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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第四話 屋根の上の女

ローはこの時、初めて帽子の下に隠れていた女の目を見たと思った。慌てて目をそらし、周囲の様子を伺うふりをしながら、もう一度女に言った。
「分かった。とにかく刀を返してくれ」
周囲は大混乱だった。やや離れたところで、海軍が「一人消えたぞ!」と叫んでいる声が聞こえた。
「今は駄目よ。無事に逃がしてくれたら返すわ」
ローは、女の視線と声を、正面から受け止めることができなかった。女の視線を痛いほど横顔に感じる。
女は鬼哭を両手でしっかりと持っていた。腕力で強引に、またはシャンブルズで瞬間移動させれば、簡単に奪い取ることができそうだが…。
しかし、ローは顔をそむけたまま、女が提案してきた取引を受け入れた。
「…わかった。必ず返せよ」
ROOMを発動して、シャンブルズでまず自分を、2秒後に女を、近くの建物の屋根の上に瞬間移動させた。女と、女が持っている鬼哭には指一本振れていない。
「頭を低くして隠れていろ。もう一人、回収しなくちゃいけない奴がいる」
ローはそう言い残して、その場から姿を消した。
女は一瞬、自分に何が起こったのか理解できなかった。どうして自分はこんなところにいるのだろう?ここは屋根の上よね?
地上を見下ろすと、さっきの混乱を見つけたることができたが、他の建物の陰になっていて、全てを見ることはできない。本当にほんのちょっと前まで、自分もあの混乱の中にいたのだ。下を見ていると、建物の高さに目がくらんで体が震えてくる。あの男は本当にここに戻ってきてくれるのだろうか…。

ローは、騒ぎからやや離れたところにシャンブルズで瞬間移動していた。騒ぎの中心では、ゾロと数人の海軍が睨み合っている。
「大人しく見逃しとけ。どうせお前らには俺は捕まえられない」
「う、うるさい!神妙にお縄にかかれ!!」
海軍の兵士は、剣や銃を構えて大声で威嚇はするが、遠巻きにゾロを囲んで、それ以上は動かない。
「ローはどこに行ったんだ。こいつらをやっちまうのはわけねえが…」
ゾロに心配がいらないせいか、ローはすぐに行動を起こさずに、さっき起こったことを頭の中で整理し始めた。鬼哭がまた勝手に飛んで行った。今度の飛び方は派手だった…。あれじゃあヤジウマが集まってきても無理はねえ。鬼哭が飛んで行く先を目で追うと、さっきの女がいた。女は鬼哭を片手で受け止めやがった。あの女、ただ者じゃねえ…。とにかく鬼哭を取り返さねえ訳にはいかねえから、あの女のところに走って行った。あの女と鬼哭の取り合いになるかもしれなかったが、それはオペオペの実の能力で何とかなるだろうと思ってた。そこに海軍が乱入してきた…。
「この島を一刻も早く出たほうが良いだろうな」
ぼそりと一人でつぶやく。この島には、今はせいぜい中将クラスしかいないようだが、もしも大将を呼び寄せられたりしたらかなわない。そうと決まれば、ゾロ屋の回収と他の仲間への連絡。それとあの女は………。
「シャンブルズ」
「うおっ、トラ男か」軽い悲鳴とともに、ゾロの姿が現れた。ローが瞬間移動させたのだ。
海軍たちは、突然ゾロの姿が消えたので驚いている。
「海賊が消えたぞ!!」「逃げられたか~!」
ゾロがローを見て言った。
「鬼哭はどうなった?」
「…。女の身柄は確保した。とりあえず、あの建物の屋根の上で待たせてある」
「ふうん…?」
ゾロは状況を理解しかねると言った感じで、ローを軽く睨んで首を傾げた。無理もない、と心の中でローは思う。自分だってこの成り行きに戸惑っている。どういうふうに説明したらいいか…。
「女をあの騒ぎから逃がせば、鬼哭を返してくれるそうだ」
「お前、なんであの女の言いなりになってるんだ?」
「…」
ローは無言でゾロの腕をつかんで、シャンブルズであの女がいる建物の屋根の上に移動した。
女は屋根の上に伏せて、地上の様子を見ていた。海軍がその場から引きあげつつある。
女は鬼哭から手を離さない。
(トラ男のやつ、この女のペースにすっかり乗せられちまったってことか。しかしこの女、十分怪しいぜ)
ゾロはさっきの女の身のこなしを思い出していた。明らかに武芸の心得がある。一見弱そうに見えるが、あの動きは相当の手練れに違いない。
ローが口を開いた。
「海軍におれ達がこの島にいることがバレちまったからには、できるだけ早く出航したほうが良いだろう。電伝虫で仲間に連絡しなきゃいけねえ。アンタは…(ここで女のほうを向いて)これから地上に下ろしてやる。おれ達のことは他言無用だ。約束してくれねえとここから下ろすことはできねえ」
ローが女に出したこの交換条件は、ゾロには甘く感じられたが、口には出さなかった。この女の正体と目的が何なのかは分からないが、それでも海軍の大将や七武海ほど手強い訳ではないだろう。なら、この女が何かを仕掛けてきたとしても何とかなる。
「あなた達は海賊なのね?」
女はローの交換条件を無視して、二人に質問してきた。
「船はすぐにでも出航するの?」
「…」
ローとゾロは顔を見合わせた。
「私を船でゴルジカ島まで運んで欲しいの。船賃ははずむわ」
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