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ビムビムの実の能力者の冒険

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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第三話 映画の撮影?

二人の男を後ろに従えながら通りを歩き始めて、どこくらい経っただろう。
女は内心、戸惑い始めていた。
国を出てからずっと、外出する時は目立たない服装をして、人通りの多い時間帯や場所を選んで行動していた。
しかし、ついに怪しい人物が接触してきた。彼らは、わざと人混みの中で小さな騒ぎを起こして通行人の注目を自分達に向け、それから親切心で目的地まで送っていくことを申し出てきた。通行人が注目している中で、これ以上の騒ぎを起こさないために、自分が無条件で従うことを見越していたのだ。彼らは自分を拉致することに、まんまと成功した…と思ったのだが…。
(それにしては何だか様子が変…)
二人は、自分の後をずっと大人しくついてくる。二人もの男に後ろを取られている状態だから、自分に不利な態勢であることには違いない。でも、二人は一向に次の行動に移らない。
彼女が予想していた“次の行動”とは、付き添っているふうを装って、自分を強制的にどこかに連れ去ることだった。
(すぐにでも「大人しく我々に従え」なんて言われるかと思っていたけど…)
試しに角を曲がってみた。二人は黙ってついてくる。今度はちょっと行き過ぎたふりを装って、今来た道を少しだけ引き返し、すぐにさっきとは逆の方向に曲がってみた。やっぱり二人は大人しく付いてくる。自分の行動を止めようとする素振りもない。
(単に私が勘違いしただけだったの?)
ならば、すぐにでもこの二人を、どうにかしてまいてしまわなければならない。二人ともちょっと荒っぽい感じの男性だが、純粋に親切心からの申し出だったのであれば、これ以上つき合わせるのも迷惑だろう。
大きな通りの、人目の多い場所で立ち止まる。
「ここまで来ればもう大丈夫です。このすぐそばの友人の家を訪ねるところでしたので、帰りは友人に送ってもらいます」
帽子のつばは相変わらず顔の周りに下がったままだが、口元ににっこりと笑みを浮かべてみせる。
「そうか、気を付けて行けよ」
緑色の髪の男がこう言った。やはり、彼らはただの通行人だったのだ。
「ありがとうございました」
女は軽く頭を下げて、彼らがこの場を去るのを見送った。
(何事もなく済んで良かった…)
二人の後ろ姿を見ながら、女は肩の力を抜いた。そして自分もその場から立ち去ろうとした、その瞬間…。
ヒュン!と、風を切る音がして振り返った。
さっきの二人の男のうちの一人が持っていた刀が、ものすごいスピードで車輪のように回転しながら、自分のほうに飛んでくる!そうだ、さっきもこの刀が、自分のほうに倒れてきたり、飛んできたりしたんだっけ…。
女は刀に向かって正面を向き、クルクル回りながら真っ直ぐに宙を飛ぶ長い刀を、なんと片手で、しなやかな身のこなしで受け止めた。体が反射的に動いた結果だった。
パシィ…!
その場にいた人間は、この一瞬の出来事に度肝を抜かれた。馬鹿デカい刀が、いきなりどこかから回転しながら飛んできた。刀が飛んで行く先には、若い女性がいた。鞘が付いたままの刀だったとはいえ、この場にいた大半の人間は、この女性が大怪我をすると思った。しかし、そうはならなかった。女性は片手だけで、見事に刀を受け止めた。それは、息をのむ程に美しい動きだった。
たちまち周囲に騒ぎが巻き起こった。
「おおっ!!」
「何だ何だ」
「あの刀、おもちゃか?」
「映画の撮影か~?」
見る見るうちに周囲に人だかりができていく。立ち止まったり、わざわざ集まってきたりする人の多さは、さっき、この刀が肩にぶつかった時に起きた騒ぎの比ではない。
(どうしよう…)
女は焦った。どうにかしてさっさと姿をくらますしかない。
人だかりの向こうから、この刀の持ち主が「その刀を返せ!」と叫びながら走ってくる。
女は刀を放り出して走り出そうとしたが、その瞬間、頭の中に何かが稲妻のように走った。
(この刀は…!)
手にした刀は、思いもかけず軽かった。もし、この刀を持ったまま逃げたらどうなるだろうか…。
しかし、刀は身の丈よりも長い。これを持って逃げるのは目立ちすぎる。持ち主の男も追ってくるだろう。

その時、数人の海軍の兵士が、大声をあげながら走ってくるのが見えた。
「麦わらの一味のゾロだ!」「ハートの海賊団のトラファルガー・ローもいるぞ!」
「この騒ぎはコイツらの仕業か!」
「下っ端じゃダメだ!中将を呼べ!!」
海軍が言い合う声を聞いた群衆は、蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。
「海賊がいるらしいぞ!」「逃げろ!!」
(まずいわ。この場を離れなきゃ)
パニック状態になった人々に紛れてこの場から逃げようと、女は身をひそめながら走りだしたが、抱えている刀がどうしても目立っている。
「おい、その刀を返してくれ!」
いきなり目の前に刀の持ち主が現れた。しかし、なぜか女は刀から手を離す気になれなかった。
次の瞬間、また頭の中に何かが走った。まるで何かが、次の行動を教えてくれているかのようだった。
女は、トラファルガー・ローを真っすぐ見て言った。
「お願い。私をこの場から助け出して」
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