見る限りでは、線路は単線のようだった。駅のホームには誰もいない。駅の敷地の奥のほうにある車両倉庫の中に、何台かの列車が停まっている。列車はディーゼル車のようだ。
ローがゾロに話したことは多くはなかった。タビーに一度は追いついたが、列車に乗って行ってしまったこと、目的地は分からないということ…これだけだった。しかし、ゾロには十分だったようだ。
「なんとなく話しは分かった。俺は先に進むが、トラ男はどうする?」
ゾロには自分の行動を変更する気など、微塵もないらしい。ゾロの軽さに、ローは軽くひっぱたかれたような気分になった。
「先に進む?」
しかし、自分は既に断られている、とも思う。
「おうよ。つまり、線路の上を走っていって、あの女が乗った列車に追い付けばいいんだ!」
ゾロは不敵な笑みを浮かべながら、何でもないことのように言ってのけた。ただ、これはゾロ特有の事情も関係している。この先ローがどうするのかは分からないが、もし一緒でなくても、線路の上を走って行けば絶対に道に迷うことはない。ゾロには地面の上の線路が幸運に続く道のように思われた。
「じゃあな、お前も好きにしろ!」
ゾロは柵を飛び越えて線路内に侵入し、線路の上を走り出した。
「…」
「あ、あれ?!」
数メートルで線路の端にぶち当たる。
「進行方向が逆だ」
ローの低い声が冷たく響いた。
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