ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
目次

第十話 タビー

女はタビーと名乗った。
タビーの高熱は2日で下がった。今は医療室のベッドの上で、ロビンに置いてもらった大きな枕に寄りかかって、上半身を起こした姿勢でくつろいでいる。
タビーの目的地はゴルジカ島の南東部にあるマルゼイヨという港で、風向きが変わらなければ明後日の朝に到着する予定だ。チョッパーは病人のことがちょっと心配だった。
「港に着いたらすぐに船を降りるのか?できたら、もう1日か2日くらいは無理しないほうがいいんだけど…」
「私は大丈夫よ。それにゴルジカ島に着いたら行くところがあるの」
食事の時にチョッパーがこのことを話すと、船長は言った。
「どうせ俺達もゴルジカ島にしばらくいるんだからよ、タビーにもう少しサニー船にいろって言やあいいじゃねえか」
麦わら達の旅は、一応の計画はあるが、気まぐれだった。ある島に着いたら、たいていは飽きるまで滞在する。次の島に出航するのはその後だ。
「タビーの風邪はまだ治ってねえのか?口から炎を出すところを見せてもらいたいんだけど、やっぱ無理そうか?」
麦わら達の関心は、どうしてもこちらのほうに向くらしい。
「残念だな」
「ああ、なんとかならねえかな」
「あんたたち、やめなさい!」

タビーの回復は順調だった。その日の日中はよく晴れて気持ちの良い日だったので、タビーは甲板に出て海を見ていた。そんな時、後ろから話しかけてきた者がいた。
「風邪の具合はどうだ」
ゾロだった。タビーはにっこり微笑んで「お蔭さまで、だいぶ良くなりました」と答えた。
「みんなはアンタのビムビムの実の能力に興味があるようだぜ」
タビーはくすりと笑いながら、「そのようですね」と答えた。ゾロは続ける。
「でも、俺はそんなことよりも、アンタの別のことに興味があるんだが…」
タビーは横目でゾロを見た。
「アンタ、剣はどのくらいやってたんだ。体が回復してからで良いんだが、一度、手合わせ願いたい」
「剣を習ったことは確かにあるけれど、あなたのような剣士と手合わせできるほどの腕前ではないわ。それに自分の剣も持ってないし」
「手合わせなんだから木刀か竹刀でいいだろ」
ゾロはあっけらかんと言ったが、ここで一度言葉を切った。そして、すぐにやや凶悪そうな笑みを浮かべながら、
「それとも、鬼哭を使うか?」
と言った。タビーは思わず吹き出した。
「それもいいわね」
タビーはローとまだ直接話をしていなかったが、ローからの謝罪は伝言で聞いていた。それから、ローがこれまでにないくらい暗く落ち込んでいること…麦わら達の推測では、怒った時のタビーが余程怖かったに違いない。それに、どうやらタビーと鬼哭の間には何らかの因縁があるらしいから、鬼哭を取られてしまうかもしれないと怯えているんじゃないか…ということが、すっかり面白おかしい話しになって伝わっていた。
しかし実際には、鬼哭がタビーに送ったメッセージは、最初にローとゾロに会った時も、熱を出して大騒ぎになった時も、「この連中を信用して良い」ということだけなのである。だから、タビーにも鬼哭がどうして自分に関わってきたのか分かっていない。
ゾロと一緒に笑いながら、タビーは心の中で安堵していた。ゾロの自分に対する興味は、剣の腕に関することらしい。少なくとも今の段階では、何も勘付かれていないようだ。
タビーはふと思い付いて、ゾロに尋ねてみた。
「あなた達はいつもこの辺りの海を航海しているの?」
「この辺りの海域に入ったのは、ほんの1~2か月程前だ。それまでは別の海にいた」
「そうなの…」
ここにロビンがやって来て言った。
「二人で楽しそうね」
「おう、旅の話しをしていたところだ」
「そろそろ食事の時間よ。それにタビーはまだあんまり風に当たり過ぎないほうがいいわ」
「ええ、もう部屋の中に入るわ」

ダイニングキッチンで一同と賑やかな食事を済ませた後、医療室に戻る気になれなかったタビーは、さっきのロビンの忠告に従って、甲板ではなく1階のアクアリウムバーに行った。この部屋は、生簀の中の魚を観賞することができる。
ソファに座って魚が泳ぐのを眺めていると、静かにドアが開いた。振り返って見ると、ローが部屋に入ってくるところだった。
「ちょっといいか」
「どうぞ」
ローとは少し話をしなければいけないと思っていたから丁度良かったと、タビーは思った。穏やかな笑顔で答え、向いのソファに座るように促したが、ローは立ったままで話し始めた。
「体はもういいのか」
「ありがとうございます。もうすっかり良くなりました」
タビーはにこやかに答え、次の言葉をさらりと言った。
「あなたの傷の具合はいかがですか。急所は外しましたが…」
あの騒ぎの時、ローはタビーからビームで切られている。
(急所を外しただと?!)
タビーの言葉に、ローは心の中でのけぞった。
(それにしては思いっきりザックリやってくれたじゃねえか)
「………。………。おれのほうは大丈夫だ…」
しかし、精神力で心の乱れを鎮め、ずっと言おうと思っていたことを口に出した。
「あの時はすまなかった。でも、悪気があった訳じゃない。こっちも焦ったんだ」
「それはもう気にしないで。それから…」
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。