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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第五話 サニー号に乗りたい

ゴルジカ島とは、この島から北東に船で4日程のところにある島である。大きさはオーストラリア大陸くらいで、島の中にはいくつかの国が存在している。
「人にものを頼む時は、もっと礼儀をわきまえるべきだと思うがな」
女の要求に対して、ゾロがにべもなく返した。これに対し、女はほんの少しの間を置いてから、しっかりとした口調で言った。
「分かりました。あなた方のことは誰にも言わないと約束します。お礼は十分にしますから、ゴルジカ島まで船を出して欲しいのです」
ゾロは次に、この展開によって、新たに浮かんできた疑問を口に出した。
「さっき奇妙なことが起こったが、あれは俺達に近づくために、初めからアンタが仕組んだことだったのか?」
「いいえ、そうではありません。あれは…」
女は次の言葉を言いあぐねている。
しかし、ゾロはこの答えでほぼ満足していた。何かを前もって計画して近づいてきたんなら気味が悪いが、そうでないならどうでもいい。この女が訳ありであることは確かだろうが…。
「つまり鬼哭を飛ばしたヤツは他にいるってことか…。この島を出るのはそいつから逃げるためか?」
女は黙ったまま肯定も否定もしなかった。そう思ってくれるなら別にそれで構わない。それに自分自身も、さっき起こったことの真相を誰かに説明できる程には理解できていない…女はそう考えていた。
ゾロは女の顔をじっと見ていたが、それ以上追及するのはやめにした。
「まあ、いいさ。すぐに出航するのは確かだが、乗せてやれるかどうかは俺達だけじゃ決められねえ。おい、トラ男」
ローは、麦わらの一味がそれぞれ持っている電伝虫に、連続して電話をかけている最中だった。
「海軍に見つかっただあ?このマヌケ!」
「しょうがないわねえ…。これからカフェに行く予定だったのよ」
「ウソップさん達には私から知らせておきます。ヨホホホホ~」
島中に散っていた仲間達は、すぐにサニー号に戻ってくるだろう。
「おれ達も船に戻るぞ」
ローが二人に背を向けたまま言った。ゾロが問う。
「それはいいが、お客さんも連れていくのか?」
女は両手で鬼哭をしっかりと持って、屋根の上に立ちあがった。相変わらず顔の上半分は帽子に隠れて見えないが、なんとなく口元がニヤリと笑っているように見える。そして、二人に向かって
「あなた達の船に行く前に、滞在しているホテルに寄って荷物を取ってきたいの」
と言った。

サニー号の甲板には、麦わらの一味が全員揃っていた。出航前の忙しい時間のはずだが、全員が出航の準備の手を止めて、一人の女に注目していた。鬼哭はローが持っている。どうやらやっと返してもらえたらしい。
ローとゾロから事情を聞いたこの船の船長麦わらのルフィーは、頭に手をやりながらこう言った。
「二人がここまで連れて来ちまったもんなあ…。しょうがねえ、乗せてってやるよ」
「どうもありがとう」
女は笑顔で礼を言った。
かぶっていた大きな帽子はもう脱いでいた。髪は暗い栗色で肩よりもやや長く、整った顔立ちで、優しそうな目をしている。年齢は20歳くらいだろうか。
「ここからはビジネスの話しよ。船賃はどれくらい払ってもらえるのかしら」
ナミが事務的な話を進める。
「これでいかがでしょうか」女はバッグの中からブローチを出して、全員に見せた。
「まあ、大きな宝石…。これはダイヤモンド?」
「ええ、周りに付いている石も合わせると200万ベリーは下らないと思います。これで足りなければ、キャッシュも少しあります」
「いいえ、これだけで十分よ」
ゴルジカ島まで約4日。1日50万ベリーの船賃になるが、これは豪華客船のスイートルーム並みの金額である。
「私達の部屋に案内するわ。ベッドは私達と共用よ」
「ありがとう」
ナミとロビンに案内されて、女は2階にある女子部屋の中に入っていった。甲板に残された男たちは、黙ってその後ろ姿を見送る。
「きれいな人ですねぇ~」
「どういう事情があるのかは知らねえが、またえらく船賃をはずんできたな」
「訳ありらしい」これはゾロである。
「そういや名前をきいてないな」
「出航するぞ。みんな持ち場に付くんじゃ」
ちょうど何艘かの商船が、列を作って港を出ていくところだった。それに紛れてサニー号も出航した。

女子部屋では、3人がこれからの日常生活について細々とした話しをしていた。
「船では自由に過ごして。荷物はそこに置くといいわ」
女の荷物は小さなカバンがひとつだけである。
「3度の食事の他におやつも出るから楽しみにしておくといいわ」
「トイレとお風呂はそっちよ。ハンガーはこれを使って」
ナミとロビンはこの乗客に、必要なことをひとつひとつ丁寧に説明していった。一体、どういう境遇の人なのだろう…と想像しながら。
乗客の女は、この船に自分以外にも女性が乗っていることに安堵していた。二人とも親切そうだ。最も、相手は海賊だから油断はできないが…。
なんとなく、体が重いような気がする。
「すみませんが、ちょっとこの部屋で休ませていただいていいですか」
「私達は航海中はそれぞれ仕事があるから外にいるわ。ソファとテーブルを自由に使って」
「ありがとうございます」
「疲れているようね。何か飲み物を持ってきてあげる」
ナミとロビンが部屋を出て行った後、女はソファの背もたれにぐったりと体を預けた。
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